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73 写真部の活動1

次の日の部活動。

比較的暖かい日だ。

僕らは視聴覚室にいた。


「よう、葉阿戸」

「茂丸に、たい」


後からやってきた葉阿戸は呼応する。

今日の目標がホワイトボードに書かれている。


「心を動かされるもの」


僕は読み上げた。


「サッカー部でも撮るか?」

「勝手に撮ったら盗撮だろ」

「言えばいいだろ」

「竹刀君と洲瑠夜君がいるはず」

「勃起マンブラザーズ、サッカー部かよ」

「行こう」

「俺、どうなっても知らんからな」


茂丸は不貞腐れている。

僕らは3人ともカメラを握りしめ、校外に出て校庭まで歩いた。

寒空の中、グラウンドで、ボールを奪い合う男子高校生が8人程いた。顧問の姿はない。


「すみません!」


僕は叫んだ。


「たいじゃねえか? どうしたんだ?」


洲瑠夜は僕に駆け寄った。


「えっと、被写体になってくれないか? 心を動かされるものが課題なんだ」

「無理だ、他をあたってくれ」


洲瑠夜は即答した。


「理由は?」

「俺っちは写真を撮られるのが嫌いだから」

「あんただけの意見じゃねえか!」

「洲瑠夜君は撮らないようにするよ、それでどう?」

「ぐぬぬ、皆に聞いてくる」


洲瑠夜は先程の集団の元まで走っていった。


「かっこよく撮ってくれよ!」


竹刀は声を僕らに届けた。そして、勃起し始めた。


「俺っち以外の皆、いいって!」


洲瑠夜は手をメガフォンにして僕らに大声を放った。

大きな丸を頭の上で作っているサッカー部員達。そして、試合が再開される。


「じゃあ、撮ろうか」


葉阿戸はミラーレス一眼を首にかけ、手に持ちながら、サッカー部員達に近寄っていく。


「葉阿戸、危ないって」

「俺は近くで撮りたいんだ」

「茂丸は?」


僕が横を見ると茂丸もすでにグラウンドのサッカーコートに侵入していた。

竹刀がゴールを決める。

竹刀を入れた4人は喜びを分かち合っている。


ピピッカシャ!

カシャ!


葉阿戸と茂丸が写真を撮る。


「全くもう、写真部は固まって動こうよ」


僕はシャッターチャンスを逃がしてしまった。


「ぶお!」


サッカーボールが僕のお尻にあたって跳ね返る。


「おい、ずりーぞ、洲瑠夜!」

「ナイスアシスト、たい!」


洲瑠夜と竹刀が言い合う様子が伺えた。

僕を障害物としてみているようだ。


「イテテ……、ほら、当たるから、ここを出よう……って何? あれ? 葉阿戸? 茂丸?」


僕は視線を漂わせるとグラウンドの隅っこに狂い咲きしている桜を2人は眺めていた。


「僕も課題、この桜にしよう」


僕は2人に追いつく。


「葉阿戸が見つけたんだぞ、葉阿戸の成果だ」

「じゃあ僕は何を撮ればいいんだよ」

「和矢ちゃんでも撮っとけ」

「そういうのは18禁に抵触するだろう」

「エロいことしか頭にねえのか? 笑ってる顔でも撮っとけって言ってんだよ」

「あんたに言われたくねえよ。つうか、葉阿戸の方がドキドキするから葉阿戸でもいい?」

「はは、どうも」


葉阿戸はピースサインで写真を撮るのに協力してくれた。

カシャカシャ!

僕は真剣に撮りすぎて、葉阿戸は段々と目が笑わなくなっていく。

(めちゃくちゃ可愛い)


「もういいかい?」

「もういいよー」

「かくれんぼじゃないのよ」


茂丸は珍妙な顔で僕を見る。

カシャカシャ!


「俺を撮るな!」

「そろそろ戻るか」

「そうだな」

「「「協力ありがとうございました!」」」


3人はサッカー部の人にお礼をいいつつ、急ぎ足で視聴覚室を目指した。

僕は3階までの階段に息切れする。


「おかえり! いい写真は撮れたかい?」

「心を動かせるものは、人でもいいんですよね?」

「その写真はコンテストには向いてないな。人は物じゃないし、肖像権もある、せめてゴールとゴールした人両方を撮ってきて1人前なんだけどね」

「じゃあ、桜だな」

「桜? ああ狂い咲きしてる木か。それなら全然いいよ」

「じゃあ並んで座って、3人1組で決めた写真を印刷しよう」


部長と副部長がゴタゴタしてるうちに、写真が5枚、印刷された。


「はいじゃあ前の写真見てくださーい。1番いいなと思ったものに挙手を」


部長が甲斐甲斐しく貢献する。

僕はもう決めていた。桜だ。

(桜が人気だ、次点で、夕焼けの空の写真だ)


「〜〜〜〜5番がいいと思った人ー? それでは2番の桜に決まりました!」


パチパチパチパチ。

拍手がまき起こった。


「やったな、葉阿戸、いえーい」


パチン!

僕はこの機を逃さないように葉阿戸とハイタッチした。


「俺も! 俺も!」


茂丸も僕の気持ちを知ってか知らずか、調子にのってきた。

パチン!


「茂丸、空気読めよ」

「んえ? 何のこと?」


茂丸は僕ともハイタッチを試みた。

パチン!

僕は仕方なくハイタッチする。

(僕が気持ちよくハイタッチを葉阿戸としてるんだから黙って見とけよ)


「そうだ、今度のコスプレは何にするの?」

「サラリーマン」

「へ?」

「リーマンのコスしようかと」

「じゃあいつものじゃないってこと?」

「メイクも最小限に留める」

「まだ着物とか、天使とか、悪魔とかあるじゃん。何で、リーマンなんだよ」

「いいだろ、別に。可愛すぎるのも飽きてくるだろう」

「僕は飽きないよ?」


僕は口を挟む。


「俺が嫌なの」


葉阿戸はめんどくさそうに腕を上に伸ばしている。


「そっか、それなら仕方ないか」

「それでは、部活を終わりにします」


部長の声がけで、各々が帰宅する。


「どんなんだろう」

「さあ」


茂丸はお手上げのような格好をした。

時間は刻々と過ぎていった。


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