許し
誰かが去った部屋の中。
寂しさだけが残ってる。
私はそこに一人で座り、
誰かが戻るのを待っていた。
遠くに聞こえる話し声。
笑い声に交じって消える。
そして私は悟ったの。
誰も、戻りはしないことに。
立ち上がって、追いかける。
走って走って、
走って走って。
いくつものドアを開けて、
いくつもの階段をかけ降りて。
そしてふと、思うの。
「私はどうして待ってたの?」
足を止めるとわからない。
「私はなんで、おいかけた?」
空を仰いでもわからない。
「私はなぜ、止まったの」
一人で歩く、とぼとぼと。
その先のドア、開けてみる。
なんにもない。
誰もいない。
怖い。
寂しい。
悲しい。
誰か、
誰か、
私の、
声を、
聞いて。
ああそうか。
私は、聞いてほしかった。
私の声に、共感してほしかった。
「うん、そうだね」
その言葉が聞きたかった。
認めてほしかった。
私の存在を。
だから待った。
だから追いかけた。
だから走った。
私という存在を許してもらうために。
私が生きることを諦めないように。
その時声が言ったんだ。
「私があなたを許せばいい。
あなたは私。
私はあなた。
もう、違えることはありえない」
そうして私は許された。