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一年間の重み



 城付きの騎士訓練場であるため、大きな門でチェックを行いそのあとに門をくぐり、その奥の大きな広場のほうにある方へ馬車は進む。


 大きな城門はいつ見ても堅牢で圧倒される。


 でも今日は心なしか威圧が少ないような。なんかいつもよりピリピリしていないというか。


 騎士訓練場のほうの受付に挨拶を行い、ロイド様に差し入れとあいさつに来たことを伝えると、騎士見習の子に案内を申し入れられて、その子についていく。


 この子はまだ見習の子であり、年若いがきびきび動きよくしゃべる。


「お久しぶりです、マリス伯爵令嬢お元気でしたか?この頃こちらにお見えになっていなかったので、心配していたのです。この前の差し入れもありがとうございました。」


「ありがとう、少し調子を崩してしまっていたのよ、また差し入れを持ってきたので皆さんで食べてくださいね」


「はい、いつもありがとうございます、それから、、、」


 このお話のこの前のことは、私の記憶にはないことなので、やはり胸にジワリと不安が広がる。


 もちろんマリス伯爵令嬢とは私だ、でも私じゃない何かが私のふりをして生活をしていたのかしら、ともまた考えてしまった。


 そんなわけがないのに。


 じゃあみんなが知っている【さくさん】は今どこにいるのだろう。


 その【さくさん】に私はあったことがないのでそれも不思議な話だ。


「そして、魔王を倒して皆さん帰ってきたじゃないですか!すごいですよね。パレードもご覧になりましたか?もう、本当にすごくて」


 ロイド様のほうへと案内がてら、たくさんしゃべってくれる騎士見習の一言がきになった。


「え、魔王は倒されたの?」


「はい?そうですが。マリス伯爵令嬢も記念パーティに参加されてたではありませんか。」いぶかしげに立ち止まりこちらを見る見習い騎士。


「あ、いえそうね。勘違いをしていたわ。ごめんなさいね」


 慌てて言葉を訂正すると、ですよね。びっくりした!とまた会話を続ける。


「それで~」


 なんてこと、誰もそんなこと教えてくれなかったわ。魔王が討伐されているならば、聖女様はどうなるのかしら?ロイド様は?


 もう、聖女様と会わないのかしら。


 前のわたしたちのように心配なく過ごせて結ばれるのかしら。

少し浮き立つ心。


 そう、少しふわふわしていると、騎士訓練所についたようだ。


 「ここまでありがとう」と騎士見習の子に小分けのお菓子を差し出すと、にっこり笑顔で受け取り、ロイド様を読んできますとかけていった。


 一息つくと隣のマリーが謝ってきた。


「申し訳ありません、フェミリア様。魔王討伐のことを報告していませんでした」


「ええ、大丈夫よ。びっくりしただけ。でも最近なの?」


「はい、1か月前ぐらいでしょうか?ここ数日はその雰囲気も薄れてきてはいるのですが、やはり魔王討伐という偉業を達成されたということで、まだまだその話でもちきりのところが多いようです」


「そう、ありがとう。ほかにここ一年でなにかあるかしら?」


 そう問うとマリーは少し考えて教えてくれた。


「いいえ、それ以外では大きな話はないかと存じます。」


 屋敷ではそのような話は聞いていなかったのでびっくりはしたが、私が1年間も記憶がないということで、そちらの方が優先された結果魔王討伐のことは過去に流されたのかしら?


 ここは王都になるので、地方より被害が少ないので特にそうなのかもしれない。


 魔物の襲撃などが起こると物流に不安が起こるが、ほぼ日常に困ることはなかったので。


 だからなんだか道中もこの城のほうもなんだか浮ついた雰囲気があるのね、と妙に納得した。


「あ、こられましたよ」


 マリーが声をかけてくれたので、騎士訓練宿舎のほうを見るとこちらの方に颯爽と歩いてくるロイド様がいた。


 短い銀の髪を少し乱れさせていつもよりゆったりこちらに来てくれた。


「こんにちは、フェミリア。いつも差し入れありがとう」


「こんにちは、ロイド様。心ばかりですが受け取ってくださいね」


 久々に会ってどきどきする。やはり好きだなと思っていると、ロイド様は少し目を細めるがすぐにもとに戻り、面会室に案内してくれる。


 面会室はその名の通り外部の人間が騎士の関係者に面会するときに使う部屋だが、貴族の方も使うので、シンプルだが調度品もそろっており居心地もよい。


 部屋は少し狭いが、ソファと机と軽い読み物として本棚もついており、通いだが使用人もいる。


 マリーは面会室の横の控室にいつもは控えているのだが今日は私とそのまま面会室に入室した。


 少し、二人きりになれなかったな、でも心配されているのかなと思いつつ、勧められたソファに腰かける。


 マリーは私の後ろに控えて、ロイド様は使用人に何か指示をだし向かいのソファに長い足を組み座った。


 少し待つとお茶セットを使用人が持ってきてくれたので、マリーが用意をしてくれる。


 紅茶は屋敷のほうが香りも味も好みの味だが、ここの紅茶もロイド様といただくのでおいしい。


「さて、ずいぶんと久しぶりだね、フェミリアだよね?」


 声も素敵なロイド様に名前を呼ばれてうれしい。


「はい、お久しぶりです。ロイド様はお変わりありませんでした?」


「ああ、私は特に変わりはないよ。でも、君は、」

少し言いにくそうに、ちらりとマリーのほうを見る。なんだろう?


「いやなんでもない、また話を聞かせてもらおうか。」


「はい」


「それで、本当に調子はいいのかな?大丈夫か?」


「どうしたの、ロイド様。大丈夫よ?何かありました?」


「いや、なんでもないならばいいのだが、少し」


 とまたロイド様がマリーを見るとマリーがこちらを向き

「フェミリアさま、この間に少しだけ席を外してもよろしいでしょうか?差し入れをそのまま持ってきてしまっていたので」と。


 そういえばそのまま持ってきたままだった。ロイド様にあえて浮かれて忘れていたようだ。


 お願いすると、少しだけこの部屋の戸を開けて、マリーは退室していった。



ここまで見てくださり、ありがとうございました。


明日また続きを出したいと思っていますので、また見てくださると光栄です。

ありがとうございました!

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