宰相アルドベリク④
今日、ジルハイムによって2度目のビラが撒かれた。
《 ロマーナ国の民達よ。
そろそろ我が国が、今までどれ程この国の為に尽くして来たか、ご理解頂けたのではないだろうか? 災害で疲弊したロマーナを支援し、その後ろ盾となった我が国の王女は、嫁いで僅か2年で亡くなった。
親としてこれがどれだけ悔しく辛い事か、君達に分かるか⁉︎
ロマーナは娘の死は感染症による病死だと発表したそうだが、よく考えてみてくれ。あの頃、ロマーナに感染症など流行っていただろうか? 市囲で流行していないものがなぜ王宮でだけ流行るのか? どう考えても可笑しいだろう? 明らかに娘の死の原因は他にあるのだと我々は思っている。今回、周辺国もまた、その事実を重く受け止め我が国に協力してくれた。
だが、残念な事に王宮と言う閉ざされた空間で起こった事だ。証拠がない。
だからね、君たちと取引をしようじゃないか? 娘の死の真相を明らかにして欲しい。そうすれば代わりに我が国からロマーナへの支援の再開を約束しよう。勿論、他国にも掛け合ってロマーナへの物流も再開してくれる様、我が国が責任を持って説得しようじゃないか。
因みにだが、君達国民が我が娘を貶めてまで陛下の側妃にと望んだイヴァンナの実家シルベール家。筆頭公爵家にも関わらず、前回の震災時と同様に今回も国からの支援要請に答えていない様だね。
では、君達が今度こそ、君たちが選択を間違えない事を私は心より祈っているよ ジルハイム国王 ユリウス2世 》
「……ここで動かれたか…」
相変わらず、民に語りかけるような言葉で記されたそのビラを見ながら、私は執務室で1人呟いた。