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異常社会化  作者: アカバネ
『東京本部編』
2/6

第2話 「残道」

アイサーをこの目で初めて見た。

それはとてつもなく醜く、穢らわしかった。


自分が呆然と見ていると、

アイサーの飛び出した眼球がギロりとコチラを見る。


「あ...。」


あれ、よく考えたらまずくないか。


まだ警察は動いていないようだし、動きそうな気配もない。

そんな状況下であんなバケモンと対峙したら、死ぬに決まってる。


考えるのが遅かった。


羽のように伸びた皮膚を柔軟に使い、空中を舞う。

少し助走をつけ、一直線へとアパート側へ向かってきた。


「何やってんだよ俺ッ!」


すぐ壊れかけの壁に隠れるが、それを無視してアイサーは特攻してきた。自分の数ミリ横の壁がなくなっている事に気が付いた。


アイサーが砂埃と共に姿を現す。間近で見ると舌が想像以上にキモかった。

1つの生物かのように自由に動き、ニキビのようなものが点々とあり、涎はそれらを覆い隠すように垂れている。


奴はゆっくりとこちらに近づく。


「や、やめろ。」


皮膚の形が羽のようなものから、刀のようなものに変わり移り、こちらに刃先が向いてるのは見ずとも分かった。


(風の音)


間一髪だった。俺は右足を盾にし、身を守っていた。筋肉を最大限に硬化させ、薄く伸ばした。


だが、皮膚はモロに喰らっていた。


筋肉を硬化させても、皮膚は通常通りのままで、刃が皮膚をえぐっているのが分かる。


「ぐァッ!クッ、ぅアァ゛!」


なんとも情けない声を出していた。


痛みで筋肉の硬化が徐々に抜けていく。

それをアイサーは狙っていたかのように、皮膚の刃をまた、大きく突き刺した。


「ヵッ、ガッ」

かすれ声しか出ない程に、もうダメになっていた。


朦朧とした意識の中分かるのは、アイサーの舌が俺の口の中へと入ってきている事。


唾液が混じり、口の中でザラザラとした感触が伝わる。


「ッ、ァ」


息ができない。あぁ、ここで死ぬのかなって。

食道が塞がれ、生きた心地がしない。


...。


(銃声)


今頃、助け、かよ...。


――――


目が覚めると、病床の上だった。

来客用の座席には、ある男が座っていた。


「あぁ、目が覚めたんだね。」


大柄で、四角い眼鏡をかけた

まさに体育会系とインテリ系を掛け合わせたような・・・。


「君、聞こえてる?」


「あ、聞こえてます。」


「良かったよ。異常な感染の仕方じゃなくて。」


感....染....?


「感染....ってなんですか?」


「アイサー、No.17205の異常器官発達が君に感染したんだ。つまり飛沫―。」


「そもそも、なんでもっと早く動かなかった?一般人が死にかけてんだぞ?はっ、それともなんだ。異常器官発達者は死んで当然だってなァ゛!?」


壁を思いっきり、強く叩く。

手が痛むが、関係ない。今ここで言わなきゃ、何もかもに従ってしまうような、ただの奴隷に成り下がる気がしたんだ。


「すまない、我々対アイサー警察がもっと俊敏に動くべきだった。脳の電子チップが自主回収されると思っていなかったんだ。」


自主回収...?


「自主回収ってなんだよ、警察はバカ政府公認で、すぐにアイサーを殺せるんだろ?」


深刻そうな顔を男は見せる。


「・・・ 君が対峙したアイサーは、自ら電子チップを解除していたんだ。特殊な方法で。」


「特殊な方法...?」


「脳の異常器官発達、神経系が電子チップの起動をまるで邪魔するかのように発達していた。」


「仕方の無い事だった、とまでは言わない。ただ、我々対アイサーも異例で、特殊で...。」


何故か男は焦りつつ、泣きそうな顔をしていた。

そういえば、男の頭は少し変だ。

脳が変な発達の仕方をしていた。


今に気付いたが、彼も異常器官発達者ではないのか。


「いや、大丈夫です。少し強く言い過ぎました。」


冷静さを取り戻す。

話を聞かずにキレてるから差別されるんだ。


「・・・本当にすまない。」


少しの沈黙が流れた後、男が切り出した。


「自分も2年前、感染したんです。通報が遅れて。」


この人も感染者だったのか。


「脳に少しダメージがありました。ただ、そんな事よりも以前の日常に戻れなくなるのが怖かったんです。」


俺は遺伝的な異常器官発達だが、彼にとっては突発的。以前の暖かい日常が無いことは、苦痛だろう。


「でも、声をかけてくれたんです。自分を助けてくれた人が。君もここで働かないか?って。」


「働く...?」


「対アイサー警察にならないかって。」


そういえば、昨日テレビで見た。

対アイサー警察の設備はいいとか、なんとか・・・。


「自分も、助けたいんです。君...名前なんだっけ。」


「あ、新庄化(しんじょうばける)です。」


「化君、君を助けたい...いや、君をここで使いたいんだ。」


無断欠勤のせいで会社はもうクビだろうな。

社会的地位を失ってるかもしれねェってな。


どうせ死ぬなら、ここで働いて死んだ方がマシか。


「・・・俺からもお願いがあります。」


「言ってみてください。警察側はできる限り、化君へ謝意を、保障をします。」


「・・・給料は弾んでください。」


――――


こうして俺は東京対アイサー警察、新庄化となった。


感染により、俺は従来の右足部 運動器系 筋肉強化に加え、全面部 運動器系 皮膚強化の異常器官発達者となった。


ん...俺もしかして強そう?


ちなみに俺を対アイサー警察へと誘ってくれた男の人の名前は服部澤(はっとりさわ)。2年前の感染により脳 神経系 空間把握能力の向上が見られた という。


彼は元々医者で、感染前から頭が長けていたというんだから、異常器官発達も相まって、対アイサー警察からしたら最高の人材なんだろう。


脳の異常器官発達で 子供に怖がられるなら対アイサー警察の道を選んだとかなんだか。


一応俺は第18期生という事で、先月の春から入った同期と共に歓迎会が行われた。


――――


「それじゃ、乾杯〜!」


(ジョッキの音)


唐揚げ、ビール、枝豆等 無造作に置かれた 俺からしたら高級食品なおつまみが立ち並ぶ。


「化君達、第18期生の歓迎会なんだから。もっとほら、飲んで飲んで!」


澤先輩がビールの入った、冷えているジョッキを目の前に見せる。


「あぁ、どうもです。」


表面上ではこう、遠慮しつつも 結局ガツガツと食べてしまった。おつまみに箸を進めている時、1人の男が俺の元にやってきた。


「化...? ばけるって読むのかな?」


「ン゛、ンン? あ、はいそうです。」


スラッとしたイケメン、満天の星空が背景に似合う、男だった。



3話は人物紹介が主になるかもしれません。

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