第2話
「ねえ、近藤くん」
驚いて顔を上げる。
櫻小路さんの目は、グラウンドの外に注がれていたが、今のは僕に向けられた言葉で間違いないだろう。さすがに。
「……何?」
思ったより無愛想な返事になってしまった。
けど言い直すのも変で、僕は彼女の続く言葉を待つ。
「お願いがあるんだよね」
「僕にできることなら聞くけど」
今度は食い気味になってしまった。
会話って難しい……。
「私の恋人になってほしいの」
頭が真っ白になった。
一方、どこかで悪魔――いや、天使か?――の声が聞こえる。
「愛の告白であるはずがない、彼女とお前だぞ? 格が違いすぎる。妄想か、そうでなければなにか事情があるはずだ」と。
僕は《《それ》》の意見に同意した。
「え、ど、どう、どういうこと?」
どもったのは、もう仕方ない。
陰キャの宿命である。
むしろ最後まで言えた自分を褒めたいくらいだ。
櫻小路さんは、僕の慌てぶりが面白かったのか、クスリと笑った。
「あ、これじゃ語弊があるね。正確に言うと、私の偽装恋人になってほしいの」
この紛らわしい言い方は、確信犯だ。
僕はそう確信したが、ツッコめるはずがない。
それに、彼女が言った内容も気になった。