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私はすたすたと先を行く小島先輩のあとに続いて、黙ったまま歩いていました。
「どう? しばらく時奈くんのそばについてみて」
「うん……。楽しいな。ずっとこのままでいいかも……」
私は素直に思ったことを伝えました。
「ぶっちゃけた話、あなた、時奈くんのこと、好きなんでしょ? だからその想いのせいで、時奈くんのそばから離れられないようになって、地縛霊……じゃなかった、人縛霊になった。そうなんでしょ?」
「あぅ……」
この人、なにもかもお見通しなのかしら……。
やっぱり、普通の人とはちょっと(?)違うみたいです。
「はい……。私、零樹くんのことが好き。いつも遠くから見てました。楽しそうにはしゃいでいる零樹くんの姿を眺めているだけで、幸せだったんです。あの日も、屋上で風に当たっていたら零樹くんの姿を見つけて、それでじっと眺めていたんです」
「ふむ」
すべてわかっているわよ、そう言っているかのような微笑みを浮かべながら、小島先輩は私の話に耳を傾けてくれました。
「……このまま、あの人のもとへ飛んでいきたい……。そう思ったんです。そうしたら……」
「手すりから乗り出しすぎて、ホントに時奈くんのところに飛んでいっちゃったってわけね。正確には落ちていった、だけど」
「あはは……。はい、そのとおりです……」
自分でもマヌケだなとは思います。
私って昔から、ぼーっとしているところがあるんですよね……。
「最初に小島先輩に会ったときは本当に忘れていたんですけど、水沢さんと翔くんを見ているうちに、思い出してきたんです」
「なるほどね」
ふっ……と、小島先輩の顔が寂しげな表情に変わりました。
「でも、本当に幸せ?」
「え……?」
「あなたは死んでしまっているのよ? 確かに今は時奈くんのそばにいられるわ。ただ、それもいつまでだかわからないし、そのうち時奈くんにだって恋人ができたりするはずよ? そうしたら、あなたは辛いだけじゃない?」
「は……はい……」
うん……。
もちろん私にだってわかってはいるんです。
私はここにいてはいけない存在なのかもしれないって……。
でも……でも、今はただ零樹くんのそばにいたい……。
そんな私の想いを見透かしたように、小島先輩はこう言いました。
「ふふっ。ま、しばらくは成仏もできなさそうだし、私も協力するから、時奈くんとの生活を楽しんでなさい。そのあとのことは、またそのときに考えればいいわ」
「はい……ありがとうございます。そうですね。協力……よろしくお願いします」
少し怖い部分もあるけど、私が頼れるのは、零樹くんと夕時くんの他には、この人しかいないんだものね。
「薬代分、働いてもらわなきゃならないしね♪」
「あぅ……」
「あはは! 冗談よ!」
――どこまで本気かわからないよぉ。やっぱりこの人に頼るのは、間違いなのかも……。
とはいえ。
まだしばらくは、零樹くんのそばで生活できそうです。
今の私は、それだけで充分に幸せ。
小島先輩の言うように、あとのことは考えずに、今を楽しく生きて――あ、死んでるんだった――えっと、今を楽しく過ごしていこうと、そう考えることにしました。
だから、これからもよろしくね、零樹くん♪
以上で終了です。お疲れ様でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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