雪色の魔女8三者の蛇編
あれは元々、一人の雪女を助けた恩義(借り)を返す為に私が差し向けられただけで、最初から雪防人の監視下にあった。
小夜子は、この裕二に親父や知り合いを殺めた後ろめたさが、あって一端は死のうとも思ったが、寸前の間に救われる。
そして後に残った全ての物は、裕二に小夜子が死んだものと植え付けるものであった。
3章 三者の蛇
あれから遠い遠い場所を巡り私は男達の生気を吸って生きた。今日は美形、明日も美形と好みに合わせて渡り歩いた。
私自身では無く、あいつがした事、でも言い返す事なんて以ての外、だってわたしはあいつによって生かされているから。今日も私の意識は外に出られない。
それはあの日した事の仕打ち、生きる事も死ぬ事も全てはあいつの思いのまま、私は、この生き地獄に這い出るのは何時だろかと思い悩んだ。
そして何時しか私自身の意識もきえかかった。
「おいおい、」
「なんだ五月蝿い。
私は眠いのに。」「なんじゃ愛想の無い返事をする。
ばばじゃよ。
ばば。」
「おばあ様。」
数年前にみまかれたおばあ様が声をかけてくれた。
当然、信じられぬ事でした。多分、あいつのたちの悪い悪戯だとたかをくくった。
「何よ。」
「何そのふてぶてしい態度は、いいけど。
あんたの今の状況みると分からなくはないけど。だけど、その様子だと時間がないみたいだな。」
そう言うと、おばあ様は、私達の村に伝わる、もう一つの伝説について話しだした。 それは今や村、雪も今のように決まった季節でしか降る事のなかった時代、ピーンヘルムに若いおなごがいた。
その娘はな、年に一度の神事、蛇の生け贄と決まった。
当然拒んだが、決まった事だから、もうどうしようもなかった。
娘は泣き暮らし、その母御も泣き暮らしたんじゃ。
そしてな、生け贄の儀式の日が来たんじゃ。
娘は十丸篭に泣く泣く乗せられて、まあ、見ていられん状況じゃった。
でも、村の輩は、年に一度の祭りに酔いしれ、娘の事など、お構いなしじゃった。
そしてな、祭りが始まり神主の祝詞が始まった。
最早、その頃になると精も根も尽き果てた娘の躯だけで、この終わりにくる恐怖など知るよしもなかった。
そして祭りも佳境に入り娘が祭壇におかれる。
この後、蛇がペロリと娘を飲むと、この年の豊作が約束された。
そうでは無い時、村は飢餓にあうという。
そして運命の時がきた。
つづく