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ウァンパイア物語4  作者: 衣月美優
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エピローグ~ウァンパイア物語~


 圭との別れから一ヶ月が経った。

 これまでの日々は夢だったのかと思うほど、彼女と出会う前と何ら変わりのない日々が続いている。

 変わったことは、俺と宮田が付き合い始めたことくらいだ。それによって、また宮田が若干挙動不審になってしまった。

 ほかはもとの日常に戻っている。

 それでも俺は、たまにあの桜の木へと足を運ぶ。

 当然、もう会えるわけはないのだが。俺にはまだ圭がそこにいるように思えてならないのだ。


 ウァンパイアだった圭。

 そんな圭のことを圭と別れた日、両親に話してみた。圭が俺の曾祖母を守ると言っていたから、何かわかるかもしれないと思ったから。

 両親は俺の話を聞いて、最初は驚いていたが、俺に真実を話してくれた。

 曾祖母が元ウァンパイアで、祖母もウァンパイア。母親はウァンパイアの血を色濃く受け継いだウァンパイアと人間の子供だと言った。

 そして、曾祖母と信頼し合っていたウァンパイアが圭ことKであると。

 曾祖母が遺した資料によると、圭は曾祖母を庇って当時の女王と戦い、亡くなったらしい。

 それを聞いて、圭が曾祖母を守ると言っていたことがわかった。

 もし、圭が曾祖母を庇わなければ、曾祖母が死んでいたかもしれないし、そうでなくても人間としては生きておらず、曾祖父と結婚することなどなかったかもしれない。

 だからこそ、圭は言ったのだ。

 もとの時代に帰ることは、俺を守るためでもあるのだと。

 それにしても、うちがウァンパイアの血が流れる家系だということにも驚きだが、ウァンパイアと結婚した曾祖父たちにも驚き、というか、すごいと思う。

 特に曾祖父はウァンパイアの巣まで乗り込んだと言うではないか。なんて人なんだ。

 でも、圭の話をしたおかげで、曾祖父の武勇伝や祖父母や両親の話を詳しく知ることができた。知らなかった真実を知るのは、何だかワクワクする。

 そして何より、その話をしたおかげで両親やウァンパイアの研究をしている祖父母たちをもっと身近に感じることができた。




「お兄ちゃん、玲香先輩が来てるよ?」

 優芽が俺の部屋にやって来て言った。

「どうしたんだ?」

 俺が玄関まで行くと、赤い顔をした宮田が立っていた。

「こ、これ友達がくれて・・・行く相手がいないから私に佐川と行ってこいって。べべべべつに、私はあんたじゃなくたっていいんだからね!?友達がうるさいから誘ってみただけよ!」

 宮田は早口で映画のチケットを俺に差し出しながら言った。

 俺はそれを受け取りながら

「そうか。じゃあ、今度の日曜にでも行くか?」

 と、訊いた。

「・・・うん」

 宮田はさっきまでよりもさらに赤い顔をして頷いた。




 俺の家系は、曾祖父の代からウァンパイアと深く関わっている。きっとそれはこのさきも変わらないのだろう。

 もしかしたらこのさき、優芽もウァンパイアに出会うかもしれない。

 俺や優芽の子供がウァンパイアに出会うかもしれない。

 出会い方や別れ方はそれぞれ違うだろう。

 俺のような別れ方をする人はいないかもしれない。

 でも、俺のような出会い方をする人はいるかもしれない。

 俺の代までは殺されたりしなかったが、このさき殺される人がいるかもしれない。

 それは俺にもわからない。

 だけど、俺たちのような人がいずれはウァンパイアと人間を繋ぐ架け橋になるだろうと、俺は信じている。

 いずれはウァンパイアと人間が共に暮らせる世界になることを、俺は願っている。

 だって、ウァンパイアも悪い奴ばかりじゃないと知っているから。

 悪い奴ばかりだったら、曾祖父も祖父もウァンパイアに恋などするわけがないし、結婚などしないと思う。俺自身も圭に恋などしなかったはずだ。

 何十年、何百年とかかるかもしれない。

 だけど、ウァンパイアと人間が信頼し合い、助け合って生きていける時代がいつか来るはずだ。

 だから俺は、ウァンパイアと関わってきた曾祖父たちのことを後世に伝えるため、曾祖父たちのことを書き留めておこうと思う。俺自身のことも。

 そして、ウァンパイアの研究家となり、もっとウァンパイアのことをよく知ろう。

 それが、俺の夢だ。

 どれだけの人にウァンパイアと人間の物語を読んでもらえ、信じてもらえるかはわからない。

 だけど、伝えたい。ウァンパイアたちのことを。

 そして、その物語を読んでくれた者の中から、また俺の知らない新たな物語を書いてくれたら嬉しい。

 俺は生きている限り、ウァンパイアのことを伝えていく。

 そんな俺の意志を受け継いでくれる者がいますように。


 ウァンパイア物語よ、永遠に────・・・



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