小噺12『冬の曙』
掲載日:2026/06/19
○『冬の曙』あらすじ
酒好きの熊吉は、冬のある朝、ふと目を覚ます。障子の外は真っ暗だったため、まだ夜だと思い込む。
「こんな時間に目が覚めるとはもったいない」
と、昨夜の残り酒で一人晩酌を始める。やがて酔いが回ると、近所の酒仲間たちを起こして回り、
「まだ夜だ。ひと飲み付き合え」
と誘う。
仲間たちも外の暗さに騙されて集まり、熊吉の家で酒盛りが始まる。飲みながら誰かが鳥の声や5回の鐘の音や物売りの声に気付いても、
「酔っ払いの空耳だ」
「夜更かしする鳥もいる」
「夜五つだ」
「夜遅くまで商売とはご苦労なこった」
と解釈し、誰一人として朝だと気付かない。
格子窓から朝の日差しが差していることにも全く気付かない。
やがて一同は酔い潰れて眠り込み、昼近くになって目を覚ます。すると仕事はとっくに始まっており、各自離散する。
主人に激怒された熊吉は、
「冬の明け方を夜と間違えた」
とばかりしか言えない。
主人に
「格子窓から差す明るい日差しも見えなかったのか」
と言われて、熊吉は答える。
「へぇ、あの時分は皆、徳利ばかり見ておりました」




