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異世界農業譚 〜チートなし大学生、土と汗で成り上がる〜  作者: 済美 凛


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33/78

白く固まった朝

朝の台所は、まだ冷えていた。

 夜の間、布に包んだ鍋は動かしていない。


(……さて)


 俺は、少しだけ緊張しながら布を外した。



---


 鍋の中は、静かだった。

 揺らしても、水音はしない。


 木の匙を入れ、ゆっくり持ち上げる。


「……」


 白い塊が、崩れずについてきた。


(固まってる)



---


 レオンが、息をのむ。


「……できた?」


「ああ。

 成功だ」


「ほんとに!?」


 思わず笑ってしまうほど、嬉しそうな顔だった。



---


 リリアンヌも、そっと覗き込む。


「……牛乳、ですよね?」


「元は、です。

 でも、もう別の食べ物です」


「不思議ですね……姿は似ているのに」


「中身が、変わってます」



---


 小さな椀に分ける。

 湯気はないが、ほんのり温かい。


「まずは、そのまま食べます」


「……勇気がいりますね」


「大丈夫です。

 腐ってはいません」



---


 レオンが先に口に入れた。


「……すっぱい」


 一瞬の間。


「……でも、嫌じゃない」


 もう一口、すぐにすくう。



---


 リリアンヌも、慎重に味わった。


「……胃が、落ち着く感じがします」


「それが正解です」


 俺も一口、口に運ぶ。


(……よし)


 雑味はなく、狙った酸味だけが残っている。



---


「これが……ヨーグルト」


「はい。

 発酵した牛乳です」


「発酵……」


「目に見えないものが、

 ちゃんと働いた結果です」



---


 鍋の底には、まだ白い塊が残っている。

 昨日まで、ただの牛乳だったもの。


(この世界でも、通じた)


 その事実が、胸の奥に静かに広がった。



---


 レオンが言った。


「これ……また作れる?」


「作れる。

 今日できた分が、次の“種”になる」


「増えてくんだ……」


「ええ。

 正しく扱えば」



---


 台所の窓から、朝の光が差し込む。

 白い器の中で、ヨーグルトが静かに揺れた。


 派手さはない。

 だが確かに――


 新しい食べ物が、この家で生まれた。


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― 新着の感想 ―
発酵が知られていない、となるとこの世界にはチーズもないのかな。チーズ、パンに乗せたりすると美味いからちょっとこの世界の人達かわいそうだな……
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