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三つの国、四つの声  作者: はまゆう


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第2話 影が消えた夜

1. イスラエル — シモン(退役兵士)


「影が消えた。」


テレビの画面には、イランの首都テヘランの空が、赤く爆ぜていた。

イスラエルのニュースキャスターが、静かに声を落とした。

「トランプ大統領は、イランの最高指導者のハメネイ師が死亡したと確認した。」


シモンは、カップのコーヒーを口に含んだまま、その言葉を聞いた。

「“邪悪な独裁者”、私たちの影を、消したんだ。」


彼の頭には、ガザの壁の向こうでロケットが炸裂した日の記憶が、今も鮮明に残っていた。

「息子が死んだ日、私たちは、ハメネイ師の影を、イスラエルの外側に見ていた。」


彼は、静かにテレビを閉じた。

「私たちは、それを“敵”だと呼んでいた。でも、私たちは、その影が、私たちの人生を、どんな形で支配していたか、気づかなかった。」


彼は、静かに呟いた。

「私たちは、彼を“独裁者”と呼んでいた。でも、私たちは、彼の死を、どこまで喜べるのか。」


彼は、新聞を広げた。

「報復攻撃が始まる。イランのミサイルが、今、私たちの上に、落ちてくる。」


彼は、その新聞を握りしめた。

「私たちは、彼の死を祝うくせに、彼の死が、私たちの命を、もっと危険にしている。」


***


2. ガザ — アミーラ(母)


「テレビで、“彼”が死んだって言ってる。」


ガザの、崩れた屋根の下で、アミーラは、ガソリンストーブに小さな鍋を乗せていた。

三歳の息子セイドが、彼女の足にすがりついた。


「お母さん、誰が死んだの?」


彼女は、テレビの画面上で、イランの空が赤く爆ぜている様子を見た。

「イランの老人が、死んだ。」


彼女は、その言葉を、静かに繰り返した。

「ハメネイ師。彼は、私たちの“解放者”と言っていた。でも、私たちの命は、私たちだけのものじゃない。」


彼女の頭には、イスラエルの銃撃があった日の記憶が、今も鮮明に残っていた。

「彼は、私たちのために“イスラエルを砕く”って言った。」


彼女は、静かに言った。

「でも、彼の死は、私たちの命を、もっと不安にした。イランのミサイルが、もう私たちの上にも落ちてくる。」


彼女は、セイドの頭を抱いた。

「彼は、私たちの救い主でも、私たちの敵でもなかった。」


彼女は、静かに呟いた。

「私たちにとっては、彼の死を、悲しむことも、喜ぶことも、できない。」


***


3. イラン — ハサン(宗教学校の僧侶)


「私たちの守り神が、消えた。」


ハサンは、イランの宗教学校の部屋で、テレビの映像を静かに見ていた。

「トランプ大統領は、ハメネイ師が死亡したと発表した。」


彼の部屋の壁には、黒いマントを着た老人の写真が、今も静かに飾られていた。

「彼は、私たちの盾だった。」


彼の兄の顔が、彼の頭に浮かんだ。

「兄は、私たちの敵をイスラエルと呼んでいた。そして、ハメネイ師を、私たちの守り神と呼んでいた。」


彼は、その写真を見つめた。

「彼は、私たちの未来を守るための、神の意志を代弁する人だった。」


彼は、静かに言った。

「私たちの死は、悲しむしかない。でも、私たちの敵は、まだ米国とイスラエルだ。」


彼は、テレビの映像を思い出した。

「イランのミサイルが、イスラエルを撃つ。でも、その火は、私たちの家にも落ちる。」


彼は、その写真を、静かに手で包んだ。

「彼の死は、私たちの信仰を、より強くする。」


***


4. イラン — マリカ(大学教授)


「私たちの影が、消えた。でも、私たちの自由は、まだここにない。」


マリカは、イランの大学の控室で、テレビの映像を静かに見ていた。

「トランプ大統領は、ハメネイ師が死亡したと発表した。」


彼女の頭には、デモの日が、今も鮮明に残っていた。

「彼は、私たちの声を“反乱”と呼んでいた。」


彼女は、テレビの映像を見た。

「イランのミサイルが、イスラエルを撃つ。でも、その火は、私たちの家にも落ちる。」


彼女は、新聞を広げた。

「私たちの影は、彼の支配だった。でも、彼の死を、どこまで喜べるのか。」


彼女は、静かに言った。

「私たちにとって、彼の死は、自由を取り戻すための一歩かもしれない。」


彼女は、窓の外を見た。

「夜の街が、静かに光を灯している。でも、私たちの声は、まだ、彼の影に覆われている。」


彼女は、静かに呟いた。

「私たちが、彼の死を、喜ぶよりも、彼の影を、私たち自身の声で消したい。」

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