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9 「薔薇」

「そういって適当に撮ってたら被写体が可愛そうだよ」

「まさにその通りです! 撮る時はどうやるんだ?」

「カメラにレンズをつけ、電源をつけて、オートフォーカスにして、焦点距離を合わせて、シャッターを押す。他にも色々やり方があるんだけど、まずは初心者だからそんな感じで」

「貸してくれ」


茂丸は葉阿戸からカメラを受け取る。


「大切に扱ってね、落としたりして壊したら弁償だからな」

「わーてるって」


ピピッかしゃ!

茂丸はカメラにレンズを取り付けると、言われた方法で葉阿戸を撮った。


「俺は火曜日に撮れよ! じゃなくて、外の風景とか撮れよ」

「そういやそうだったな」

「おバカちゃんはほっといて、外行こうぜ、たい」

「誰がおバカちゃんだ」


下駄箱で、靴に履き替える。


「靴もブランド物なのか。ひょっとして、金持ちなのか?」

「いや、俺、インフルエンサーで物とか金とか貰えるんだ」

「俺もなってみようかな」


茂丸は意味深に呟く。


「君はVチューバーならなれそうだな」

「遠回しに俺の顔ディスってない?」

「茂丸はゲーム実況とかならワンちゃんあるかも!」

「お前もブサメンだろうが」

「たいは茂丸より可愛いけど」と葉阿戸。

「俺は可愛いより、かっこいいって言われたほうが嬉しいんだ、可愛さなんて競ってないし」


そういう茂丸の脇腹を僕がつつく。


「デュクシ! こっから撮れそう」

「小学生じゃないんだから」

「ははは」


葉阿戸は天使の笑みを見せる。

窓に緑のカーテンのようにバラの茨が伸びている。白いきれいなバラだった。

僕は不思議の国で赤いバラを植えたはずが白いバラを植えてしまった召使を思い出した。


「じゃあ撮るぞ? よ!」


ピピッ、かしゃ!


「俺にも貸してくれ!」

「わかったから、引っ張るな! 壊れる」

「たい、待ってくれ」

「ほら」


ピピッ、かしゃ!


もみ合っている中、3人の顔が撮れた。


「今の俺、美しくないから消してくれ」

「俺もだ」

「僕はイケメンだから大丈夫」

「消せよ」


茂丸が僕を横向きに抱きかかえる。

葉阿戸は僕からカメラを奪うと、すごい顔をしている葉阿戸達の写真を消している。


「危ない危ない、インフルエンサーの裏の顔とか撮らないでくれ」

「あ、今の写真、高く売れたな!」

「そんな事したらただじゃ済まないよ」

「どう済ますんだ?」

「いやそれはまだ考えてないけど」


ピピッカシャ!

3人は黙って写真を撮っていると後ろから声がかかった。


「おい、俺の島で何をしてる?」

「「勃起マン!」」


僕は死を覚悟して振り向く。

茂丸も40歳くらい老けた顔をしている。


「竹刀君だ」

「「え」」


僕と茂丸は顔を見合わせる。


「はーちゃんじゃねえか」


竹刀の顔は黒目まで笑っているかのようににっこりした顔になった。しかし、下半身はいきりたっている。


「今日は美術の時間いなかったから、休みかと思ったぜ?」

「音楽の授業に潜入してきたよ」

「あ、そろそろ時間だから戻ろう」


茂丸は腕時計を見て、発声する。10分程の余暇があるが先を急ぐことにしたらしい。


「そうだな、またね、勃起マン」

「はーちゃんの友達なら最初から言えよ。今回だけは見逃してやるよ」

「じゃ、じゃな、勃起マン」

「はーちゃん、また遊ぼうな」

「だな! じゃ!」

「「良かった、葉阿戸に面識があって、仲いいのか?」」


2人は安堵の息を漏らしながら葉阿戸に聞く。


「竹刀君とは仲いいよ。よくゲーセンで車のゲームやってるよ。竹刀君は仁義があって、義理堅いんだ。ちなみにプリクラもあるよ」

「じゃあ、なんでいちに興奮してるんだろう」

「いち君って?」

「音楽の選択科目の可愛い男の子がいるんだよ。お前には霞むけど」

「あ、あの子か! ビクビクしてて小動物みたいな子、いたいた」

「思い出したか?」

「リアクションがな。竹刀君の好きそうな感じしてたわ。はいはい、思い出した」

「お前と同じ、男の娘になれば勃起しないかな?」

「竹刀君、俺で抜いてるから、多分無理だろ」

「お前まさか、勃起マンと……」

「いやしてないし、だから俺、女の子が好きだって言ってるだろう。言っているのを聞いただけだよ」

「なんだ、変な汗出てきた。つうか、恋愛対象、女の子なんだ」

「え? 茂丸には言ってなかったっけ」


葉阿戸は笑いながら僕らを見渡す。

靴を履き替えると、茂丸は声にもならぬ、短いため息をついた。


「そうだ、俺も女装すればいいんだ。それでなんやかんやで女の子に混じれば、葉阿戸の心を射抜くかもしれない」

「あんたの体型じゃ無理ですって。百歩譲って女装できたとして、何人のライバルを相手にするんだよって自分でも言ってただろ」

「そうだよな」

「おい、いつまで時間かけて履き替えてるんだよ。クロスリボンのヒールでも履いているのか?」


葉阿戸が不機嫌そうだ。


「わりい、悲しいことはおいといて、今日はとことん焼き肉食おうぜ!」

「だな! 胃もたれ注意だな」

「僕のコメント全部とられた……」

「そういえば、例の大会の選手、2組は決まったのか?」

「決まってるよ。竹刀君の双子の弟の簿月洲瑠夜(するよ)君と角力(すもう)じゃい君だよ」

「勃起マンに弟なんていたのか!?」

「洲瑠夜君はいつもは勃起してないけど、家で朝、抜いてきてるんだって」

「それで竹刀の方は勃っているんだな」

「じゃいの方は?」

「んー、名前のとおりだね、お相撲さんみたいだよ」

「そっちのチーム勝ち確じゃねえか」

「君達は?」

「びっくりするなよ。俺と!」

「そして、僕だ!」


僕はぴょんぴょんジャンプして、茂丸はくるくる回る。最後に左右で手を繋いでポーズを決める。


「君達なんだ、へえ」

「はあはあ、なんでそんなにリアクション薄いの?」


僕は運動で息を荒くして葉阿戸に聞いてみる。


「いや俺、興味ないから」

「そりゃ僕もないけど、茂丸はあるっていうんで合わせたのに」

「話すなよな」

「僕は変なこと言わないけど」


3人は視聴覚室についた。


「君らで最後だよ。いい写真撮れたか?」

「校長室の裏庭のバラです」


僕は伊祖先生にカメラを返した。


「おお、よく撮れてる」と言いながらカメラの写真を印刷する。


「ん? なにかもっこりした下半身の男が映り込んでるけど?」

「ええ? どこ?」


僕は必死で写真とにらめっこする。


「ほら、この窓に反射してる」


見事に下半身が興奮されている男子が映り込んでいる。


「やべ!」

「ほんとだ」

「ああ、せっかく撮ってきたのに……」

「タイトルは薔薇でいいんじゃね?」


おそらく、同級生の男子が呟く。


「ある意味、合ってるけど」

「時間もないし、それで今日の部活の協議する写真にしよう」


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