66 女王の住む家
茂丸は曲がり角から、渋々といった感じで出てきた。
「何故わかったんだ?」
「3階から見えたんだよ。俺、目がいいし。とりあえず来なよ」
葉阿戸はグッドマークを横にして、入るように指し示す。
葉阿戸の家に僕と茂丸は立ち入った。
「茂丸君に時間教えたな?」
「いや本当に来るとは思わなくて」
「あ、えっと、たい、ごめん。それから初めまして、明日多里少さん? 素敵な方だと耳にしてます。俺は園恋茂丸です」
茂丸は明日多里少に動じることなく話している。
「皮肉のつもりか?」
「いえいえ、綺麗な顔立ちで声もかっこいいです」
「まあいい、たいはこっちで預かるから、パーティの準備進めておいてくれ」
「はいな、行ってらっしゃい」
「ちょっと待って、僕も準備手伝う」
「君はこっち」
明日多里少が強気な物言いで僕を引きずりだす。再び外へ繰り出した。鍵を開け、外にある小さな小屋の中に入った。電球が1つの仄暗い部屋だ。白いタイルが敷いてある。
「えー、本当にやるんですか?」
「やらなかったら、どうする?」
「皆ニコニコ笑顔ですよ?」
「まずは、浣腸からだな」
明日多里少はニコニコと不気味に笑っている。
「話を聞いてください」
僕は前にある簡易トイレに目をやった。
「さっさとケツ出せよ」
「不同意ですってば」
「主従関係結んだんだろうが、犬以下だな」
「ぐええ、何ですか?」
首輪が急に苦しくなっていく。どういう仕組みなのかと思っていると、明日多里少はコントローラーを扱っているのがわかった。
「わかりました、棒にアナルするんでやめてください」
僕は学校でするように、ズボンとトランクスを脱いだ。
首の痛みはなくなった。
「壁に手を付け」
「はい」
僕は言われたようにする。
ブスッとケツの穴にシリンジであろうものが刺さった。
「うう」
「おいおい、嬉し泣きか? ド変態だな」
明日多里少は僕を浣腸した後、言葉攻めをする。
僕は喉まででかかった言葉をのみ、「へへへ」と笑った。
(何でも良い、早く終わらせてくれ)
すぐにお腹がギュルルと、糞便を出したくなる。
「トイレいいですか?」
「あ? 3分くらい我慢しろよ」
明日多里少は簡易トイレの上に木の板を敷いて、そこに座り込む。
「無理です、お願いします」
「ダメだ」
「漏れちゃう!」
僕はイモムシのようにお腹を抑えて丸まった。
「ははは! 良い様だ」
明日多里少は僕をケータイで撮る。
パシャリ。
「あのう、まじで、漏らします!」
僕の言うことは聞き入れてもらえない。
「う、うおおおおお」
僕はついには明日多里少を突き飛ばした。木の板をどかしてトイレに座る。
ブリリリ
「何すんだ、この豚」
「すみません、限界で!」
「奇跡の42センチのペニバンでどつかれたいのか?」
「奇跡の42センチってなんですか? それもうムチですよ?」
「まあいい、君のことだから痛がると思って小さめのやつ、用意している、とりあえずその汚いケツ拭け」
「うう、グスン」
僕は渡されたトイレットペーパーで尻を拭いた。涙と鼻水があふれる。
(ここまで来て引くわけにもいかないし)
僕は立ち上がり、壁にもたりかかりながら、ケツを突き出した。
「おらおら、気持ちいいのか?」
「気持ち、いい、アッー!」
僕はケツの中の奥の感じるところに異物があたった。
こうして僕はアナル処女を奪われた。そしてその後、すぐに意識を失った。
「大人の事情なので割愛か!」
僕は意識を取り戻し叫んだ。ちんこを触ろうとすると服は着ていた。
「寝言やべえな」
「僕は一体? 僕は何時くらいまで寝てたんですか? 今何時ですか?」
「16時過ぎだ。ところで君のケータイ、ボイスレコーダーついてたけど?」
「あれ? 間違って押してしまいました、すみません」
「うーん、まあいい、ここでの事は他言無用だからな」
明日多里少は追い詰めるように言った。
「ひい! はい」
僕はさり気なく、社会の窓を閉める。
(ここでの事とは? 大してハッスルした覚えがないんだが? でも言ったら怒られるだろう)
「それじゃ、合流するぞ」と明日多里少と僕は外に出ると、小屋は鍵をかけられた。
◇
エプロンを着た葉阿戸が駆け寄ってきた。
「たい、無事で良かった!」
「葉阿戸ーーーー!」
僕は葉阿戸を思い切り抱きしめた。
(さっきからずっと会いたかった!)
「ぐええ」
僕の首輪がきつくなる。
「学習しろよ。君はあーしの所有物だって忘れるなよ」
「は、はい」
僕はどぎまぎしながら葉阿戸から離れた。柑橘系の香りがした。
「さてと、それじゃあ、ケーキが焼けるまで皆で待つか」
「ケーキ!?」
「うん、さっき焼き始めたから。皆でツイスターやるかい?」
「ジェンガもあるぞ」
「茂丸は?」
「ヤキの様子見に行ってるよ、2階で。……ところで2人ともお風呂入ってきたら? すごい汗だよ?」
「風呂借りていいの」
「行くぞ、たい」
「あ、はい」
僕は明日多里少の後をついていく。
ジャグジーの付いてある風呂があった。
「一緒に入るんですか?」
「もちろん。付き合ってるんだから」
「僕は後で入ります」
「もっこりしてるぞ?」
明日多里少に言われて僕は焦って、股間を見る。
「って、してないじゃないですか。僕は待ってます」
「変なことされたそうだけど? 仕方ない、背中流してやるよ」
「そんな事期待してませんって。いいですよ」
「ごちゃごちゃうるせえな。いいから入るぞ」
「ぐええ、わかりました!」
僕はきつくなる首輪を外そうとした。
ピ!
ビリビリ!
「うごごごご」
首輪から電流が流れた。しばらく流れて止まった。その時には手を離していた。
「何してんだよ」
明日多里少はきれいな曲線美の身体を見せつけるように服を脱いだ。洗面台のカゴの中に衣類を入れた。
僕も裸になった。目のやり場に困りながら、明日多里少と結果的に一緒に入った。背中を洗ってもらうと心地よく、眠ってしまいそうになる。
大事なところが勃ってしまう。
気持ち的には葉阿戸が好きなのだが、身体は違うらしい。
フローラルなシャンプーの匂いがする。
僕は勃起がバレないように、明日多里少より早く、風呂から上がった。そして、服を着る。白いパーカーに黒いパンツを着ていた。大きめなショルダーバッグを持ちあげた。
ドライヤーで髪を乾かした。
「貸せ」
明日多里少はドライヤーを奪った。そして、まるで犬にするようにように僕の髪に風を当てて乾かす。僕の頭を叩いて、今度は自分の髪を乾かし始めた。
「座って待ってな」
「はい」
僕は正座した。
「よし、立て」
「はい」
僕らは3階まで上った。3階の部屋はなかなか広い。どうやらベッドや机があるのは葉阿戸の部屋ということだろうか。
茂丸と葉阿戸はトランプで遊んでいた。
「おかえり」
「ただいま、葉阿戸ーーー! ぐええ」
僕は葉阿戸を抱きしめる。首が締まる。
「学習しろって」
「明日姉さんもトランプやりますか」
茂丸は明日多里少に声をかける。
「やらねえよ」
明日多里少はタバコに火をつけた。
「たい、お前、羨ましいな」
茂丸は僕の肩を組むと小声で話す。
「何がだよ」
「わかってるくせに」
「茂丸の想像よりハードなことしてるぞ? いいのか?」
僕が言うと茂丸はだんまりを決め込む。
「そろそろケーキが焼ける頃だ、姉さん、仕上げ頼むよ」
「任せな」
明日多里少は僕の手をひいてきた。茂丸とは離れ離れになった。
ケーキはよく膨らんでいて、何もせずとも美味しそうだった。
全員は手を洗った。
「じゃあ生クリームでコーティングしていくぞ」
明日多里少は手際よく、ケーキを真ん中から切り、2段にすると、生クリームを塗っていった。次にいちごをのせ、再び生クリームでデコレーションをすると、ケーキが完成した。
「それじゃあ、皆入って?」
「え?」
僕は(葉阿戸は何をするのか?)と思ったら、自撮り棒で自撮りし始めた。
かしゃしゃしゃしゃ
「おい、たい、チキン買ってこい」
「パシリじゃないですか?」
「そうだが?」
「ケン◯ッキーで?」
「どこでもいいよ。お小遣い3千円やるから。命令な?」
「わかりました」
僕は1人寒い中外に出た。
コンビニでチキンを買って引き返した。
「おっせえな」
「すみません」
僕は目が点になった。
部屋が暗く、ろうそく1本の明かりの中、周りを皆が囲んでいる。
「怖い話ししてるんだよ」
「僕、怖いの本当に無理なんで」
「これは友人が体験した話だけど、小学4年の頃、双眼鏡を買ってもらった少年Aはアパートのベランダから遠くを見る遊びにハマっていた。そしてある日のこと、いつものように双眼鏡で遠くを見ていると四肢がありえないほどに曲がった全裸で笑顔の少年と目があった。目が合いっぱなしでこちらに来るそいつに少年Aは怖くなり、玄関の鍵、窓の鍵を閉めたそうだ。ピンポンピンポンピンポンとインターフォンがなり、インターフォンカメラにははっきりとこちらを見ているそいつがいたそうな〜〜〜〜」
茂丸はまだ語ろうとしている。
「僕、ちょっと、ヤキの様子見てくる!」
僕は唖然となり、逃げ出した。
階段を下ると、2階は広々としている。
ヤキはゲージの端っこで静かに息を潜めていた。
「キューン」
ヤキは僕のことがわかったようだった。元気はない様子だ。
「ヤキ、頑張れ」
「おう、頑張るぜ」
声の主に背後をとられた。
「明日姉さん」
「そろそろ始めようか」