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冷泉院6

源氏 しばらくして宮ご懐妊のうわさが広がった。そりゃあ

 ひやひやものよ。宮の心地も同じじゃ。宮中ではことさら

 会わぬようにした。しかしまぬがれぬ。紅葉賀は宮のために

 舞った。思いっきり宮の前で。


冷泉 今でも語り草になっております。

源氏 しかし年が明けても子は生まれぬ。とにかく宮の安産を

 必死で祈った。おそらく宮中も世間の民もみな祈っていた

 いたと思う、あのときは。二か月遅れでやっと生まれた玉の

 ような男君。それが御君じゃというわけよ。


冷泉 そのことは女房達からよく聞きました。遅れているのは

 物の怪の仕業とかで大掛かりな加持祈祷が連日あちこちで行

 われていたとか。


源氏 そうよ、御君はわしの弟。わしは母方の位が低く皇太子

 にはなれぬが御君は次の次の帝になれる身、父桐壷帝は

 ことのほか喜ばれた。わしもうれしかった。

N(ト源氏は冷泉を見つめ)


源氏 驚いたのはその春にわしが宮中へ上がった時。帝は若君を

 わしに見せ『源氏にそっくりだ』と無邪気に満面の笑み、わしは、

 たぶん御簾の中の藤壺の宮も生きた心地はせなんだ。帝は最後の

 最後まで不義の子とは思わなんだと思う。


N(異様な沈黙に源氏はすぐに続けます)

源氏 もしそうでなかったとすれば、父桐壷帝はとてつもなく

 心の大きいお方。

冷泉 帝はその秋、母を中宮にされました。


源氏 そうそれで御君の将来は完璧になった。帝はこのわしの将来を占い

 臣下の長源氏の名を賜るが、当時のわしはすべてに際立っていた。兄

 東宮をもしのぐほどにに。父はその負い目にすべてを許してくれた。

 しかし不義の子とわかればそれは絶対に許せるものではない。そう思う。

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