初めての会話
僕はあの日彼女をみてから毎日あのテニスコートへと足をはこんだ。
今日も彼女は楽しそうにテニスをしている。
《ああ、今日も可愛いなぁ。》
どこに住んでいるんだろう
何が好きなんだろう
誕生日はいつだろう
聞きたいことが次々に頭に浮かんでくる。
どうすれば話せるだろうどうすれば仲良くなれるだろう。
そんなことを考えているうちに日が暮れて彼女は家に帰りはじめている。
《最悪だ、今日もはなしかけられなかった。》
話しかけるタイミングはあったはずだ、なのに話しかけられない。やっぱり僕はダメなヤツだ。やっぱり僕はいくじなしだ。
《僕わ変わらなければいけない。》
そう思いながら僕は街灯の少ない(いや、無いと言ってもいい)帰路についた。
《はぁ、だめだった。》
今日も今日とて話しかける勇気など出なかった。
《やっぱり僕は変われない、変わることができないのか。》
その時、自販機で飲み物を買うためのお金を落としてしまった。その100円玉はバスケのスリーポイントシュートのような見事な放物線を描いて休憩中だった彼女の足元に転がって行った。
「落としましたよ。」
彼女は爽やかないや、愛らしい笑顔でそう言いながら僕に100円玉をわたしてきた。
「あ、あり、がとう。」
《ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!
自然に話そうと思ったのにどもってしまった。嫌われたかも。》
そんなことを考えながらほうけていると、
「どうかしました?」
「い、いやなんでもないですよ。」
できるだけ自然で爽やかな笑顔で返事をする。
すると彼女はシャンプーのいい匂いを残して友達の方へ戻っていった。
《あぁぁぁぁ、電話番号とか聞いとけば良かったぁぁぁ!》
自分の行動力のなさを嘆きながら僕は家にかえり始めた。
その後も話しかけられない日々が続いた。
いつの間にかあしたから3年生だ。
《クラス替えで元カノと同じクラスにならなきゃいいな。》
そんなことを考えながら春休み最後の日を終えた。
また短くなってしまったすみません。
次回からはできるだけ気を付けます。