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短編ファンタジー

前職は勇者

作者: 中井 香

面接官の一人、ユーソーは頭を抱えていた。異世界からやってきたと自称する勇者のことで、文字通り頭を抱えていたのだ。彼は面接のことを思い出そうとする。

――履歴書を見ますと、前職に「勇者」と書かれていますね。

「一応俺は勇者『様』って、君たちタイム国の王様には言われてるけどな」

――……。では、まず傭兵として、ファジーワールドの数ある国、村の中から我が国を選んだ理由を教えてください。

「理由?テキトーに選んだ。まぁ、あんたのとこの王様には、世話になったってのもあるしな」

最初のやりとりを思い出した彼は呻きながら頭を掻きむしった。


国を選ぶ理由を聞くのはな!働くにあたってその人が重視してることを聞き出すためにあるんだ!そしたら、給金を増やすとか、残業させないとか…それぞれの傭兵のために最優先ですることを決めれるだろう!テキトーってなんだテキトーって!というか敬語を話さんかい!尊敬しろって話じゃないぞ!敬語は、尊敬のために使うのもあるが、お互いを友好的に理解しあいたいっていう意味でも使うんだからな!


心の中で叫びながら、履歴書を確認する。

――えぇと、自己PRをお願いしてもよろしいですか?

「面接官がえぇととか挟むの良くないんじゃない?…ま、いいや。アピールね」

――……。お願いします。

「俺は、この世界に転生する前、神から膨大な力をもらった。だから、どんな敵が相手でも、必ず勝てる。世界最強だ。あ、そうだ。俺には女の魔法使いと僧侶と盗賊がいる。なんでも言うこと聞いてくれるから…絶対役に立つぜ」

その時は、勇者の『どんな敵が相手でも、必ず勝てる』という言葉を聞いて、少し詳しく話を聞こうと身を乗り出していた。が、その後の話で、周りが分かるくらい肩を落としていた。

――それでは、面接を終了いたします…。

「おつー」

彼は大きなため息をつき、机に突っ伏した。そんな彼に、声をかけた人がいた。

『あまりにもうなだれてるじゃないか、どうしたんだい?』

彼が最も尊敬している上司であった。

――実は、勇者が面接に来たんですが、あまりにも常識、節操、言動、働く上で必要なものがないので、不採用にしたいのですが、いかんせん王様のコネなので…

『あー、あいつか。私に任せておきなさいな。いい案がある』

――本当ですか?


結局、勇者は『初めての、特例、規格外、前代未聞』と、適度に持ち上げるそれっぽい言葉でおだてられ、王様の騎士として採用された。

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