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Episode13 平穏な日々

 俺はパーティー申請の用紙のパーティー名の欄に『白金』と書くと、支部長ギルドマスターにパーティー申請の用紙を渡す。


「よし、これで少年達はこれから白金プラチナというパーティーで活動していくわけだが……わかっているとは思うが、サーニャの森の探索許可は少年にではなく、パーティーに出されているのだ。なので、サーニャの森の異変が解決するまではパーティーを解散すること出来ないが大丈夫だな?」


「ああ、問題ない」


「そうか……では少年、アリス、これからもよろしく頼むぞ」


「ああ、よろしくな」


 俺はそう言うと、支部長ギルドマスターに背を向けて支部長室を出る。ミリアとアリスも支部長ギルドマスターに一礼すると、俺を追うように支部長室から退室する。


「カウンターに戻ってから渡すのも面倒だからな、冒険証ギルドカード先に渡しておくぞ」


「はい、わかりました」


 そう言って俺は冒険証ギルドカードをミリアに渡すと、先程と同じ道を通ってカウンターに戻ると、ミリアはすぐにカウンターの中に入る。


「ルークさんの冒険証ギルドカードの更新とアリスさんの冒険証ギルドカードの作成をするので、少し待っていてくださいね」


 ミリアはそう言うと、カウンターの奥へと入っていった。


 数分後、ミリアは2枚の冒険証ギルドカードをもってカウンターの奥から戻ってくる。


「ルークさん、アリスさん、冒険証ギルドカードの更新と作成終わりましたよ」


 ミリアはそう言うと、冒険証ギルドカードを俺とアリスに手渡してくる。俺とアリスはミリアから手渡された冒険証ギルドカードを確認する。


 [Cランク冒険証]

 名前︰ルーク

 担当職員︰ミリア・ラージェ

 推薦者︰ライア・フォルテト

 所属︰『白金』

 武器︰片手剣 戦闘方法︰技術特化 攻撃型


 [Dランク冒険証]

 名前︰アリス

 所属︰『白金』

 武器︰魔法弓 戦闘方法︰魔法 遠距離攻撃


 不備がないのを確認すると、俺は冒険証ギルドカードをポーチにしまう。アリスも俺と同様に不備が無かったのか、冒険証ギルドカードをしまっていた。

 俺はアリスが冒険証ギルドカードをしまったのを確認するとポーチに入っている魔石を全て取り出して、カウンターに置く。


「魔石の換金を頼む」


「魔石の換金ですね、わかりました」


 ミリアはカウンターに置いてある魔石を全て手に取ると、再びカウンターの奥へと入っていく。1分も立たないうちにミリアはカウンターの奥から出てきてカウンターに戻ると、「どうぞ」と言って布の袋に入った金を俺に手渡す。

 俺は布の袋を少し開けて見てみると、中には数枚の銅貨と銀貨、そして十数枚の金貨が入っているのが確認出来た。

 俺は少し多いなと思いながら袋から数枚の金貨を取り出すと、アリスに手渡す。


「アリスの取り分だ」


「……いいんですか?」


「良いも悪いもないだろ。アリスが働いた分だけ金を貰うのは当然だろう?」


「でも私はゴブリンソーサラーの魔石をルークさんに譲りました。だから私が貰うべきお金は銀貨数枚の筈です。それに私はルークさんに助けてもらいました。命の恩人にお金を貰うなんてことは……」


「俺はアリスに金を渡しただけだ。パーティーで働いた分の取り分を俺を経由してアリスに渡っただけで、あげたわけじゃない。それに俺はアリスからゴブリンソーサラーの魔石は貰ったが、ゴブリンソーサラーを倒したという功績は貰ってないし、それはアリスのものだ。ゴブリンソーサラーやハイゴブリン、数体のゴブリンを倒したなら、その金は貰えて普通の金額だろ」


「はい……そう、ですね、わかりました。ルークさん、今回のことも森でのことも色々ありがとうございました!」


 アリスは微笑みながら、俺に礼を言って頭を下げる。


「ああ」


 俺はアリスの言葉に短い返答をすると、カウンターに背を向けて冒険者組合(ギルド)の出口に向かおうとすると、突然後ろからアリスの声が聞こえたので、身体をカウンターに向けてアリスを見る。


「あ、あの!ルークさん、夜ご飯をお礼に奢りたいのですが……」


 そういえば、森でそんなこと言っていた気がするな。自分で言ったのに忘れるとは……


「ああ、大丈夫だぞ」


 俺の言葉を聞いたアリスは嬉しそうな表情を浮かべて俺を見る。

 それを見た俺は苦笑しながら、アリスに言う。


「でも、昨日この街に来たばかりだからな。どの店が美味しいかとかは全くわからないからな」


「大丈夫ですよ、お店を探すところから始めるのも楽しいですから」


「そうか」


 俺はアリスと二人で冒険者組合(ギルド)から出ようと、再びカウンターに背を向けると、突然俺の服の裾を掴んでミリアに止められる。


「あの……私、美味しいお店たくさん知ってますよ」



 ◇



 俺達はいま、ローレンの街で安くて美味しいと有名な店に来ている。

 俺達はローレンの街に来たばかりなので、よく知らないのだがミリアが美味しいお店をたくさん知っているということなので、案内してもらったのだ。


「このお店は肉料理が有名で特にステーキなんて大人気なんですよ」


「へぇ、そういえばステーキを食べてる人が多いな」


 そう思い、周りを見渡すとそこにはたくさんの人達が肉料理を食べながら酒を飲んだりしているのがわかる。肉料理が有名で集まってきているというよりは地元の食堂に丁度いい酒のつまみがあるこの店を選んでるだけじゃないのかと思いもしたが、特に口に出すり理由もないので言わないでおく。


「お待たせしました!」


 店員が俺達が座る席に近づき、机にオークのステーキとパン、お酒を3人分並べていく。


「ごゆっくりどうぞ!」


 そう言って店員はカウンターへ戻っていった。


「それじゃあ、いただきましょうか」


「ああ」 「はい」


 ミリアはそう言うとすぐに酒に手をつけて、ごくごくと飲み出した。

 俺は会話を放棄して食事を楽しんでいるミリアを見て、空腹に我慢の限界がくる。俺も食べ始めようと食事にフォークをもってあることに気づく。


 隣に座っているアリスが全く食事に手をつけていなかったのだ。

 食欲がないのかと思ったが、よく見てみると、どうすればいいのかわからず戸惑っているのに気が付く。


「アリスってこういうところ来たことないのか?」


「はい……昨日までは宿屋で食事を持ち込んで食べていたので、こういった店で食べるということは初めてなのです」


「アリスって箱入り娘って感じがするもんな」


 そういうと、アリスは少しむっとした顔になるが、すぐに表情は戻る。


「ルークも食べていないように見えるのですが……」


「ああ、アリスが食事に手を付けていなかったのが、少し気になってな……食べ方がわからないというわけではないんだろう?」


「はい、初めてのことだったので少し戸惑っていただけなので」


「そうか、ならいいんだ」


 アリスが食事に手を付けないのは俺がまだ食事に手を付けていないのも理由なんじゃないかと思った俺は、ナイフを手に取ってステーキを切ると、フォークで指して口に運ぶ。


「結構、美味いな」


 ステーキの肉汁が口に広がり、微かな酸味を感じさせるいい味になっている。

 俺はステーキの美味しさに感嘆をこぼしながら、手を進める。ちらっとアリスの姿を確認してみると、アリスがステーキを美味しそうに食べている姿が見えた。俺はステーキに目線を戻して食事を再開する。

 ミリアはお酒を何杯もおかわりしながらステーキを食べている姿に苦笑しながらも、俺はこの時間に自分の居場所が出来たかのような安心感を得ながら、時間は過ぎていった。


 そして15日後、本部から送られた冒険者達が続々とローレンの街に入ってきたのだった。

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