67 女王の住む家の中で
明日多里少は静かに言った。僕に手を伸ばす。
僕は反射的に後ずさった。
「3階ですよね、僕、大丈夫なんで。何を始めるんですか?」
「「ロシアンルーレットタコパだよ」」
葉阿戸と茂丸が2階に来て早々言った。
「なんてベタな!」
「パーティ、しようぜ?」
「は、はい」
僕は3階に上がった。
照明はこれでもかと眩しくついていた。こたつや大画面のテレビや仏壇や生けられた花がある。そして隅にベッドや勉強机。暖房がついていて暖かい。
いい匂いがする。テーブルの上にたこ焼きが8つ、皿にのっていた。それからたこ焼き器もだ。
「俺と茂丸の傑作第一号。アウトは2個。はいじゃあ、たいからね」
「葉阿戸と茂丸はアウトなたこ焼きわかってるだろ。目隠しして食べさせよう」
「「いいね! そうしよう」」
葉阿戸と明日多里少の声は合わさった。
血の宿命は抗えないようだ。
目隠しをする。
「ん? たいは食べたか?」
「じゃあ、いただきます、……あふい! 美味ー」
「次は葉阿戸な、たい、食べさせてやれ」
明日多里少は僕の大事なところを触ってくる。
「ちょっ」
「アツアツだぞ? フーフーしてやれ」
明日多里少は言いながら、僕のズボンの社会の窓を開く。
「わかりましたよ、フゥー、ヴッ」
「何を変な声上げてるんだ?」
「なんでもない! はい食え! ……どうだ?」
「美味しいよ? 普通のたこ焼きだ」
「はーはー」
僕は冷や汗が出てきた。
明日多里少は2人が目隠ししているのをいいことに僕の息子をナデナデする。
もちろん僕のあそこは巨塔が建築されている。
「次は茂丸な?」
「なんか嫌な予感がしてきた」
「はい、ふうふう、あーん」
明日多里少は茂丸に食べさせている。
僕はと言うと、その間にズボンのチャックを上げて、こたつの方に正座していた。
「ハム! はッ! 辛い! 水!」
茂丸は目隠しをとった。コップに入った水を飲み込んだ。
僕は危なかった。
(しばらく立てねえ!)
「アウトは何が入っているんだ?」
「わさびとカラシを適量に。当たりもあるよ?」
「次、あーしか」
明日多里少は端っこのマヨが少ないのを選んで食べた。
「あっま! なにこれ、チョコ?」
「当たりだ! おめでとう!」
「じゃあもう一周な、目隠ししてくれ」
「はいはい」
茂丸は目隠しをつけた。
その瞬間、僕は明日多里少にキスされた。
(甘い! チョコがまだいるって)
僕は明日多里少の肩を軽く押すと、口を拭った。
「たい、食べた?」
「いや、今食べます、いただきます」
適当に選んで食べる。
「美味ー!」
僕は言いながら、3人から離れた。
(明日姉さんにからかわれる)
「じゃあ今度は葉阿戸の番だな、たい、来な、ほら何もしないから、先っちょだけだから!」
「僕はここから見てるよ」
「しょうがないな、葉阿戸、口開けろ」
明日多里少は葉阿戸の口にたこ焼きを放り込んだ。
「もぐもぐ、別に普通のたこ焼きだ」
「次は茂丸君」
明日多里少は鼻を近づけて、たこ焼きの匂いをかいでいる。
「はい、あーん」
「あーん、……辛ッ!!!」
茂丸はあまりの辛さに目隠しをとった。
「なんで、俺ばっか!? おかしいだろ!? ホワイ、ジャパニーズピーポー!?」
茂丸は騒いでいる。
その横で残ったたこ焼きを食べる明日多里少。
以後、たこ焼きは普通に作られて、僕達の腹を満たした。
「タコの入ってるたこ焼きが1番美味い」
「うるせえな。今度は何する?」
「テレビでも見てまったりしようぜ」と葉阿戸。
「歌番組でも見るか?」
「怖い話の続きでもする?」
「やめろ、僕、帰るぞ」
「ケーキとチキン食おうぜ」
明日多里少の提案に頷く。
「そうですな」
僕らはケーキとチキンを食べた。
ケーキは甘く、チキンはスパイシーで美味しかった。
「腕相撲しようぜ?」
「いいね、負けたら、テキーラ」
「いけませんよ! 未成年ですって」
「じゃあ本屋でToLOVEる全巻買ってこいよ」
「明日姉さんに不利なんじゃ?」
「自分の心配したほうがいいよ」
まず、僕と明日多里少がガチンコ勝負に打って出た。
手を絡ませ、葉阿戸が「レディ、ゴー」と言った。
その時だった、明日多里少は着ている赤いジャンパーのチャックをおろした。
僕は何が起こったのかわからなかった。鼻の穴を大きくしているうちに勝敗は決していた。思い切り、腕を押されてつけられていたのだ。ちなみに明日多里少は下にブラを着ていた。
「はい勝ちー」
「明日姉さん、ずるいですよ」
「勝ちは勝ちなんだよ」
「じゃ次は俺と茂丸かー」
葉阿戸はテーブルの上に手を置いた。
「いくぜ? レディ、ファイ!」
2人は力が拮抗している。
若干、葉阿戸のほうがおしている。
「フウーー!」
茂丸は葉阿戸に大きく息をかけた。
次の瞬間、葉阿戸は負けていた。
「汚え勝ちだな、おい」
「細けえことはいいんだよ」
「さあ、ラストはたいと葉阿戸だな」
明日多里少に言われて、仕方なく、テーブルの上に手を置いた。
◇
僕は本屋にいて、漫画を買っていた。
「葉阿戸の力舐めてたわ」
先程の戦いの勝利の女神は葉阿戸に微笑んでいた。
ToLOVEるの場所がわからなくて焦って、女性の店員に聞くと苦笑いしながら場所を教えてくれた。
18巻も買っている僕にレジの男性の店員にニヤニヤと笑いをこらえているような顔をされた。
(もうこの本屋利用できないな)
葉阿戸が遠くから動画を撮影している。
「買ってきたぞ?」
「それじゃあ、ToLOVEる鑑賞会しようか」
葉阿戸はノリノリで言ってくる。
僕と葉阿戸は2人で本屋に来ていた。
葉阿戸にお金を半分出してもらったのだ。
「僕はいいや」
「あ、そうなんだ」
「いやそうなんだって何だよ」
「もう読破してるんだなって」
「読んでねえよ!」
「明日姉さんのことだから、なにかされると思うけど、俺が注意するから、俺に言ってくれよ?」
「もう、されてます」
僕はしんみりと言った。
「ふーん、まあ帰ろうか」