表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

私の知らないだれか


【さくさん】って誰なのか。私とどうかかわりあるのか、ないのか。


「というか、家族の反応を見るにかかわりがあるんだろうけど、誰なのかしら」


 独りごちても、当たり前だが誰もこたえはくれなかった。


 私が今ここにいるから、【さくさん】がいなくなった?

どういうことかわからないが、なんだかもやもやして不安が付きまとう。


自室に帰れてもぐるぐる答えのない問題が頭の中を占めてしまい、他に何かする気にもなれなかった。


 そうしていると昼食の時間だ。基本朝食以外は他の家族ともとることはなかったので、一人で食事をして、考え事をしていたらあっという間に夜になった。


 なんだか、いろいろ考えすぎて頭が痛い。もう寝てしまおう。







 次の日もいつものように起きてマリーに手伝いをしてもらう。


 特に問題もなくスムーズに朝食の時間になる。


 昨日のこともあり、少し憂鬱。


 何度考えてもわからないし、やはり答えの出ない【さくさん】


 もう、割り切って【さくさん】とはだれか、聞いてしまおうか。


 そう考えるも結局聞けずに数日たってしまった。


 もやもやは続くし、やはりこの屋敷以外の人に聞いてみたい、と考えるようになった。


 それならば、誰に聞けばいいか、と考えたときにやはりロイド様しか思いつかなかった。





 朝食は家族がそろう時間だ。


 今日も案内されて、食堂にでた。もう私以外の家族はそろっておりおはようございます、とあいさつをして自分の席に座る。


「おはよう、フェミリア、調子はどうだい?」


 いつものようににこやかに調子を問いてくるお父様。


 その横にはお母様、私の前にはクリストフが座っている。


 いつもの朝だけど、聞くことがあり少しどきどきする。


「いつも通り調子はいいわ。お父様。ありがとう。」

にこやかに答えを返す。


「昨日は何をしていたの?」とお母様


「部屋で調べ物をしてりました。お母様はどちらか行かれたの?」


「いいえ、私はこの屋敷にいたわ、でも、まあよければ今度一緒に外にでも行きましょうか?そろそろ新しいアクセサリーも新調したいし、行商を呼ぶのもいいわね」


 前に聞いてしまった【さくさん】とする予定だったことかしら。なんか、もやもやする。


「大丈夫よ、お母様。でも、ありがとうございます。今日は外に出てもいいかしら?」


「え、ああ、あなたの調子がいいならばいいと思うわ。どこに行くのかしら?」

少し戸惑ったように返すお母様。外に出るのはダメかしら?でも。


「ロイド様のもとに。先ぶれは出していないのですが騎士訓練場のほうに差し入れなどしようか、と思いまして」


 ロイド様、私の婚約者。


 銀髪と涼しい青い目をしている。近衛騎士で無口だけど優しい人だ。


 私の最後の記憶では、私がロイド様と聖女様が仲良くされていると聞いて私が激昂して喧嘩をしたのが最後になっていた。


 家族以外で仲良くしているのはロイド様なのであっておきたい。私の婚約者でもあるし、好きだし。会いたいし。


 うん、やはり会いに行こう。


 「そう、ね。一応最後にあったのは一年前ですしその時にはちゃんとお互いに謝罪はしておいたので、気にしなくてもいいのよ?」とお母様はこちらを少し困ったように言うが、会いに行こうと決めたので、会いに行きたい。


 「いえ、私が会いたいだけです。会えなくても差し入れしたいので」


 「そう。じゃあ料理長にお願いして何か持って行ってあげればいいわね。気を付けていってらっしゃい」


 「ありがとうございます」


 なんとか許可はもらえたが、なんだか不安そうな顔のお母様。


「さて、クリストフのほうはどうだ?学校の方は?」


 「なにってふつーだよ。ご馳走様」

と、いつの間にか食事をおわり、席を立つクリストフ。


 今日もツンツンは健在です。


 両親は困ったように、目をあわせて一息つきこちらに目を向けて

「フェミリアも気を付けていきなさい」


と声をかけてくれた。


「ええ、行ってきます」

ニコリとあいさつを返し、私も席を立つ。


 料理長にはロイド様の差し入れをしたいことを伝え準備してもらい、昼頃には騎士訓練所に送ってもらう。


 私の住んでいる館から城付きの訓練場まではほぼ1時間程度。基本道は整備されており、困ることなく進んでいった。


 マリーもついてくれているのと、私も一応伯爵令嬢なので警備も2人ついている。


 そんなに危険なところはここの周りにはないが、城の外には魔物がおり城下町も絶対安全とは言えないからだ。


 そう、この世界にはこの魔物の王様、魔王が復活しており、そのために世界を救いそして浄化するための聖女様がいらっしゃる。


私 がロイド様と仲たがいした原因だ。


 聖女様は神様の世界から召喚されたありがたい光の存在で、世界を幸せな光の国に導いてくれると伝承で伝えられている。


 実際聖女様が召喚されてのお披露目パーティに私も参加したことがあり、拝見した。


 小さい顔に華奢な細い手足。大きな愛くるしい黒い瞳にストレートのきれいな黒髪。


 その微笑む姿は周りの人を幸せにして、光の魔法を使い魔王を討伐するメンバーに力を与えてくれるらしい。

らしいとは、聞いた話なので。


 そんな大切な聖女様は私のような令嬢とは会うことはない。


 でも、私の婚約者にはよく会っているという。


 は?

 なぜ?


 近衛騎士だから警護の件で会うのは仕方ないし、会話もするとロイド様には言われたが、仲良くしなくていいと思う。


 私がいるのに、聖女様と仲良くしないでいいと思うの。


 この前の喧嘩もそんな感じで周りから聞いたロイド様と聖女様が付き合っているのではないか、といううわさ話が耳に入り私が一方的に怒ってしまった。


 その結果は暴れて階段から落ちた。


 うん、恥ずかしい話、かもしれない。が、でも、だって、私がいるのに聖女様と付き合っているのだなんて、そんなことはない!が、煙のないところに火は起こらないというし、、、。あれ、そんな感じの話だっけ?


 何もないのに、そんな噂は。でも。とロイド様のことを考えていると、

「さく、あ、いえ、フェミリア様そろそろつきますよ。」


 一緒に馬車に乗っていたマリーが声をかけてくれる。


 そう、時々ほかの屋敷の者たちも私のことを【さく様】ということがある。


 訳が分からない。


 昨日ぐるぐる考えてもわからないことは聞いてみようとしたが、みんな逃げてしまうため聞きたくも聞けない。


 私はフェミリアでないのかしら、、、。なんて馬鹿なことも考えてしまう。


 私は私でフェミリアのはずが、実は【さくさま】

だった、なんんて。そんなはずはない。私は私だ。


「ありがとう、手土産ももってきてね」


 何事もなかったようにして、馬車の外へ出る用意をする。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ