信じたいのに。
「そんなことダメじゃない、私」
夜に考え事をするとだめだ。悪いことばかり考えるから出口がないよ。
だれかにそんなことを昔言われた気がする。
そう、昨日ぐるぐる考えても仕方ないことを考えて寝てしまったようだ。
何が、名案なのか。
昨日名案だと思ったことが駄作以下に思える。なぜ、今現在ありもしない【さく様】におびえ体を差し出せばいいと思ったのか。
私は私だ。幸せになるために生まれたのだから!
よくよく考えるが、そんなに悪いこと、取り返しのつかないことは何もないことに朝気が付いた。
だって、ロイド様は私に好意があるとおっしゃっていた!
前までのロイド様はそんなことをおっしゃる方ではなかったのでいつも不安だったが昨日は私を、ほ、抱擁して好意を示してくれたわ。
それを信じず、何を信じればいいのか。
私はあまり頭がよくないと自分でもわかっているが、ちゃんと自分の目でみて理解したい。
そう、自分の目でみて、ロイド様が聖女とのことを好きだというならばまたその時だ。
私はロイド様を信じてる。
昨日はいろいろ衝撃が強い事柄が多くて混乱していたが、今はなんだかすっきりした。
寝ること大事。
私はロイド様を信じている。
と、その言葉で立ち直ったのに、見てしまった。
昨日お母様からの提案に町散策があったことを思い出し、久々に散策しようと、マリーと護衛2人を連れていった城下町の流行りの花屋さん。
ちらりと、昨日見た予言書のようなものに花屋と示されていたのもあり、なんとなく訪問していたら、聖女様と護衛としてのロイド様いた。
なにやら、聖女様は黄色い花を指さしている。
私たちは奥の方に案内されていたので、2人の会話は聞き取れないが、なんだか楽しそう。
ロイド様は聖女様と特に仲はいいとは言えないと言っていたし、仲を否定されていたが、距離感も近いし、聖女様も楽しそうに、笑顔でおしゃべりしているように見える。
これが、昨日見つけたものに示されていたイベントというものなのだろうか。
それならばやはり、そういうことなのだろうか。
ロイド様と結ばれるのは私ではなかったのか。
ロイド様、、、。
朝にロイド様を信じよう!と思った気持ちがしぼんでいく。
マリーはロイド様に気づいてはいなく、屋敷に似合う花を一緒に選んでいたため、その持ち帰りに指示を出している。護衛は店の外だ。
そうしていると、ロイド様からのプレゼントだろうか、聖女様はロイド様から黄色い花束を笑顔で受け取りどこかに護衛を連れ立って行ってしまった。
私だけが、なんだかぼやけた視界で2人の背中を見送っていた。
それから、あまり覚えていない。屋敷に戻り普段どおりに過ごす。
そしてまた寝たら元気になると思い、早々に寝てみるも、今日はダメだった。
昨日の見た花屋の2人が目に焼き付いて、予言の書の花屋のイベントがぴったりはまっているように感じる。
それならば、もう、ロイド様は私の婚約者ではなくなるのかな。
昨日あんなに初めて優しくしてもらってうれしかったのに、本当にうれしい気持ちだったのに、もう私たち2人で会うこともなくなるのかな。優しくされることもないのかな。
そうして、笑顔でロイド様と聖女様の婚約発表のパーティを参加しなくてはいけないのか。
2人のこれからの幸せのための寿ぐ言葉をかけねばならないのだろうか。
ふと、自分の顔を鏡で映し見る。
ふわふわの両親譲りの髪に緑の目。
パーティなどでは美しいと褒められることも多いが、聖女様と比べるとそんなこともないように思うし、今は笑顔も作れず、今にもぼろりと瞳から涙が落ちそうだ。
「ふぇ、、っっ」
ついに口から嗚咽がこぼれる。
「お祝い、なんか、できないぃよお」
言葉に出すと悲しい気持ちがあふれて涙もこぼれた。
泣いてしまうと、もう今日は動けない。
家族に心配されるのも嫌だが、もう今日は1日泣こう。