悲しみの中の考察と予言の書
自室には一人にするように言づける。
【さく様】のことが分かったが、これからどうすればいいかなどわからない。
怖い考えのもと、もしかするとそのうちフェミリアという人格が消えて【さく様】になっていてもおかしくはない、ということに気づいてしまう。
そうするとまた気持ちが悪くなりとても怖い気持ちになる。
少し休んでしまえば、この気持ち悪さも、混乱も収まるのではないか、とベッドに横に座った時に、足元で何かが当たったような、、、。
ベッドの下の隙間に少し手をやると何か、箱のようなものがある。
一抱え程度の箱で、シンプルな木で作られている。申し訳程度に箱の表面に何やら花の模様があり、少し重い。何か入っているようだ。
そして、私はこんなもの持ってはいなかった。
それでは、【さく様】のものしかありえない。私の部屋にほかの人間が何かを隠すはずかないもの。
このまま見なかったことにはできず、震える指先でゆっくり箱を開けると、中に用紙が入っていた。
その用紙にはびっしり何かが書いている。
そのなにかはちゃんと列をなしておりなんとなく文字のようだ、思ったとたんになぜだかこの文字の内容が分かった。
本当になぜだかわからないが、私は読めて理解できた。
そうして内容は驚くべきことに今までと、これからのこと。
この国の重要な人物として、攻略対象として王太子、私の婚約者のロイド様のことと、ヒロインと書かれた聖女様、聖女様の活躍により、世界は救われて、王太子かロイド様とご結婚となるような物語。
要約するとそんな用紙の内容だった。
ただのでたらめと思いたいが、王族の知りえない話や、ロイド様の私との子供のころの思い出などがイベントごととして書かれている。
王族の話は聞いたことがなし、真偽はわからないが、ロイド様との思い出は本当にあったことだった。私との思い出だから本当に真実だ。
そして、これからのことも書いてあった。
魔王討伐に成功した3か月後の城でのパーティで、王太子もしくはロイド様との婚約発表があるとのこと。相手は聖女様と書かれている。
私の婚約者のはずなのに、なぜロイド様が。
そうして最後あたりに
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一応ロイド様に私を信用してもらうために、都度聖女のことで手紙を送ろうと思うがどのタイミングが効果的かな、訓練所ならばタイミングを見計らい渡せるかも?不確定要素が多すぎるがバットは回避したい。本当に。
魔王討伐最後の夜のイベントが一番大切で分岐になるので、それまでに再三ロイドにレクを行うこと。
そのあとの花屋のイベントは各ルート確定イベントなので、一応確認しておきたいが、、、。
最終目的はこの屋敷とみんなのために頑張ること。忘れないように!
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と、記入されていた。
これからのことを記入されていて、なんだか予言のように思えてしまう。
イベントや、レクなどわからない単語があるが、少なくともこの最後の文章を書いたものは【さく様】なのだろうと、考える。私の部屋に隠されていたし、ロイド様との接点も考えると間違はないのだろう。
そして、状況的に他で知りえないが、あまり知ることのない事実を書かれていてぞっとする。
ただの落書きにしては、現状一致しておりそれ以上にロイド様の婚約発表とはどういうことなのか。
私の婚約者のはずのロイド様なのに聖女との婚約発表と書かれている。
では、私は?
こんなに私はロイド様を好きなのに、素直に他の女性との婚約を快諾するはずがないと思う。
今日だってロイド様は優しく、私に好意を示してくれたのに。
私の中で混乱が混乱を呼び、叫びたいのか、泣きたいのかわからない気分になる。
そうして、城での婚約破棄となると、昔読んだ娯楽小説のようね、と少し冷静な自分もいた。
あれは、悪役令嬢が王太子に婚約破棄を迫られたところから物語は始まるので、私とは違うことを願いたい。
そう考えることにつかれたころに気が付くと、夜の食事や、寝る前の身支度の時間になっていた。
マリーがノックをして入室の許可を求めている。
それに応じて入室させると、こちらの方を見てすこしびっくりした顔をする。 そんなに、疲れた顔をしていたのかしら。
「フェミリア様、何かありましたか?そんな悲しそうなお顔をされて」
私は首を振り、無理に微笑む。
「なにもないわ、疲れていただけ。でも、もう休むわ。」
「あ、お食事は?どのなさいますか?」
「自室で食べたいから軽食程度でいいので用意してくれる?」
「かしこまりました。どうかご無理はなさいませんように」
何も食べる気分ではないが、少しでも食べておかないといけないと思い軽食を頼む。
軽食が来る間に休むために身を清めて、身づくろいをアリーに手伝ってもらった。
そうして小さめのパンケーキと、卵料理、スープをワゴンに準備して持ってきてくれたマリーをねぎらい、退室させて一人食事をする。
料理長の食事はいつもおいしい、はずなのになぜだか味がぼやけている。
入浴時も、食事の時もぐるぐる知ってしまった事柄がめぐるからだ。
半分ほどで食事はのどを通らなくなり、下げてもらい一人になる。
ぽすり、と行儀は悪いがベッドに顔から倒れこむと、疲れがどっと来る。
考えても仕方がないことと、わかってはいるがやはりロイド様のこと、【さく様】のことを考える。
いっそのこと、私ではなく【さく様】様がこの体を使えばいいのではないか、そうすればみんな幸せで、私は消えて考えなくて、もういいようになる。と名案のように考えたぐらいで意識を夢の中に潜り込ませた。