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幕間 一の皇女(桜桃)
陽が西に傾く黄昏時、宣耀殿では、少し巻き上げた御簾の内側で、一の皇女、桜桃が脇息にもたれつつ、秋の終わりの風を感じていた。
表は薄い蘇芳、裏は青色の菊重ねの袿は、以前、寝付いていて重陽宴を楽しめなかった桜桃に、せめて装束だけでもと尚侍が用意してくれたものだ。
重陽宴は、もともと秋の収穫を祝うもので、紫宸殿で毎年盛大に執り行われている。
その日、尚侍は「菊の露に濡れた綿で肌をなでると、延寿の効があるのですよ」と言って、桜桃の体を丁寧に拭いてくれた。
そのおかげか、数日前から体が軽くなり、食欲も増え、やせこけていた頰もふっくらとまるく赤みを帯びてきた気がする。
その変化を尚侍はもちろん、まわりの侍女たちも喜び、菊の露や菊酒に不老不死の効能があるのは本当だった、という噂がまことしやかに後宮で流れたが、桜桃は——それだけではないと知っていた。
胸の底に、しこりのように重く凝っていたものから解き放たれたのは、自分の内から何かが抜けでたからだと。
そして、その正体を見定めようとすると、きまって涼人の笛の音が、脳裏の奥に響いてくるのだった。




