冬ごもり
麓の旅宿の主人——佐吉は、伊吹が再び訪れたことを知ると、事態の収束を悟ったようだった。
あえて何も詮索しないところが、この主人のいいところだった。粉雪が、やがて大きな牡丹雪に変わると、世界は少しずつ白く染まり始めた。
雪が積もるにつれ、表の静寂さも増していった。外界の音を吸収するように、雪はしんしんと降り続いてゆく。その静かさは、確かにこの出来事の終わりにふさわしかった。伊吹は、ずっと持ち歩いている笛を懐でそっと握る。
すべてが解決したわけではなかったが、とりあえずひとつの区切りがついた気持ちだった。これからどこへ流れていくにしろ、山姫の弟の嫡子である自分の務めは、これで果たしたのだ。
そう思うのに、心のどこかが晴れないままだった。
その理由を、伊吹はしいて考えるつもりはなかった。
すべてはもう終わったことなのだ。旅宿の主人、佐吉は伊吹が冬の間、ここにとどまるつもりであることを知ると、素直に喜んだ。
連れ合いを流行り病で亡くした後、ずっとひとりで暮らしていることを伊吹も知っている。薪割りなどの体力仕事ができるため、佐吉は重宝がり、冬が過ぎてもいてほしそうだった。
働くこと自体、伊吹は嫌いではない。体を動かしていると、他の物事に気をとらわれなくてよかった。
冬の間、人の訪れは少なかったが、その間にできることを伊吹は進んでやった。雪かきができるところも、佐吉にとっては有難いようだった。




