パーティへ
和やかに会話をする家族とロイド様に挨拶をする。少し声が震える。
そうしてロイド様を見ると、にこやかにこちらを見つめてくれる。
マリーが完璧に美しく仕上げました!と太鼓判を押してくれたので大丈夫のはずだ。
「お久しぶりです、フェミリア。いつも美しいですが、今日は一段とそのドレスも相まって、言葉が出ないほどに美しいです。」
そう、ロイド様がおっしゃってくれて、少しほっとした。
そうして、家族に挨拶をして馬車のほうにエスコートされる。
馬車にはステップがあるので、ロイド様の手を借りてあがり、中でおとなしく座る。
少し、手が震えていたのはきずかれたかしら。
平気な、普段のように対応できていたと思うがやはり、この先を思うとこわい。手が震えるので両手でぎゅっとつかむと、震えは収まったが緊張の為かひどく手が冷たいことに気が付いた。
「フェミリア?」
前に座ったロイド様がこちらを見ている。
「いいえ、なんでもないです。ロイド様。このような素敵なドレス等本当にありがとうございます。」
ニコリと返すと、ほっとした表情になるロイド様。ロイド様も緊張しているのかしら。
「いや、本当に似合っているよ。女神様かと思った。」
ニコニコと私のことをほめてくれるが、やはり前記憶にあるロイド様と違いすぎて戸惑ってしまう。
私に対してそんなに褒めてくださることはなかったのに。
そうして、私の手にロイド様は温かい手を重ねてきた。
「緊張しているね、大丈夫だよ。私がいるから」とロイド様。
本当にこの先にある城で起こることが怖くて緊張はしている自覚はあり、ぽつぽつとしか会話もできず、城に到着した。
やはり、覚悟はしていたが今度は少し足が震える。
目の前で、聖女に愛を紡ぎ、私との婚約を破棄するのか。
早々に別室に連れていかれて、婚約破棄の契約書を出されたらどうしよう。
でも、きらびやかな城内をロイド様と連れ立ってあいさつなどにこやかに過ごしていると、最後になるならば楽しもうか、という気分にも少しずつなってきた。
まだ、婚約破棄と決まったわけではないので、でも最後になるならば楽しもうとも。
相変わらずロイド様は優しく私に接してくれる。
早々に給仕より、お酒をもらい私にも渡してくれた。
私の好きな果物のリキュール。甘めでおいしい。
甘いせいか飲みあたりもいいので好んで飲んでいたことを覚えてくれていたのだろうか、だったらうれしいな。
お酒の力もあり、会話もすこしスムーズに行えるようになる。
そうして、今のロイド様にも慣れてきて、おしゃべりも楽しくなってきた。
「今日はありがとうございます、ロイド様。でも、この頃はお忙しいのでは?」
「フェミリアに会えたし、忙しさも今日で終わりだから。でもありがとう、優しい婚約者をもって私は幸せだな」
とにこやかに会話ができる。
「こちらこそ、ですわ。ありがとうロイド様」
「そういえば、フェミリア少し沈んでいるように思えるけど、何かあった?体調は?」
「いいえ、元気ですわ。でも、久々のパーティだから緊張しているのかも、ロイド様も素敵ですし」
少し、軽口も言えるぐらいに。
「ありがとう、ふふ、今日の私たちはありがとうの感謝が多いな」
「そうですね、ふふ」
和やかに会話をしていてこのまま続けばいいとも思った。
「それに、さっき言ったけどその忙しさも今日までなんだ、そうしてこれからはもっといい時間を使えるように思う」
「それは、」
忙しさは今日までとは、やはり今日は何かあるのだろう、婚約破棄が頭に浮かぶ。
思い切って聞いてみようか、と思ったときに
王族の登場のアナウンスが流れた。
騒がしかった会場は示し合わせたように静かになり、それとともに登場に合わせて楽器が奏でられて壇上の方から王族と、聖女様が姿を現した。
王、妃、王太子、聖女と続き、そのあとに筆頭公爵令嬢が壇上に現れて、王より挨拶がまずあるみたいだ。
「親愛なる我が国の貴族たちよ、この会場に来てくれたことを、私たちは喜ばしく思う。このパーティは記念すべき日を祝うためだ。
それはこの世界を脅かす魔王の存在が消え、これからのこの国の栄光と発展を」
王の演説が始まった。
私の隣のロイド様も静かに演説を聞いている。