Episode4 決意
小説書きすぎて腰に痛みが……
スキル外能力──それはスキルに表示されない、特殊な能力のことである。
スキル外能力の殆どは、一定の実力を手に入れて、命懸けの戦闘を複数回行うと目覚めるといわれている発現型の能力である。
だがスキル外能力には血で受け継がれている、血統型のスキル外能力も少数ながら存在していると言われている。
◇
目が覚めると、僕はベッドに横たわっていた。
身体に力を入れて起き上がろうとすると、何者かに身体を抑えられる。
「駄目ですよ、まだ寝てないと……ってちょっと!」
僕は身体を抑えたのが先ほどの女性職員だと理解すると、女性職員の肩に触れて抑えつける腕を退かせて、身体を起こす。
「それで……ここは何処ですか」
「あの、大丈夫なんですか?」
女性職員は僕の言葉を無視して質問を投げかけてかる。
「大丈夫ですけど、心配するほどの怪我はしていないかと思うのですが」
「だって、支部長の攻撃を新人が受け身や防御なしで受けたんですよ、大丈夫なわけないじゃないですか」
「ああ、そういうことでしたら全然大丈夫ですよ。耐性スキルを持ってますので」
僕はベッドから足を出して靴を履くと、布団を退かして、起きあがろうとする。
その時、身体の不自然な軽さに驚いて、少しふらついてしまう。
「だ、大丈夫──」
「大丈夫。起きたばかりだから、まだ身体が目覚めきってないだけだから」
「──それならいいんですけど……」
スキルや戦闘で身体能力が上がるということはわかっていたがここまでとは。
身体に何か変化はあるのだろうか、そう思って自分の身体を確認すると戦っていた時の服と服装が変わっていることに気づく。
その瞬間、僕は女性職員に目線を向けると少し驚いたのか女性職員は後ろに1歩下がる。
「僕の服や持ち物を何処にやりましたか」
「そ、そこに置いてあります……」
そう言って女性職員はベットの前にある机に指を指す。
そこには僕の着ていた服とズボン、そして腰に付けていたポーチに片手剣と短剣が2本、持ち手がないナイフが数本、鋼糸を出すことが出来る指輪型の魔道具など様々な暗器が置いてあった。
「このことは他に誰か知っていますか」
「い、いえ。支部長にあなたの着替えや看護は全て私に任されていましたので……」
「そうですか……」
僕が暗器を多数持っている理由、それは自分より強い、もしくは複数の人に襲われた時に対処する為の武器だった。
勿論、魔獣との戦闘でも武器として使うことが可能なので、危ない時は使用するように決めている。
だが暗器を複数持っていることを、自分以外に知られてしまったら避けたいことであった。
隠し玉として暗器を持っているので、誰かに知られてしまうのは困るし、暗器を複数所持しているので変な疑いがかかる可能性が──
「あなたは何者なのですか?まさか闇組織か何かの……」
──やはり、予想通りだった。
「いえ、これは非常用の暗器として持っていたものです。1つや2つバレてもいいように複数の暗器を持っていただけですよ」
「非常用……ですか」
「ええ、自分の力や戦い方を知る人物と戦うことになったり、自分より強い人や複数の敵と戦闘を行う際に使う隠し玉です。隠し玉というのは誰にも知られていない武器で、危険な時に使用する緊急用の武器でもあるのです。そんな誰にも知られてはいけないような武器をあなたは知ってしまったのです。その意味、わかりますか?」
その瞬間、女性職員は自分が隠し玉を全て知ってしまっていることに気づき、青い顔になる。
「まぁ、別に知られたからといって何かするという訳ではないですけどね」
「……え?」
青い顔になっていた女性職員だが、僕がそういうと女性職員は首を傾げる。
「ただこの暗器を持っていることを黙っていて欲しいんです。信頼出来る人だからと言って他の人に喋ったりしたら……どうなるかわかってますよね?」
そう言うと女性職員はこくこくと頷く。
僕は咳払いをして、話を切り替える。
「それで、僕の試験はどうなったんですか?」
そう言うと女性職員は慌てて腰のポケットに入っている紙を取り出して、その内容を僕に告げる。
「上記の試験に合格したものとし、Eランク冒険者としてここに任命する──つまり、試験に合格ということですね。あの、ええっとおめでとうございます」
女性職員は慌てながらも冷静さを取り戻し始めているのかあまり怖がる素振りもなく僕に合格を告げる。
「そうですか。あれ、確か冒険者はFランクからスタートだっと思うのですが」
「試験の結果次第では最初のランクがFランク〜Dランクと異なるので……」
「ああ、そんなルールもあるんですか」
それを聞いて納得すると僕は女性職員に手を差し出す。
「僕はEランク冒険者のルーク、これからよろしく頼みます」
少し予想外だったのかあたふたと慌てながらも、息を整えて女性職員も手を差し出す。
「あっ……あの、私は冒険者組合職員ミリア・ラージェです。こちらこそよろしくお願いします」
僕とミリアは握手をすると、僕は机の上にある上着を持つ。
「それじゃあ、着替えるから……」
「あっ、はい。わかりました」
そう言ってミリアは部屋から出ようとするが、直前に何かを思い出したのか、僕に声をかける。
「この部屋は明日までルークさんの貸切ですので自由に使ってください。あと、支部長とあんなに戦えるなんて凄いと思いますよ」
そう言ってミリアは扉を閉めて出ていった。
僕はその言葉を聞いて少し自分自身に嫌悪感を感じる。
「凄い……か、どうせならとても強いんですねと言ってくれた方が嬉しかったかな……いや──」
僕は弱い。
スキルなしの技量だけならこの世界の上位に行けるくらいの実力があると自負しているがスキルを入れた総合的な実力では底辺と言われてもおかしくないほどの実力なのだ。
強いと言われたとしても先ほどよりも大きな嫌悪感を抱くだけだろう。
自分の力の無さが情けなく、そして何より──
自分の性格が嫌いだ。
いつまでも人に甘えて、父親や母親の言葉を思い出して、1つ1つの行動の理由しているこの性格が。
僕は今日ある決意をした。
僕は絶対に誰にも甘えず、何があろうとも誰よりも強い力を手に入れる。
そして──
超越者になってやる。
その瞬間、閉じ込められていた心の欠片が解き放たれた──ような気がした。
最近、気づくと歌を歌ってることが多々あります。
無意識化で歌っているので、印象に残ってるであろう曲、"夜明け生まれくる少女"や"Alteration"などの曲をよく歌ってますね。