世界の壁は言葉の壁
1日目/ACT2/『職探し』
さて、これからどうしようか。
どうしようといっても・・・。
「とりあえず職探しかな・・・?」
この手の異世界召喚ものは、もう帰れないか何か目的を達成しないと帰れないと相場が決まっている。
今しがたいきなり見たことも聞いたこともない世界に放り出されたばかりだが、とにかく生活の基盤は確保しなければならない。
まして俺は主人公っぽい見た目でも爽やかな生活もしていない。多分アレだ。主人公よりも先に召還されて、そこそこの知識を手に入れて、それを主人公に話しかけられた時に親切に話すMOBポジだ。
とりあえず、自分の持ち物を確認する。
「服は学ラン、カバンはTCGのケースと中身。腕時計に薄手の靴下とスニーカー、か・・・あ、あと財布・・・ハンカチ、ポケットティッシュ・・・こんなもんか・・・」
財布に関しては中に野口医師が6枚ほど入ってはいるが使い物にはならないだろう。
だが。
「・・・でも、もし、もしも何かの間違いで女神様が誰かが『ごっめーん間違えちゃった(・ω<) テヘペロ』とか言って帰してくれたら・・・」
異世界で発覚した新事実、俺は意外とけちな奴だったらしい。
「でもまぁ実際何かの役には立つかもしれないし。」
日本の紙幣は、他の国に比べて馬鹿みたいに特殊な加工がなされているらしい。見たところ町並みは中世のようだし、名のある紙職人あたりなら、その価値に気づいて高値で買い取ってくれる可能性もないわけではないだろう。
しかしそれにしても町の情報もない状態ではどうしようもない。職は生活の基盤。かつてのアルバイトの経験を生かして、まともに労働できる場所を探さねばならない。
「まずはどういう労働口があるかの把握だな」
幸いと此処は大通りのようで、露店が所狭しと並んでいる。上手くすれば、今日中に職を得られるかもしれない。
さて、心機一転。がんばってこの世界で生きていこう!
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まあ結果から言って、この世界での就業は俺には無理だと言う事が判明した。
ソレと言うのも・・・。
「おい・・・言葉は通じて文字は通じないってアリかよ・・・?」
そう、この異世界、どうにも文字は日本語ではないらしい。
それが発覚したのは、職を求めてコンビニに最も近いであろう、小規模雑貨店の店主に求職の旨を伝えた際履歴の提示を求められたからである。
紙に日本語で、適当ないかにもありそうな履歴を書いたところ、顔を横に傾けてこういわれた。
「お前ふざけてんのか?」
その瞬間大体のことを察し、店主に謝罪の旨を伝え、店を出た。
その後も、のべつまく無しに店を訪ね歩いて分かった。
この世界では、日本語の文字は通じない。
「早速問題に直面・・・この世界で生きていくのも楽じゃなさそうだ・・・」
この世界で俺が直面した最大の問題は、前の世界では障害にすらならなかった履歴書だった。
はい、二話です。次は早めに上げられる様に頑張ります。
それでは、ご一読いただき、ありがとうございました。