雪色の魔女17
改めてふと考えてみても、この異常さはどう飾り立てようが、変わらぬ異質的な部分が多く裕二の気持ちに更なる小夜子対する不信感を煽った。
そしてふと辺りを見渡し君が去った跡を見れば、何とも痛ましげに思えてくる。
このフルートと君が着ていた死に装束を纏い裕二は、何を思い、何を感じて行かなければいけないのか、逐一この乏しい頭で思考した。
だが、答えなど出る筈もなかった。
「頭の中だけで考えては駄目。心で念じるのよ。」
どこかの漫画で、そんな台詞を聞いた事がある。駄目元でやって見たが、駄目な物は駄目だって知った。
ここは、もうひとつの現実の世界。
そう思えば納得もする。
「考え方は、間違っていないのよ。
貴方、誰かを助けるのに犠牲が必要でない。
自分は助かろうって虫のいい考え方してない。
さっきも見ていたんだけど、貴方、誰かの犠牲の上にいるの知ってない。もしかして知らないのなら小夜子なんて助けないで結構よ。」
今度は蚊程の小さな虫がいきなり裕二の耳の中に入り込んで話をしてきた。
何がどうというものではないだろう。
裕二の真実を余す処無く問いただしたのだ。
「いいさ。
この命、小夜子の為になら安いものさ。
ただあいつに対してどう対処していいかわからなかった。
それだけだ。」
「その気構えがあれば、私も命捧げられる。魂だけになってしまったけれど、私の最後の力と貴方の死をも恐れない強き心があれば大蛇なんて倒せる。」
「貴方は、」
そう問い掛ける前に蚊程も小さき虫は耳の中よりでていってしまった。
あれは何だろうかと考えるよりも早く、更なる小夜子の思いと大蛇に打ち勝つ根性が裕二の頭の中を巡らせ離さなかった。
「おやっさん。」
その意思をも受け継ごうとしていた。
そして裕二は腐乱した異臭漂うゴーストタウンで一夜を明かした。
これが小夜子の生まれ育った街と思うだけで他のものはどうでもよく感じるのだ。その重圧に負けぬ信念をつちかって。
明日の日、この命果てようとも。
「小夜子ー。」
つづく