表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/94

疑惑


 惟親は、少しあきれたように言った。


「お前は目が良いから、あいつが待ち伏せていることくらい、すぐに分かっただろう。面倒なことになると分かっていて、どうして相手をしたんだ」


 その言葉に、涼人は曖昧に答えた。


「なんとなく、逃げてはいけない気がしたんだ」


「そのこころざしは立派だが、あまり命を粗末にしてくれるなよ。下手にまわりを悲しませるだけだ」


 涼人は頷いたのち、考えるような調子でつぶやいた。


「私は、どうしてあれほどまでに恨まれているんだろう」


「そんなことまでいちいち気にするなよ。皇女のことで頭に血がのぼっているんだろう」



 そう。涼人もそう思っていた。

 だが左衛門督の言葉には、他に含むものもあったのだ。その正体のわからない模糊としたものが、かすみのように胸の底に(とどこお)っている。

 涼人の憂いをよそに、惟親は話題を変えた。



「山師がどうの、とかこの前から話していただろう。すめらぎと山師はひと昔前から折り合いが悪いんだ。何でも、御所に招かれながら戻らなかった山師のおみながいたという話だぞ」


 急な話の展開に、涼人は一瞬声を失った。


「戻らなかった? いったいその時何があったんだ」


 惟親は首をわずかにすくめてみせた。


「くわしい話は知らない。ーーが、主上おかみの期待を裏切ったことは確かだ。山師の力が必要などと、間違っても口にするものじゃない」



 その時、渡殿の奥から矢の鳴り響く音が聞こえてきた。惟親はその方角を見据えて言った。


蟇目ひきめ役のものたちが鳴らす音だ。お前も宿直とのい人なら、早くあちらに行った方がいい」


 涼人は、それに軽く頷いた。



「ひとまずそうしよう。私はあの山寺にまた再びおもむくことにする。どういうことか、理由を知りたいんだ」


 惟親は否定もせずに、ただ頷いた。



「お前がそうしたいなら、そうすればいい。でもあまり危険なことに首をつっこむなよ」



 その言葉に対し、涼人はうすく微笑んだだけだった。惟親が肩をすくめるのを背後に、涼人は自分の持ち場へと駆け急いだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ