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93 文化祭当日2

次の日。


「ドーナツください。ピヨピヨさん」


お客さんの声が賑わう2年3組は人がごった返していた。それはもちろん、葉阿戸の見物に来た人が大勢だ。昨日来たこの学校の生徒も来るわ来るわで大盛況だった。ドーナツの売れ行きはいい。皆は嬉しい悲鳴をあげている。

僕は葉阿戸の手を触ってセクハラするおじさんを矢を射るように睨んだ。


「そうだ、いち君、君にはこれを」

「猫耳?」


いちは葉阿戸からもらった黒い猫耳をつける。


「きゃああ、可愛い!」


女子高生が興奮している。


「君、名前は? 写真撮って良い?」


サングラスをかけた変な親父がいちに近づく。


「えっと」

「この子のこと、ただでは教えないよ。ドリンクとドーナツ買いな?」


葉阿戸はいちの手助けをした。


「じゃあ1つずつください」


変な親父がドーナツとドリンクを買っていく。

いちは300円を受け取る。


「うちの名前は……」

「おっと、サン(・・)君、そろそろ交代の時間だよ」

「君はサン君というんだね? 写真はどうしようか?」

「撮影はNGです。行った行った」


僕はいちと交代する。葉阿戸も満と代わる。

すると変な親父は落胆して帰っていく。そして、みるみるうちに客数が減っていく。


「よ、たい!」


茂丸はポップコーンを片手にクラスの前までやってきた。


「冷やかしはお断りだぞ?」

「ドーナツ3つ、カードで」


茂丸は『ユベルーダス・エクストリーム・トラウリヒ・ドラッヘ』と書かれたデュエルカードを見せてきた。


「大事に捨てておくな」


僕はカードをちらつかせる茂丸に苛立つ。


「嘘! 嘘! これは俺のお気に入りだから」

「350円出せ、茂丸」

「ほらよ」


茂丸は千円札を渡してきたのでお釣りとドーナツを返した。


「いらしゃいませ」

「友人割引しろよ!? たー君」

「げ! 明日姉さん」


僕はもうひとりの見知った顔を見て1歩引き下がる。

明日多里少は赤のコーデで僕の正面に立った。


「で、葉阿戸は?」

「視聴覚室の方にいます」


僕は凍りそうなほど、冷や汗を流しながら答える。葉阿戸はすでに10時過ぎているので写真部に行っているはずだ。


「なら用はない、茂丸行くぞー」

「おー!」


茂丸と明日多里少は人混みに紛れていなくなった。


「茂丸のやつ、あんなに可愛い子を連れて!」

「満、やめとけ。そんな事言ってるとカウンター食らうぞ。人は見かけで判断しちゃいけないからな」

「あ、まさかたいの元カノって?」

「鋭いな。そうだよ」

「穴兄弟かよ」

「下ネタやめろって、クラスの出し物MVP狙ってるんだから! あんたは猫耳でも付けてろ」

「に゛ゃーーー!」

「キモい猫だな」


時間が過ぎていく。


11時になったので、モンと黄色に交代となった。


「ドーナツ、なんだかんだ言って、完売しそうだな?」


僕は肩を撫で下ろした。


「葉阿戸さんの読みは正しかったんだよねー」


いちも将棋をしながら、安堵の息をはいている。


「どこか見に行こうか?」

「うちとお化け屋敷行く?」

「行かない。怖い」

「オレと行こうぜ」


純は将棋をやめた。


「ああ! もう少しで詰みだったのにー!」

「じゃあ、僕も行くよ。絶対、先にいかないでね」


僕はいちと純に行動をともにした。

1年3組のお化け屋敷まで来た。

世にも奇妙な音楽がなっている。入ると暗くて怖かった。ペンライトで周りを照らした。


「何! 何! オロロロ! 痛! 足が! あ! スミマセン!」


僕はお墓のオマージュした物体に足を思い切りぶつけた。


「たい、お化け役のほうがビビってるから、静かに!」


いちと純はさっさと歩いて先を行く。


「おっぱいぱーい!」

「きゃあああああああ」


僕は親しんだ人が急に横から出てきて、普通に驚き、尻餅をついた。


「何で、茂丸がいるんだよ?」

「助っ人だよ」

「いち? 純? ……なんでいないの!?」


僕は辺りを見回す。2人は先に行ってしまったようだ。


「そんなの関係ねえ!」

「うわあああああ」


僕はお化け役にビビりながら駆け抜けた。

明かりのあるところまで神速でついた。


「はあはあはあはあ……ここがゴールか!」

「おめでとう、たい。怖いの克服出来たね?」

「……いち、あんたはー!」

「いや純君の発案だから、まあそんなに怒らないで」

「純? そうなのか? 全く、なんで先行くんだよ!」

「面白いと思って! ごめん」

「面白くないわ! 今度から変なことするなよな」

「分かった分かった」


ピンポンパンポーン。

『12時をお知らせします。これより13時まで各クラスの出し物の休憩時間となります。なお、体育館に休憩スペースを用意しております。どうぞおくつろぎくださいませ』


ピンポンパンポーン。


「教室に戻ろう」

「ゴーゴー!」

「よ! たい!」

「茂丸! あんた、いるならいるって言えよ」

「お前が急に寄り付いてきたんだろ」

「いいから、ご飯食べようぜ」


純が混ざってくる。


「そうだな、細かいことは気にするな」

「もう! 明日姉さんは?」


僕は疑問に思ったことを聞いた。


「葉阿戸と一緒にモデルをやるらしいよ。午後かららしいけど、準備があるって。葉阿戸も向こうでご飯食べるって」

「じゃいは?」

「他校の友達とクラスで喋ってたよ」

「14時まで暇だなー、葉阿戸も帰ってこないし」

「そうそう、葉阿戸、彼女できたの?」

「え?」

「めちゃくちゃ可愛い女の子と話しててハイタッチしてたけど」

「明日姉さんじゃなくて?」

「違うよ、セーラー服の女子校の子と」

「ただの観客だろ」


僕らは2年3組まで来て、茂丸も一緒に御飯を食べることになった。

僕は教室の冷房に感謝して、後ろの方の床に座りながらご飯を食べる。


「まさか葉阿戸が浮気するわけないし」


僕は空になった弁当箱を片付ける。


「電話してみたら?」

「今?」

「今!」


茂丸に言われてケータイをポケットから取り出す。そして、通話ボタンを押す。

プルルル。プルルル。プルルル! がちゃ!


『もしもし、葉阿戸?』

『こんにちゃ、たい。どうかした?』

『いや、なんかすごく可愛い子と喋ってたって茂丸が言うから』

『ああ、代わるよ。姉さんと俺で可愛くさせたんだ……』


葉阿戸の言うことに僕らは顔を見合わせる。


『ゴリさんでーす』

『ゴリさん?』

『はわたんといもさんもいるよ!』

『なんだよー、仲良しかよ』


僕は茂丸にがんを飛ばす。

茂丸は申し訳なさそうに手を合わせる。


『びっくりさせたかな? お詫びに今、写メ送るね。じゃあ、とりあえずまたねー』


数分後、僕のケータイに美女達の写メが届いた。

ケータイがかっと光ったような気がした。


「ええ? 美人! めちゃくちゃ可愛い!」

「ほえー、可愛い」


僕は語彙力がなくなった。


「よし行こう、写真部!」

「分かったってば」


僕は茂丸といちを連れて、写真部のいる視聴覚室へ向かった。


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