Episode14 平穏の幕引き
俺はアリスと共に冒険者組合に向かうと、早朝はいつも静かな冒険者組合が騒がしく、入口付近にたくさんの人が集まっていた。
「早朝なのに凄い数ですね……」
「ああ」
今日はサーニャの森の異変調査の為のパーティーが到着後すぐ調査開始になっているのだが、昨日の夜に到着したらしく、到着後すぐに調査開始だったのが、早朝からの調査開始に変更となったのだ。その為、サーニャの森の調査隊に志願している冒険者達は冒険者組合前に集まっているのだ。
俺とアリスは冒険者組合前に集まっている冒険者を避けて組合内に入っていくと、そこには支部長と副支部長、そして見たことのない4人の冒険者が話のが目に入った。
「あの冒険者達は……本部からの増援か?」
「多分そうだと思います。本部から4つのパーティーが到着したらしいので、そのパーティーのリーダーが集まっているのではないでしょうか」
「その通りです」
突然声が聞こえたので振り返ってみると、そこには組合の制服を着たミリアが立っていた。
「昨日の夜に本部から冒険者が到着したのは知っていると思いますが、到着した後、本部から到着したパーティーのメンバー達は長旅の疲れを癒す為にサーニャの森探索についての作戦を話し合わずにお帰りになったので、いまその会議をしている最中ということです」
「あそこで集まってるのはそういうことか……っと会議終わったみたいだぞ」
支部長と話し合っていた冒険者達と副支部長は立ち上がってその場から離れると、俺達の前を通って組合の外に出ていった。
冒険者達が出て行ったのを確認すると、さきほどからその場を動いていない支部長のもとへと歩く。
「来たか、少年」
支部長は俺達が来たのに気づいたのか、振り返って俺に声をかける。
「さっきの冒険者達は本部から増援にきたパーティーのリーダー達だろ。話し合いが終わって外に出ていったってことは、もう探索を開始するってことなのか?」
「いいや、違うぞ。探索ではなく討伐作戦だ。サーニャの森の異変の原因となるものを調査して、発見次第討伐を行うってのが今回の作戦だ。後、討伐作戦の方は30分後に決行予定になっている」
「30分後に討伐作戦を決行予定だな、覚えておく」
「……そういえば少年、この15日間で強くなることは出来たのか?」
「まぁ、少しはな」
俺とアリスはこの15日間、ずっと魔獣討伐に専念していた。
俺は複数のスキルの取得とレベル上昇をすることが出来たので、脅威度5の魔獣なら数体出てきても問題なく対処出来るほどの実力は手に入れた筈だ。 それだけ俺は実力を上げることが出来たのだ、成長促進持っていないアリスもかなり成長していると思う。
[固有能力]
〈ユニークスキル〉
不屈の奇跡
〈通常スキル〉
威圧Lv.3 隠密Lv.4 強襲Lv.2 精密操作Lv.3 解体Lv.4 危険察知Lv.3
〈武器・防具スキル〉
剣術Lv.5 短剣術Lv.5 二刀短剣術Lv.3 鋼糸術Lv.5 投擲Lv.4
〈魔法スキル〉
魔力感知Lv.5 魔力操作Lv.3 魔力錬成Lv.3
〈耐性スキル〉
物理耐性Lv.3 衝撃耐性Lv.2 痛覚軽減Lv.2 武技使用負荷軽減Lv.2
〈上昇スキル〉
筋力上昇Lv.2 敏捷力上昇Lv.2 視力上昇Lv.2
[武技]
〈物理攻撃系〉
瞬剣 空撃
〈自己強化系〉
加速II
複数のスキルレベルが上昇させたのだが、特に鋼糸術の特訓をして鋼糸術 魔力操作 精密操作のレベルがかなり上昇して、アリスに教えてもらって魔力錬成も取得することが出来たのだ。
それ以外のスキルレベルも上昇しているし、奇襲系武技"空撃"を取得することにも成功した。
「それでだが……作戦の概要を教えてくれないか」
「ああ、作戦はこうだ。第1班として私とAAランクパーティが志願した冒険者を引き連れてサーニャの森で探索を開始し、30分後に第2班で副支部長と3組のAランクパーティーが残りの冒険者を引き連れて探索開始する。異変の原因となる存在に接触した場合、第2班突入済みの場合は他のパーティーが確認出来るほどの魔法を空に放って戦闘開始、他の班もすぐに合流して戦闘開始という流れだが、もし30分以内に原因を発見した場合は、パーティーの一人が伝達役として他パーティーに連絡。発見したパーティーは気づかれないように監視し、私かAAパーティーが合流後、戦闘開始というのが今回の作戦になっている」
「結構、簡単な作戦なんだな。本部からの増援がくるほど大きな事件になっているんだ。作戦も凝っていると思っていたんだけどな」
「相手は魔獣だ。人間が相手ではないのだから、そこまで凝った作戦を考えなくても基本的に作戦通りにいくものなんだ。もし想定外の状況になっても、冒険者はその場での判断が許されているんだ。だから簡単な作戦で大丈夫だし、冒険者は頭が使えないから魔獣を狩る仕事を選んだやつ大勢だ。そんな奴らに細かい作戦を伝えても冒険者の頭じゃ理解出来ると思うか?」
「……無理そうだな」
「だろう?だから大規模な作戦をする時の作戦は簡単な作戦しか作らないんだよ」
冒険者組合も色々考えているんだな……
「あの、私達が参加する班は決まっているのですか?」
「ああ、そういえば言っていなかったな。第1班だ、俺の元でしっかり働いてもらうぞ」
「ああ、しっかり働いた分だけ金も貰うよ」
「はははっ、ああ、しっかり金は払ってやるから安心しておけ」
そんなことを支部長と話しているとアリスが少し迷っているような表情を浮かべて支部長に聞く。
「あの……異変を解決したらサーニャの滝に行くのを手伝っては貰えないでしょうか!?」
「……!」
俺はアリスの言葉を聞いて驚くのと同時に、小さな焦りを感じていた。
俺はアリスの力になると言ってから、最初の目標であるサーニャの滝にいる妖精について少し調べていたのだ。俺はサーニャの滝について調べている最中に、ある冒険者からあることを聞かされていたのだ。それについてはまだアリスには言っていない。言ってしまえば、アリスがどんな行動をとるかわからなかったからだ。だからせめて、サーニャの森の異変が終わるまで隠しておこうと思ったのだ。
その言葉を聞いて突然、支部長の顔が険しくなったのを見た俺は焦りが大きくなり、口を挟もうか悩み始める。
「……何故だ」
「サーニャの滝にどんな状態異常でも癒すことの出来ると言われている妖精サーニャに会いたいのです、無理を承知でお願いしたいのですが……」
それを聞くと、支部長は少し考えてから口を開く。
「……無理だ」
「な、何故ですか?」
「それは──サーニャの滝は存在していないからだ」
「え?」
俺は支部長がそれを口にした瞬間、俺の中に存在していた焦りが現実のものへと変わっていく。
「サーニャの滝が元々無かったという訳ではない。3年前の冬頃、サーニャの滝だけがぐり取られるように無くなって……いや、消滅していたのだ。何故そんなことになったのかは未だにわかってはいないがな」
「そん…な……っ」
支部長の話を聞いたアリスは、目元に涙を浮かべながら走り去るように外に出ていく。
「アリス……!」
俺は事実をアリスに伝えた支部長を睨むと、出ていったアリスを追いかけようと足を動かし始める。
勿論、支部長に怒りを感じるのはおかしいとわかってはいるが、今までは理性を働かせて表に出そうとしなかった感情がアリスに出会ってからは、自然に出てしまうようになってきている。これは悪い兆候だとは思ってはいないが、こういう時は不便だと頭の中でそう思いながら組合の扉に手をかける。
「もし、探索開始の時間に俺とアリスが戻らなかったら……頼むぞ」
そう言うと、俺は扉を開けて外に出る。
たくさんいる冒険者達を避けながら街の外に出る門へと走っていった。




