本編
私はとある場所で骨董屋をやっているのだがどうにもソウイウモノが転がり込んで来ることが多くある。
処分に困った誰かが店先に置いていくこともあれば何食わぬ顔で売りに来る奴もいる。まあ、わかってて売り出している私が言えたことではないがね。
それと気づいたら売り物に混じっていて客に値段を尋ねられて気づくなんてこともある。
件のブツもその一つだったよ。それは骨董屋に似合わない洒落たラジカセで新品みたいにきれいだった。
持ってきた客はどうしても欲しいと言うから言い値で売ってあげた。どうせいわくつきで返品されて来るだろうと思ったからな。
しかし一週間経ってもなんの音沙汰もなくラジカセが返ってくることはなかった。
これならもうちょっと高く売ってもよかったかもと思ったが後の祭りってやつだった。
それからさらに一週間くらい経った頃だったかな。店の方から雑音混じりの変な音が聞こえて来たんだ。
その日は定休日ってやつで店を閉めてたから泥棒でも入ったのかと思って覗いてみると誰もいなくてよ。
それでも音が続いていたから調べてみたら例のラジカセがひとりでにラジオを流してたんだ。
中途半端な位置でチューニングされてたみたいでちょっといじると普通にラジオ番組が流れてきて特にひとりでにラジオを流していたこと以外におかしなところはなかった。
とはいっても買われたはずのラジカセが戻って来たわけだから買った本人に連絡しないわけにもいかないので購入時に聞いた番号に電話したわけだがその時は電源が切られていたのかつながらなかった。
それから数時間後電話がなったので出てみると相手は警察だった。警察はこちらから話を聞きたがったので私は会うことにした。
ラジカセを買っていった客に何があったのかわかるかと思ったからだった。
早速翌日喫茶店に足を運んでその刑事と話をした。刑事が言うにはラジカセを買っていった男は自宅で亡くなっていたそうで他殺の可能性が高いのだそうだ。
私はラジオについて話すつもりなどなかったのだけれどさすが本職の刑事といったところか、気づいたら聞き出されてラジオを引き渡すことになった。
気味の悪いモノなので引き取ってくれるのはありがたかったのだが変に疑われるのでは少し心配になったが刑事は特にそれ以上突っ込んだことは言わずにラジカセを回収するとそのまま帰っていった。
それから1週間警察が私のところにやって来ることもなく、あの刑事からも一切の連絡もなく過ごしていたのだがある日店に出るとカウンターのところにラジカセが置いてあった。
間違いなくそれはあのラジカセだった。一体どういうことなのだろうか。例の刑事に確認を取ろうとスマホを手にした瞬間、触れてもいないのに勝手にラジオがついた。
ラジカセのスピーカーから流れてきたのは一つのニュースだった。よくよく聞いてみるとそれは刑事が遺体で発見されたというもので気になった私は電話する代わりにネットで今のニュースの内容をもとに検索した。
その事件の記事はすぐに見つかり、被害者の顔写真がしっかりと乗っていた。それは一週間ほど前にあった刑事のものに間違いなかった。
それから私はそういったものの知識のある知人に相談してみることにした。
彼女は人形のコレクターで特にいわくのあるものを好んで集めている。私はそういうものの情報や実物を彼女に流しているわけだ。
先日もその手の情報を彼女に教えて今日はその報告に来てくれるということでついでにそのラジカセについて話してみた。
彼女は専門とは違うのであくまで一意見ということでアドバイスをくれた。
思い入れとか何もないのであればお寺か神社に預けてしまった方がいい。そうじゃないなら対処法を探るためにもどういった事象を起こすものなのか調べた方がいい、とのことだった。
私は早速そのラジカセを近くの神社に持って行って預かってもらった。さすがに人死にをだすラジオだとは言えなかったので手放しても帰ってくるのだということだけは話した。
これでもう安心だと思ったのだがそう簡単には解決はしなかった。
神社に預けて一週間くらい経ったその日の朝、ふと目を覚ますとそこにはあのラジカセが置かれていて朝のラジオ番組がスピーカーから流れていた。
ダメだったかと落胆しながらもラジオを消してふと気づいた。私の手ってこんなに赤かったけ?
私の両手は真っ赤に染まっていたのだった。