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もふもふが恋しいのです。

婚約解消は、アッサリ出来た。あのサイモンの発言を聞かさなくても両親は動いてくれていた。

けれど、違約金の支払いに侯爵家が難癖を付けてきた。

両親の調べでは、どうやら、サイモンはユーコと一線を越えていたらしく、婚約解消理由をサイモンの不貞とした。

「本来なら解消ではなく、破棄だったのを図々しい。」

お父様は吐き捨てた。侯爵家は此方の主張に否を唱えてきたのだ。

サイモンが嘘を吐いているのは分かっている。多くの令嬢が教えてくれたのだから。

女性側から突き付けられた不貞による婚約解消、そんな瑕疵がつけば、獣騎士として王立騎士団隊への試験に影響がでる、だから理由を”私の無能“による意見の不一致にしてほしい、将来有望なサイモンと辺境伯家のみそっかす、どちらを優先すればよいかなど分かるだろうとオーランド侯爵家の弁護士が言ってきた。“みそっかす”とハッキリ言われたわけではない。婚約解消の経緯は学園の生徒が多数目撃してたし、教師も理解していることだったが、サイモンとユーコの不貞は、あくまでも学園内のことで、公になってなかった。私の無能の方が有名だったりする。解消した日よりも先に周知されているため、サイモンの不貞は後付けで負け犬の遠吠えだと言ってきたのだ。

侯爵家と辺境伯は、地位的には同等であるが、国への貢献度合いは、雲泥の差がある。侯爵家が強気に出たのは、私が虹しか出せない魔力であることにコンプレックスを募らせていて、家族を説得するだろうと思っていたからだ。

あの魔術文字が読めなくなって以降、私は何故か虹が指先や掌から出せるようになった。媒体ではなく言葉で願えば指先から虹が出るようになっていた。初めて虹を出したのは、お母様の焼いたクッキーの最後の一枚を兄弟で争っていた時、腕のリーチの差で届かないもどかしさに力を込めたら虹が出た。家族、みんな呆然である。家のかかり付けの魔術医に診てもらったが、魔力の放出の仕方が、通常の魔術使用時とは違う系統だと診断された。詠唱や魔術陣なしで発動する未知の力と言うことで、家族と一部の者以外には秘密となった。

侯爵家に対する辺境伯一家の怒り(私は、置き去り状態)は凄まじく、婚約解消理由を譲らなかった。


「お母様、私……、」

「ファティマは、無能なんかじゃありません!」

「……でも、実際のところ私は、無能だわ。」

苦笑する娘に夫人は憤る。

「あなたは、魔獣達の心を誰よりも理解しているし、勉強だって優秀で、何より、魔術とは違う力で虹を出せる!」

母の欲目には困ったものだ。

ファティマは、カラッカラの好天でも雨を呼び虹を出すことが出来るし、雨の日は降り続く雨を止め虹を出せる。この特殊な力は、希有過ぎるため家族と一部の者しか知らないことだ。流れでサイモンには知られてしまったが、見せた力はかなりサイモンにとってはショボいもので、雨上がりの虹が出やすいタイミングだったから、彼は私の力を眉唾物だと一笑し、そんなものなど恥だと言い『虹しか出せないやつが婚約者だなんて知られたくない、誰にも言うな』とも言われたのは随分前で、これ幸いと私の力はバレていない。でも、私にとってはコンプレックスであることは間違いなくどうやったら、魔術が使えるのか、テイマーの才能が開花するのか悩んだ。

家族の愛情は確かに存在し、悩める私に母は有りとあらゆる文献を王都にまで足を伸ばして読み漁り、持ち出し禁止の古書の中に『虹使い』の項目を見つけた。けれど、彼らが“くじら”を召喚、使役出来る唯一の存在であることを知ったところで、これまたちんぷんかんぷんだった。

古書によると、“くじら”は精霊界で暮らし、たまに現れて気紛れに雨を降らせるのだそうだ。だから何?であるし、召喚方法など誰も知らないことだった。

お母様は、精霊に近いとされているエルフに知恵を求めてはどうかと考えているようだったが、森の奧深くに住む用心深い方達だから、無理だろう。

王太子殿下と第二王子殿下が

国の北東と東の森の王に気に入られていると聞いた。所謂、精霊の祝福を受けたのだ。王太子殿下は、精霊の加護の上に神獣とも契約している凄い方だ。無理かもしれないが訪ねてみようとお母様は思っているようだった。


ベッドに横になっていると猫2匹と犬が一匹部屋に入ってきた。犬は犬でもお父様のフェンリルの息子で、まだ1歳にもなってないのだが、大型犬って感じだ。

「リド、」

ゴンと頭を擦り付けてきた。

広いベッドに上がって来たら1/3は埋まってしまった。

「リル、リリ、」

にゃーごと鳴いて猫も擦り寄ってきた。

「大丈夫だよ?うん、変わらず魔術は使えないんだぁ……。」

もふっとリドの首元に顔を埋めた。

「リドが、相棒になってくれたら、いいのに。」

いつもの愚痴を言うとリドがすまなそうに鳴く。

「ごめんね、あーあ、何でテイマーになれないのかなぁ……。」

一人でいる時くらい愚痴を言いたいものなのだ。


夜中のこと。

リド、リル、リリは目を覚ます。頭を上げて部屋に入ってきた光を見つめた。

リドは大きく尻尾を振る。

光は人の姿に変化して人差し指を唇に当てた。

光の人は涙に濡れたファティマの頬を撫でると額にキスをした。

“君の誕生日に、会いに来るから、待ってて……ボクの虹乙女。”

光の人は姿を消す前にリドの頭を一撫でして消えた。




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