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総集編

『管理局』の捜査でのちのち分かったことを書き連ねていくと、おれの存在は、コレマタまあ偶然が偶然に重なった不幸な被害者という立ち位置だったらしい。「のちのち分かった」といったって瞬きの間に二年経っていたのだから、おれにとっちゃあ複雑な感じなのだけれども。


 まず『管理局』に『アン・エイビー』という新人隊員がいた。

 彼女は新人らしからぬ不屈の精神力と確かな戦闘力で、アッというまに主戦力に数えられるまでになった気鋭の実力派だった。

 しかしアン・エイビーは、実は管理局と反する組織のスパイだったらしい。

 彼女は、管理局の中にいた複数のスパイ達と、鬱憤の溜まっていた職員を見つけてスカウト。手を組み、管理局に向けて大々的な攻撃を計画した。


 管理局には、『本の一族』という庇護下にある種族がある。ファンたち、あの色鮮やかな髪と瞳を持つ人たちのことだ。

『本の一族』は、体が特別に強靭なわけでも超能力のようなことが出来るわけでもなく、特別美人が多いっていう一族でもない。けれど異世界人相手に限り、『本の一族』は特別な生き物だった。

『本』の肉体は、あらゆるエネルギーの増幅剤として使うことができる。炎にくべれば燃え上がり、その血は生物が飲めば万能薬、肉と臓物まで食べれば不老不死も夢ではない。

 六百年も前に、それを知られた血気盛んな異世界の商人たちに狙われ、一時は街一つぶんの人数にまで減ったらしい。それを助けたのが管理局で、今もその縁が続いている。

 だから『管理局』が看板を構えるこの世界では、総人口八百万のうち異世界人は三万人だけ。むしろこの世界『本の国』を、管理局が間借りしているのが現状だとか。

 家賃代わりに管理局は『本の一族』を守る協定を結んでいる。本の一族もまた自分たちの肉体を可能な限り提供し、もちつもたれつの共生関係とかいうものを保っている、らしい。


 アン・エイビーたちは、そんな『本の一族』に目を付けた。

 それがあの、おれが見た光景の一端である。


 アン・エイビーたちの目的は、管理局が所有する重要なアイテムの強奪と、管理局そのものへ攻撃すること。

 火の手の上がった街の混乱に乗じ、それらは遂行された。


 管理局の対応が遅れたのは、市街の混乱とは別に、もう一つ原因がある。それがおれだ。


『管理局』のあるこの世界には、異世界人をはばみ、許可されていない者を外に出さないための結界が張られている。この結界は試行錯誤を重ね、三百年破られたことがない不落の城壁である。

 その『結界』を破るために、用意された駒がおれだった。

 アン・エイビー一派は適当な子供を攫い、この『本の国』に『召喚』したのだ。強奪したアイテムの一つを使ったらしい。どんな障害も乗り越えてワープさせることが出来るこのアイテムは、召喚できるのは一人だけ。

 アン・エイビーらは、たった一人の味方を侵入させるより、一人の一般人をここに連れてくることを選んだ。


 それにより、侵入者を察知した結界の警報が発動。同時刻に別ルートで本当の侵入者がアン・エイビーに加勢。三百年破られなかった城壁の異常、さらに管理局は市街の被害の把握も追いつかず混乱し、アン・エイビーらの逃亡を許した。




 以上が、おれが『消えていた』二年間のうちに『アン・エイビー事件』と呼ばれるようになった管理局最大最悪の不祥事事件の顛末だ。



     次回予告




「あ~んっ エリカちゃあんっ 」




         「ここから直線にして、北西230mと34センチ……」



   「え、今日? 新しいやつが来るの? 」



                  「フェンスのウエエェ? 」

                        「エリカ嬢、吐き気でもあるのですか」

「頭痛はしてるわね……ねえ、貴方たちが会った間抜けって本当に私? 」


































第一章「管理局 第五部隊」


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