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5 返済計画を立てたいが物価が分かりません

 早朝、ジルトの屋台に着くと、既にジルトが荷物を広げていた。


「おはようございます!」

「おお!来たか坊主!」


 ・・・坊主。ま、いいけどさ。


「はい!今日からよろしくお願いします」

「よろしくな!じゃあ、この果物を縦に4つに切って、この棒を刺したら、そこの氷の上に乗っけてってくれ」

「はい!」


 おお~。これって祭りでよく見る果物のお店なんだ。

 赤・青・黄色・桃色・紫とどれも見た事の無い果物だけど、瑞々しくておいしそうだ。


「1本、100セルカな」

「ん?セルカ?」


 やばい。こっちのお金なんて知らないよ。


「金額だよ。これはおつりな。100セルカ50枚と500セルカ50枚と1000セルカ50枚あるから、多分大丈夫だろう」


 ジルトは金庫を開けて、一つ一つ指さしてくれた。

 セーフ。これなら分かる。多分日本円と計算方法は同じっぽい。


「じゃあ、店番頼むな。俺は他の屋台に品物届けに行って来る。時間を見て追加を持ってくるからな」

「はい!分かりました」


 後、30分で開店だ。

 屋台の前面に置かれた大きな氷の上に、次々と果物を切り棒を刺して置いて行く。

 なんか、夏祭りの屋台みたいだ。異世界でも同じなのね。ちょっと楽しい。

 これが、私達が召喚されたお祝いでなければね~。

 

「よ!お隣さん、今日一日よろしくな」

「あ、よろしくお願いします」


 隣の屋台の人が来たらしい、ガタガタと荷物を出し始めた。

 お肉を焼くみたいだ。味付けがされてる生肉を次々と大きな串に刺している。

 周りを見回して思う。この世界の人って、背が高い人多いな・・・。

 私も160はあるから、女子として今までは背が高い方だったけど、この世界では低い方に入ってしまいそうだ。

 もしかして、それで子ども扱いされてるのかな?

 隣の人は、不思議な四角い穴あきの箱の上に肉を置くいた。すると、直ぐにジュウジュウと肉が焼ける音がする。一体どういう仕組み!?

 甘辛で、肉のうまそうな匂いがしてきた。


 もう片方のお隣さんは、占い師らしく、横もぐるりと紫の布で囲われていて見えない。

 さっき、ズルズルの服を着て、水晶玉みたいなのを持ち込んでたから、多分そう。


 少ししたら、どんどんお客さんが増えてきて、思った以上に果物が売れる。

 次から次へと、果物を切って補充をしないと間に合わない。冷えていない果物を売りたくないと必死に補充していたら、あっと言う間に昼に成った。


「どうだ!順調か?」

 

 後ろから、追加の果物を持ってジルトが現れた。

 殻に成って積み上げられている木箱を見ると、大袈裟に驚いて見せる。


「凄いな、この屋台が一番売れてる!大したもんだ」

「そうなんですか?へへへ」


 ちょっと嬉しくなって笑ってしまう。


「代わってやるから、飯食って来い!ほら小遣いだ!」


 ジルトが1000セルカを1枚投げて寄越す。


「折角の祭りだ、お前も楽しんで来い。でも1時間で戻れよ」

「分かりました!」


 道のあちこちに設置されている屋台が、果てしなく続いている。

 こんなところに来てまでダイエットなんてしてられない!お腹もすいてるし、まずは肉でしょう!

 そう言えばお隣さんが肉だった。

 金額は300セルカ。イイネ~。


「お兄さん、1本下さい!」

「ほいよ!隣の兄ちゃんか。ウチのは上手いぞ~。頑張ってたから一番デカイのだ!沢山食べて大きく成れよ!」


 ・・・だから、もう大きくなってるってば。


「うん!ありがとう!」


 肉を齧りながら、他の屋台をキョロキョロと見て回る。

 屋台なんだけど、服や帽子、花や高価そうなアクセサリーなど、元の世界では考えられないものまで、屋台で出てる。

 祭りと言うよりも、在庫一掃セールみたいだ。笑える。

 でも、この1000セルカは全て食べ物に変える予定だ!

 午後も、あれだけのお客様をこなすのなら、体力をつけないとへたばる。

 これは私の、更生の第一歩なのだ!全力で頑張るぞ!


「綿あめっぽいもの発見!突撃~!」

 ウキウキと人の合間をするすると抜けて、欲しい食べ物をゲットしまくる。

 なんか、ちょっと体が軽い気がする。いつもより早く歩けているんじゃないかな?

 絶好調って感じ?

 1000セルカ分の食べ物を買って、少し齧りながら戻る。


「お前、足が速いな」

「え?そう?」

「ああ、隣の肉を買ったなって思ったら、もう姿が見えなくなっていて、驚いたよ」


 両手いっぱいの食べ物を握りしめて、首をかしげる。

 走った覚えはないけど、なんか歩きやすいとは思った。


「ほれ、食いもんばっかで、飲み物が無いじゃないか、これ飲め!」


 ジルトがコップにジュースを入れて寄越す。顔に似合わず面倒見がいい。

 別の店舗で出しているジュースらしい。美味い。

 しっかり1時間休ませて貰うと、ジルトがにっこり笑って、朝の倍の果物の箱を置いて帰って行った。

 鬼~!!しかし、売れる売れる。疲れるけど、楽しい。その後、ジルトが何度か補充に来たが、すべて売り尽くして、今日のお仕事は終わった。

 バイト代の入った袋を手渡すジルトに満面の笑みで、「明日も頼むな」と言われて帰途に就いた。





「早かったね、うまく行かなかったのかい?」


 帰宅すると、シイラが心配そうに声を掛けて来た。


「え?いいや、かなり売り上げに貢献出来たと思うけど、どうして?」


「いや、帰りが速かったから、売れなくて途中で店じまいしたのかと思ったのさ」


 ん?っと首をかしげてみると。シイラが時計を指さした。

 時間を見てぎょっとする。ジルトと別れて30分しか経ってない。あの売り場から家までは、どう考えても1時間はかかるはず、走っても無いのに?


「子供は、夕方までしか雇えないんだって」


「ああ、そうだったね。上手く行ったんならいいよ。さ、ご飯まで部屋で休んできな。あ、その前においで」


 おいでおいでをするシイラに、私はトトト・・・と近づいて両手を上げる。

 シイラは、私に向かって手を翳し、目を閉じる。すると、私の足元から霧の様なものが立ち上り、私の全身を包み込み、少し経つと霧散した。


「は~すっきりした!ありがとうシイラ」

「お安い御用だよ、じゃあ、少し部屋で休んできな。ご飯に成ったら呼びに行くから」

「は~い!」


 私は、シイラの部屋へ入ると、ベットにダイブする。

 シイラの家には風呂が無い。でも、生活魔法が皆使えるので、体や洋服はそれで洗うのだそうだ。

 勿論、私にそんな力は無い。なので、毎回シイラが私を服ごと洗ってくれるのだ。

 初めてされた時は驚いたけど、数分で終わる洗浄に慣れると、楽ちんでいい。


 ごそごそとバックから、今日貰ったバイト代を取り出す。バイト代は日払いだ。

 時給1,100セルカで、今日は8時間働いたので、8,800セルカの筈だが、9,000セルカ入っている。

 この祭りは30日続くらしいので、270,000セルカくらいは稼げそうだ。


 洋服と持って来たもので残っている物は、こっそり返すとして、高級食材・・・いくらするのかな?芋とタマネギを1個づつ使ってしまったので、これは買い取りだ。後、このバック。これも名前が入ってしまってるから買い取りだよね。


 ん~。価格が分からない。高級なんだから、芋とタマネギを各々10,000セルカとして、このバック。どう見ても普通のバックじゃない。俗に言うマジックアイテムじゃないだろうか?だって、この中に入れておいた芋もタマネギも果物も全く傷んでいない。まるで時が止まってるみたい。

 だったら、すごく高そう・・・だけど、お金が無いから、200,000セルカでどうだ!

 私からしたら高額なんだけど、安すぎるかも知れない。む~ん。

 それに、宿代はいいって言われたけど、そういう訳にもいかないしね。

 本当に相場が分からない。





 バイトも既に、15日を過ぎて、手際も良くなったと思う。

 そして、この洋服。初めは気のせいかと思ったが、古着を何着か買って、着てみて確信した。

 この洋服を着ると、歩く速度が上がってるんだよね。重い荷物を持ってしまうと、全く速度の変化は見られなくなるけれど、自分に負担の無い重さだと、速度が速くなる。

 この洋服も欲しいな~。でも口にはしないぞ!バックも言葉にした途端に名前が刻まれたので、もし、この服も同じように名前が刻まれたら大変だ。

 そっと返す、犯人の名前入り洋服なんて、笑えない!



 この祭りが終わったら、冒険者の試験を受けるまで、どこかで働かないと。

 殆どが、盗んだものの返済金に充てる予定なので、もう少しシイラには住まわせて貰えるようお願いしないといけない。

 冒険者の試験って、何歳から受けられるんだろう?どんな試験なんだろう?

 皆に聞いても、渋い顔をされて、教えて貰えない。

 シイラには、「今は、魔物が強くなっているから、冒険者になるのは反対だ」ってハッキリ言われてしまった。

 心配してくれてるのは凄く嬉しい。でも、折角異世界へ来たんだから、少し冒険を楽しんでから、元の世界へ戻りたいんだよね。

 なので、今日は、家に帰る前に、コッソリ冒険者ギルドを覗きに行くのだ。

 ふふふ。家とは逆方向で、街の東側にどうやら冒険者ギルドが有るらしい。

 今まで、行った事が無い区画だけど、何事も初めがあるものです。はい。


 屋台を出している道は、馬車が通る程の広さが無く、人しか通れなくなっている。

 しかし、東側へ進むと通りが大きく開けて、馬車がゆっくりと走っている。その両脇にきちんと歩行者通路があるので、危なくない。

 キョロキョロと見回して、冒険者ギルドっぽい建物が無いか物色する。


「こら、君!何時だと思っているんだ、家に帰りなさい」


 突然目の前に、警備服を着た男の人が、立ちはだかる。

 余りにも怪しい動きだったから通報されたのかしら?

 この街は、治安がいいのはいいけど、子供の活動時間短くない?


「あ、あの・・・私は・・・」


 冒険者ギルドを一目見るまでは帰りたくない!何といって誤魔化そう。

 しどろもどろに成っていたら、突然後ろから両肩と掴まれてた。


「すみません!俺の弟です、待ち合わせしてたんです」

「ああ、保護者がいたんですか。小さな子がウロウロしているって通報があったんですよ」


 ・・・やっぱり!誰だ~私の行く手を阻んだ奴~!


「ご心配おかけして申し訳ありません。すぐに連れて帰ります」

「では、よろしくお願いします。あまり子供に夜遊びをさせない様におねがいしますよ」

「はい、肝に銘じます」


 私の頭の上で、着々と話が進んでいる。

 紳士っぽく、警備の人に頭を下げている。

 なんとなく、私も下げた方がいいかなと下げておく。

 警備の人は、一度敬礼をすると、持ち場へ帰って行った。

 残された私は、助けてくれた(?)人をちらりと見上げる。

 水色の髪に緑色の目。すらりとした美丈夫の男性が、私と目が合うとウインクしてきた。


 ・・・誰?この人。





 

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