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78 メイド喫茶

時間が過ぎて、週末の土曜日。


「明日、メイド喫茶行こうよ」


僕の家で遊んでる茂丸が言った。


「1人でどうぞ」

「たいも来るんだよ」

「なんで僕が行かなくちゃならないんだよ」

「いいから、アキバ行こうぜ?」

「葉阿戸も来るんなら行くけど?」

「葉阿戸が来るんなら、明日姉さんも呼ぶか?」

「姉さんは呼ぶな!」

「ダブルデートしたいじゃん?」

「メイド喫茶でデートとはまた難儀なことを」

「決定!」

「僕、風邪ひいたかも、目も頭も腹も手足も痛い」

「お前、満身創痍になるなよ、今の今までゲームしてたくせに」

「じゃあ、いちも呼ぼう。最近の体調も気になるし、姉さんの騒ぐのも和らぐでしょう」

「おう」



次の日、僕は気がつけば、メイド喫茶に到着した。

葉阿戸は女装している。明日多里少もおしゃれなパンツスタイルの格好をしている。

いち、茂丸、僕は私服だ。


「初めまして、倉子いちです」


いちが明日多里少に自己紹介していると、明日多里少は笑った。


「葉阿戸の姉の、明日多里少。宜しく」


明日多里少の挨拶も程々に僕らは初めてのメイド喫茶に入った。


「「「おかえりなさいませ、御主人様、お嬢様!」」」

「動物系だー」


僕は無意識に声に出す。

猫耳、ウサギ耳、犬耳をつけたメイド達が縦横無尽に動き回っている。


「いいなー、俺、オムライス頼むかな!」


茂丸は大声ではしゃいでる。


「なんてベタな」

「あーしもそうしようかな」

「どうぞどうぞ」

「姉さんと葉阿戸は好きなものをじゃんじゃん頼んでください、野郎が金出すんで」

「ちょっと茂丸、姉さん、結構食うよ」


葉阿戸は茂丸に小声で話している。


「すみません、可愛いそこの方。オムライス2つ」

「僕はアイスコーヒーとミニパフェで」

「うちはアイスティーで」

「おい。君たち、あーしへの当てつけか?」

「じゃあ、俺、激辛ラーメン! 大盛りで」


葉阿戸は一生懸命場を和ませようとしているようだ。


「葉阿戸と姉さん、茂丸のドリンクは?」

「「「コーラ」」」


3人全員の声が被った。


「はっはっは」


葉阿戸は思わず笑っている。


「何笑ってんだよ、八重歯野郎! 本当はアルコールといきたいところだが、運転するからな」

「姉さん、助かります、ありがとうございます」


僕は明日多里少を拝む。

そんな明日多里少は睨んで、周囲を威嚇してくる。


「あのう、何か怒らせることしましたか?」

「ちょっと一服」


明日多里少はニコチン切れのようだ。立ち上がって禁煙室に向かった。


「いち、最近、なんか困ったことないか?」

「ないない! ピピも元気だし」

「母の彼氏の件は片付いたのか?」

「別れたんだって」

「そうなんだ」


いちの声に耳を傾けながら葉阿戸を見ると、目があった。クスリと笑っていた。


「葉阿戸?」

「ん? なんだい?」


葉阿戸の表情が戻った。


「いえ、なんでもないです」

「ドリンクお待たせいたしましたワン」


メイドがドリンクを配っていると、明日多里少が帰ってきた。


「乾杯しようぜ」

「「「はい」」」

「じゃあ、音頭を取らせていただきます」

「硬い硬い!」

「えっと、じゃあ日々のつか」

「ここまで運転お疲れ、あーし! かんぱーい!!!」


明日多里少が急に割り込んで乾杯をした。


「オムライス、お待たせしましたにゃん! ケチャップ、どうしますかにゃん?」

「無難に猫で!」


茂丸はデレデレしている。


「お嬢様、オムライスですぴょん」

「貸して」

「え?」


明日多里少はオムライスにケチャップで何かを書く。

「「萌え萌えきゅーん」」

「茂丸、交換こしよう」

「え? 俺へのラブメッセージ?」


茂丸のオムライスと交換したのはうんこと書いてあるオムライスだった。


「これじゃあ不味そうです」

「いち君、このオムライスうめーぞ。はい、あーん」

「へ?」

「あーん」


明日多里少の圧に押されたいちは口を開ける。


「ちょっと! 俺、彼氏よ!」

「あ、ありがとうございます?」


いちはもぐもぐと咀嚼する。


「茂丸、待て、は?」

「はい!」


茂丸は懐いた犬のようにちょこんと座った。


「さては手懐けられたな」

「お待たせしました、激辛ラーメンですガオ!」


狼のような風貌のメイドからラーメンが届けられた。


「葉阿戸、さっさと食えよ」


僕に言われて箸をのばした葉阿戸だったが、ひと口食べて、すぐに水を飲む。


「どうした?」

「勢いで頼んだけど、俺、辛い物苦手だったんだ、困ったねえ」

「僕に食べろってか。まじかよ」

「嫌なら、姉さんに食べてもらうよ」

「僕が食べるよ!」


僕は葉阿戸から箸を受け取ると、ものすごい勢いで食べ始めた。

辛いけど、なかなかうまい。麺が固くて食べごたえがあった。

僕は汗まみれになって食べ終えた。

皆も銘銘、食べ終わっていた。


「たい、すごい汗だね」

「誰のせいだよ」

「あは。ごめんごめん」

「んじゃ次は、ゲーセン行こうぜ!?」


茂丸はコーラをズルズルと飲んで、言った。


「いいねぇ、行こう」

「また、あーしが運転すんのか」

「お辛いかもしれませんがもしできれば運転していただけませんか?」

「ああ、いいよ。いち君は可愛いなあ」

「彼氏、彼氏〜!」


茂丸は自分を指差す。


「うちはかっこいいって言われたいです」

「ベッカムヘアーにしてやろうか?」

「いちにだる絡みするのやめてください」

「ベッカム?」

「たー君、顔真っ赤だな、写真撮っておくか」

「やめてください」


そういう僕の前に猫耳のメイドが割って入った。


「申し訳ないですにゃあ。店内の無断撮影は禁止となってますにゃあ」

「チェキだっけ、なんかシステムあんだよな」

「1枚1000円ですにゃあ」

「たけーよ、もっと安くしろよ」

「姉さん、恥ずかしいからやめて」

「あの、お姉さんだけなら私が持ちますワン、2回撮ってもいいですかワン?」


犬耳の金髪のメイドがこっそりと話した。


「ありがとう、そのチェキの1枚あーしにくれるという事か?」

「ですですワン」

「ちょっくら撮ってくるか。待っててくれ」


明日多里少が楽しそうに奥の方に行ってしまった。


「俺も撮りたい」

「撮ればいいじゃん?」

「明日姉さんとだよ!」

「ふと気になったんだけど、茂丸のお姉さんって何歳?」

「19歳だけど?」

「大学生?」

「そうだな、詳しくは言わないけど」

「あんたに比べて頭いいんだ」

「さては俺のこと、舐めてるな?」


茂丸は謎の自信で生き生きしている。


「そういえば、明日、調理実習だっけ?」

「あ、そうだった! エプロン用意しなくちゃ」

「お好み焼きだっけ?」

「そうそう! 今まで、結構、作ってるよ」


いちとの話に花が咲く。


「俺の話を聞け!」

「どうしたんだ? 何を大声をあげてるんだ?」

「明日姉さん、もういいんですか?」

「見ろよ、可愛いだろ」


明日多里少はチェキを見せつけた。


「明日姉さん、かっこいい……」

「いい匂いだしな」


茂丸はうんうんと頷く。

チェキにはメイドの頬にキスしている明日多里少が写っている。


「ほっぺにチューはいちのこと思い出すな」

「あわわわ、その話しないでほしいよ」

「いち君がしたのか? されたのか?」

「両方ですよ」


茂丸は笑顔で答える。


「へえ、楽しそうだね」


葉阿戸は手を合わせて、立ち上がった。


「いち君がされたのは誰だよ? 強制的にしたのか?」

「茂丸ですけど。強制というか……いきなり」

「おいおい、茂丸、君には失望したぞ」

「いちがしてくるからだろう、明日姉さん、怒らんでください」

「いち君、怒っていいんだよ?」

「はい、どうもです」

「まあとりあえず、行こう!」


葉阿戸が口火を切った。




ゲームセンターにて。


「何回やってもこの景品取れないー」

「ここはこうすんだよ」


明日多里少はいちの後ろから、手を添えてレクチャーし始めた。


「とほほ、俺彼氏なのに」

「あ! 取れたー」


いちの嬉しそうな声が響く。


「ね、たい、プリクラ撮ろうよ?」

「じゃあ皆呼んでくるな」

「あ」


葉阿戸は一瞬、真顔になる。


「ダメか?」

「別に好きにすれば?」

「おーい、皆ー、プリクラ撮ろう?」

「いいな」


皆が入って行く。


「400円かー地味に出費」


僕はブツブツ独りごちながら精算機にお金を入れた。


「たい、おいで」

「ああ、うん」


プリクラはポーズを指定してくれた。

僕は葉阿戸の吐息がかかる距離で心拍数が上昇していた。


「次、変顔な、一番つまらないやつ、罰ゲームな」

「いちが可愛そうです」

「大丈夫、変顔、得意」

「ええー」


僕はあえてアヒル口に上目遣いで可愛いポーズをした。


『もう一枚撮るよ、3、2、1』


そうこうしているうちにプリクラ写真ができた。


「たい、てめえ、ちゃんとやれよ」

「いや、だって……」

「んふふ、いち君の顔おもろい!」

「あんまり見ないでください」

「俺も負けてないぞ」


全員が喋っている。


「罰ゲームはたいだな!」

「なんなんすか? 罰ゲームって?」

「女装なんてどうだろう?」


葉阿戸は僕の前髪を触りながら言ってきた。


「それいいな」

「嫌ですよ」

「君に判断権はねえから」

「じゃあ、ウィッグから買いに行こう!」


葉阿戸は僕の手を掴んだ。



10分後。

僕はウィッグをかぶって、メイクもきっちりされていた。


「似合わねー!」

「うるせえな!」

「今日は1日それで過ごせよ」

「後は帰るのみですよね?」

「まだ甘いもの食べてないだろ」

「そうですねー、すみません」


僕は明日多里少の地雷を踏まないように気をつけた。

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