表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/120

83 告白

日曜日。

葉阿戸から借りた制服をクリーニング店へと出した。

駅での待ち合わせに僕と葉阿戸は同時に着た。電車に2人で乗った。


「これ、月曜日渡そうと思ったんだけど、会えるかわからないから、今日持ってきた」


葉阿戸は紙袋を渡した。

中身を改めるといい匂いのする制服が入っている。


「はい、クリーニング代返すよ」


僕はウエストバッグから封筒を出した。


「いいって」

「いや悪いから」

「じゃあ、これで2人で遊ぼうか?」

「そうこなくっちゃ!」


僕は封筒から半額出して、葉阿戸に渡した。


「これで割り勘ね」

「うん」


葉阿戸は財布にお札をしまった。


「ホラーってなんのホラーなの?」

「普通のホラーだよ」


電車に揺られてついた先の駅ビル内に映画館があった。エレベーターで最上階まで上がった。


「高校生2人で」


カウンターでチケットを買う。


「あの子、めちゃくちゃ可愛いね」


遠くからささやき声がする。


「カップル?」

「いいや、どうせレンタル彼女だよ」


金髪のイケイケ系の男性が話す。

僕は葉阿戸の様子を覗き見る。

(嫌な思いしていないだろうか?)

葉阿戸はケロリとしている。


「それと、ポップコーンが食べたいな?」

「よし、買ってこよう」

「俺もついてくから」


葉阿戸と共に、ジュースやポップコーンを買った。


「席は?」

「真ん中らへんだよ」

「隣?」

「当たり前だよ」


葉阿戸は僕がドキドキしているのを見透かしているようだった。


「そういえばトイレ平気? そもそも論だけど、その格好で男子トイレ入るの?」

「俺は普段は共用のトイレ借りてるんだ。店側にも客側にもややこしいからな」

「ほえー、でも、コンサートの時は」

「あん時は共用のトイレはなかったんだから仕方ないだろ。後13分で始まるけど、トイレ行くの?」

「急いでいってくる」

「映画見てちびるなよ」

「すぐに戻るから待ってて」


僕は排出物を出すと手を洗った。鏡をよく見て、元の場所に戻った。


「葉阿戸お待たせ……って、えぇ?」


僕はサラリーマンにナンパされている葉阿戸と目があった。葉阿戸がクチパクで、”助けろ”と言ったのが分かった。


「す、スミャセン、この人僕の連れなんです!」


僕は葉阿戸の手をひいて、映画館のゲートに駆け込んだ。

サラリーマンは目を点にして僕らを見てきた。

僕らは明るいシネマの座席に座った。人はまばらだ。


「55点かな」

「なんで? ちゃんと助けたじゃん」

「噛んでたし、もっとスマートに退けろよ、バカ」

「バカ呼ばわりにするなんて、もう助けてあげないよ?」

「じゃあ、たいとはこれきりだから」

「……やだ! バカって言っていいから、側にいさせて」

「嘘だよ。さっきはありがとねん。マジ泣きされるとこっちも泣けてくる」

「まだ映画始まってないぞ、うぅ」

「クスン、人気少なくない? この映画不人気なのか?」


世界が黒くシネマの光が動き出す。


始まりを告げる音楽がなった。

映画の世界に引き込まれていく。

僕は怖すぎて失神しかける。思わず葉阿戸の手を握った。




エンドロールが流れて、半目で見ていた僕に救いをもたらした。

世界が明るくなった。


「対して怖くなかったね」

「いや十分だ、もう一生分の怖いを接種した。ホラー映画はしばらく見ない」

「俺は映画より、君の握力に驚かされたけど」

「あ、ごめん」


僕は葉阿戸の手を解いた。


「この後、どうする?」

「太鼓のゲームやろう」

「俺、上手いよ?」

「え?」


僕らは、下の階に降りていき、ゲームセンターに入った。

太鼓のゲームにありついた。


「葉阿戸、鬼選ぶのか?」

「うん、これじゃないとつまらないし」

「僕は普通かな」

『ノルマクリア成功だドン』


葉阿戸の方は叩くのが何がなんやらわからなかった。

観衆が集まってくる。


「さてと、次は車のゲームしよう」


葉阿戸は汗の一滴もたらさずに、太鼓のゲームを終えた。観衆は四方八方散った。

僕は車のゲームも葉阿戸に大敗した。


「きさまこのゲームやり込んでいるなッ!」

「答える必要はない」


葉阿戸は楽しそうに遊んでいて、僕の心を苦しくさせた。


「そろそろ帰るか?」

「いやー遊んだね!?」


葉阿戸は少し寂しそうな顔をする。


「送っていくよ」

「いいよ」

「いやいや、僕の言う事聞いて」

「はい」


葉阿戸は素直に従った。

僕は葉阿戸の手をとって、歩き出す。


「たい、もう大丈夫だよ」

「あんたはすぐにナンパされるから、僕が守ってやるよ」


そして電車から自転車に乗り換えた。手は離れてしまったが、葉阿戸とは心でつながっているような気がした。


「じゃあ学校で」


僕は葉阿戸の家の近所までついて行った。


「じゃあ」

「今日はありがとう、またね~」


葉阿戸は僕がいないくなるまで手を降ってくれていた。


「ああ、可愛い」


僕はぼそっと呟く。帰ると、また勉強を始めた。

明日は学校が待っている。

制服をハンガーに干していると紙袋の中から達筆な字の手紙が入っていた。


『たいへ   先日はヤキがごめんね。たいのこと、少し前からいいなとは思ってます。ドキドキする。君のことを愛してる!   葉阿戸より』

「わあああああ!」


僕は葉阿戸に通じた気持ちがまとめられず、叫んでいた。


「たいちゃんどうしたの?」


母が登場する。


「なんでもない! 小指をタンスにぶつけただけ!」


僕は焦ってベッドの上で丸まった。


「もう、びっくりするよ、まったく、何か不良行為したらだめだからね」


母は小言を挟んで退場した。


「返事、書かなくちゃかな?」


僕は便箋に向かった。深夜まで起きていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ