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98 体育祭当日1

体育祭当日。

種目は全学年リレー、綱引き、障害物リレー、部活動リレー、大縄跳び、玉入れ、応援ダンス、ムカデ競争、借り物競争、騎馬戦。

僕が出るのは全学年リレー、障害物リレー、部活動リレー、玉入れ、大縄跳び、借り物競争、騎馬戦だ。

皆、クラスTシャツを着て望むのだ。

僕は全学年リレーでは負け無しのアンカーだった。なんとか1番にゴールしていた。

(僕、素早いデブだと思われてそうだな)


「おい、素早いデブ!」


皆が内心思っているだろうことを体現したのはモンだった。


「モン、何?」

「葉阿戸様と写真部でのリレーに出るんだろう。絶対に1位とれよ! 1位以外だったら許さないからな」


モンはそう言うとグラウンドの白い線を踏む。生徒会の仕事で不正がないかチェックしているようだった。

次は綱引きだ。


「レディーゴー!」

「「「オーエス! オーエス!」」」


この学校の生徒の皆、ガチ勢が多い。しかし筋肉ムキムキのラグビー部員や野球部員の多い学年別の1組のクラスが業を成す。


「3組が勝ってるな」


そう呟いたのは黄色だ。

僕らの学校では各クラスごとで学年は気にせず、1組、2組、3組という点数の割り振りをしている。

1組と3組で力が拮抗している。

2組は少し出番を見せるのに手こずっているようだ。

次は障害物リレーだ。


「このまま行けば1位だ!」

「ああ! 行ってくる」


一番始めのぐるぐるバットは茂丸と一緒だ。

パン!

ピストルの音が鳴り、初手のバットを地面につけて5回、回るという苦行を僕らは行う。


「「「頑張れ、たい!」」」

「うっしゃあああ」


僕は声援に応えようと、所構わず叫ぶ。5回、回って、次の人にタスキを回す。


「遅えよ!」


竹刀に怒られる。

順位は9人中6位。


「ごめん!」


僕は目の前がくらくらする。

竹刀は顔に小麦粉を付けて飴玉を探している。見つけると生徒会員に見せて、次の人にタスキを回す。


「やったか?」


僕はジュースを振って捨てる味方を見た。その後、タスキを受け継いだ味方はパン食い競争に入った。2年3組の順位は9人中3位圏内にある。


「たい、お疲れ」

「ありがとう、いち」

「次は部活動リレーか。もういっちょ、行ってくるわ」

「うちも行くよ」

「いち、無理はするなよ。文化部同士頑張ろうな」

「うん、頑張ろう」


僕らはコースに並んだ。

パン!

ピストルが撃たれた。

牛の突進のように走っていく、運動部員たち。

サッカー部の竹刀や洲瑠夜のコンビがなかなか速い。2人共、顔に小麦粉がついたままだ。

吹奏楽部も負けていない。

僕は18の数の部活のうちに10位という状態でタスキをもらった。俊足の使い所だと、跳躍を見せた。3人抜いて、葉阿戸にタスキを任せた。


「行け! 葉阿戸!」


葉阿戸も足が速く、4人抜く。

結果は写真部3位でゴールテープを切った。


「おっほー、見てみろよ、あれ!」


隣にいる竹刀が何かに気づき、指を指す。

走っているのは和矢だ。乳がブルンブルンと揺れている。


「英語研究部、最後だな。部員も少なそうだしなぁ」


竹刀の他にも和矢の勇姿を見て顔が紅潮している人は生徒問わず先生もだ。もっとも視線が集まっているのは和矢が走って揺れている体の1部分だ。

モンが怖い顔で僕を見てきたが、僕は意に返さずに和矢の体の1部の揺れを気にした。

こうして部活動リレーは幕は閉じた。

次は大縄跳びだ。


「これは……葉阿戸が縛られていた縄か」

「やめてくれない? 卑猥に聞こえる」

「力を合わせて頑張ろう」


いちが場を和ませた。


「「絶対に1位取ろう」」

「うん」


そして始まる大縄跳び。

結果は惨敗だった。

黄色の襟足が揺れることに気を取られた満はコケた。


「もっと真剣に飛べよ! 飛びが甘いぞ!」


竹刀にこっぴどく怒られる満。


ピー!

笛とともに終りを迎えた。

1組が2位、2組が1位、3組が3位となった。

皆は各々散っていった。


「次は玉入れか」

「なんかエロいよな」


2組の茂丸は僕のすぐ後ろに立っていた。


「いやこの場でそう思ってるのはあんただけだよ」


「皆ー! 玉を入れるぞ!」

「「「おおー!!!」」」

「気合を見せるぞ!」

「おおー!!!」


事を泡立てる茂丸を筆頭に、トランクス一丁に脱ぎだす生徒たち。2年2組の全員がトランクスにハチマキを巻いている。


「おい、脱ぐんじゃねえよ、葉阿戸様に汚い体を見せるんじゃねえよ」


生徒会のモンが拡声器で何やら怒っている。


「「「そんなの学校の生徒手帳に書いてませんー!!!」」」

「こいつらー!」

「まあまあ、いいじゃないですか」


拡声器は和矢の声を拾う。


「優関椎先生! いいんですか?」

「男の熱い戦いよねー」

「はあ」


モンが呆れた表情で2組を見ている。


パン!

ピストルが鳴った。

3組はふざけることなく、普通に玉入れをする。


「エッサホイサ、3組のためならエンヤコラ」


いちが玉を集めて竹刀に渡している。

竹刀の玉は調子よく入っていく。


『終了ー!』


ピー!

笛がなり、玉入れが終了した。


「1、2、3〜〜〜〜46、47、48、……49!」


1組は45個、2組は49個、3組は48個だった。


「がー! また負けた!」


竹刀の竹刀が萎えている。

レアな光景が目の当たりになった。

カシャシャシャシャ!

葉阿戸は竹刀を激写している。


「はーちゃん! 俺等も脱ぐか?」

「俺はやだよ。馬鹿らしい」

「うちも恥ずかしいよ」


いちは手を前に組んでいる。

そうこうしているうちに今度はダンスが始まっていた。

ダンスに出る生徒たちがグラウンドの中央に群がる。彼らは皆、女装またはコスプレをしている。

CUTIE STREETの”可愛いだけじゃだめですか”が流れてくる。

普通の男子生徒に混じって葉阿戸が出ると知って、皆はケータイで動画を撮ろうとスタンバっている。


「可愛いだけじゃだめですか?」


葉阿戸が踊りながら決め台詞を決める。


「「「いーよーー!!!」」」


盛り上がりをみせる回となった。

ダンス部はいなくなったので終わりかと感じていると曲が流れ始めた。

その次に流れるのは、マツケンサンバⅡだ。


「先生達が踊ってるぞ!?」


先生達が前に出てきて踊り始めた。この学校の校長も理事長ももれなく踊っている。


「「「和矢ちゃーーん、可愛いよー!」」」


生徒のほぼ全員が和矢の揺れる胸に注目している。そしてその様子をケータイのカメラにおさえている。


「たいまで和矢ちゃんの胸見てるの?」


葉阿戸が帰ってくるなり聞く。


「いや、これは……」

「ほら今だって、和矢ちゃんにレンズ向けてるじゃん」

「これは違うよ」

「何が?」


押し問答は続く。


「葉阿戸に見せようと思って」

「それ見せて何が楽しいんだよ? AV観てる方がいいわ」

「葉阿戸も観るんだな」

「話を逸らすんじゃねえ」

「あ、終わった」


僕は曲が終わりグラウンドに人がいなくなるのが分かった。


「はあ、君の趣味も理解しないとか」

「僕は守備範囲が広いの」

「もういいから。君と話してると頭が痛くなる」


葉阿戸は頭を抱えた。


「えっと、ごめん。これからは葉阿戸で抜くから。許して」

「そうじゃないんだよ! 全くもう!」


キンコンカンコーン。

お昼のチャイムが鳴った。


『御手洗高校の皆さん、これからお昼休憩の時間となります。12時30分から、13時30分までの休憩となります。現在の種目による順位は1位2組、2位3組、3位1組となっております。各クラス、まだ巻き返しのチャンスは残っております。最後まで諦めないでやり切りましょう、以上生徒会でした』


生徒会のモンによる放送だった。

葉阿戸は職員トイレに向かったようだ。


「負け越しかよーくぅう」


竹刀が悔しそうに顔を歪めている。


「まあ、待てよ、さっきの和矢ちゃんの走っていると踊ってる動画撮ったぞ。合法で乳揺れが見れるぜ?」

「黄色、持つべきもんは友だよな!」

「友じゃねえよ、焼きそばパン買ってこいよ?」

「あ? 俺をパシる気か?」

「喧嘩はやめて! うちが買ってくるから」

「いちは下がってな、黄色、かかってこいよ。あれで決めようぜ?」

「おう」


2人共悪そうな顔をしている。

僕は何が起こるのか気が気でない。


「「せっせせーのよいよいよい、アルプスいちまんじゃく小槍のうーえでアルペン踊りを、さあー踊りましょ、ランララン ランランランラン〜〜〜〜」」

「お前ら小学生かよ」


満は2人に対してツッコむ。


「「黙れよ、こっちは真剣なんだよ!!」」

「あ、ご、ごめん」

「「邪魔したんだから、焼きそばパン買ってこいよ?」」

「もう売り切れてるよ」

「「いいから買ってこい!」」

「はい!」

「で、動画は? 俺にも送ってくれよ。個人のSNSで」

「わーったよ」

「たいは?」

「僕はいいや、葉阿戸にバレたらとんでもないことになる」

「そ! じゃいいのな!」

「うん」


僕は皆で教室まで歩いた。


「「「いただきます」」」

「いちー、今日は弁当なのか?」


僕はロッカーから弁当を出して、教室の隅に集って食べる。


「あ、自分で作ったんだ」

「偉いね」

「ふふふ! ありがと!」


いちの弁当はとても美味しそうだ。


「いち、その卵焼きとこのベーコンアスパラ、トレードしようぜ」


竹刀がいちに話しかける。


「いいよ、はい」

「ん!」


竹刀はいちの箸でつままれた卵焼きをパクっと食らうと、自分のベーコンアスパラをいちの前に持ってくる。


「あ、ありがと! えーと」


いちは迷った挙げ句、ぱくりと箸でつままれたベーコンアスパラを食べた。


「美味しー!」

「いちの手料理美味え!」

「ずるいぞ!」

「どこがだよ」

「オレもオレも」

「ごめん、もう食べ終わっちゃった」


いちは幸せそうに弁当をしまった。


「可愛いなあ」

「え? 何が?」


いちは僕を不思議そうに見つめた。


「さてそれじゃあ、皆で鑑賞会しようぜ?」

「ああ。ゆっさゆっさ?」

「そう、ゆっさゆっさ」


満と竹刀が話している。

僕はさり気なく、教室を抜ける。


「たい、うちもパスする」


いちがついてきた。


「やあ! いち君、たい」


葉阿戸が廊下ですれ違う。


「今、猥談してるから、後にしたほうがいいよ」

「弁当だけ持ってくる。2人はどこ行くの?」

「もう、応援席に戻ってる」

「じゃあ、そこで食べるよ」

「オッケー!」

「「じゃあね」」


葉阿戸がいなくなって、僕らは外を目指した。

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