60 クリスマスデート
僕は学校から帰ると、母は出かけていたので、急いでカップ麺を食べる。その後、頭にヘアトニックをつけて、着替えた。ついでにガムを口に放り込む。
黒いウエストバッグに必要なものを入れた。
赤色と白色のチェックのシャツに白いパーカーにジーンズ。ダウンのコートを着て出かけた。
「よく見かける人だな、これでいいか」
僕は姿見の前で自分を一周回ってみせた。そして、家を出た。歩きで学校へ向かった。
13時になる20分前に着いた。
明日多里少はすでに着いていた。真っ赤なルークスの運転席で手をふってきた。
僕は緊張しながら後部座席に乗ろうとする。見てはいけなさそうなものを見てしまう。
「君はバカなの? 助手席においでよ」
「僕、こういうのあんまり慣れてなくて……」
僕は車が暑いのでコートを脱ぐ。
「私服ダセェな! まっいいか、行くぞ」
「おー! ってまたタバコ吸ってるんですか」
僕は明日多里少の手元が気になる。
「君、大人のおしゃぶりに興味あるのかい?」
「いえ、健康に悪いんでやめときます」
「それじゃあーしはどうなるんだよ」
「傷つけるつもりはないんですが、控えたほうがいいかと」
「君はカチカチ山のたぬきか!? せっかく埼玉県の都心の方に行くんだし、色々見てこうぜ?」
「はい。あの、後ろの席の大人のおもちゃはなんですか?」
「今日は君のアナル処女を奪いにきたで?」
「ええ? 僕の?」
「しょうがないだろ、君が痛そうに嫌がってる姿見たいんだから。浣腸グッズもあるぞ」
「やめてください。僕、今日は楽しみに来たのに、痛いことしたくないです」
「そうか? 開発は少しずつだな。今日は使わないでやるよ」
「酔ってるんですか?」
「いや、車運転するのに酔ってたら危ないだろ」
「それならいいんですが」
僕は不安になる。
(この人、ドSだ。葉阿戸の言ってる意味がわかった気がする)
車はショッピングモールの駐車場に着いた。
明日多里少は僕に似合いそうな服や靴を見立ててくれた。お支払いをクレカ一括で済ませる。僕に白と黒のジャケットや黒い革靴、黒いズボンを着せたり履かせると満足げに手を繋いで歩いた。
「僕にこんな高価なものいいんですか?」
「あーしの隣に歩くんだったらもっとセンスのいい服着ろよ。なんつうか、クリスマスプレゼントだ」
照れてる明日多里少の格好はヒールのある黒い革靴や服は赤ニットにタイトスカート、赤いベレー帽に小さな金色のチェーンの黒い肩掛けバッグ。
「僕もなにか奢らせてください」
「稼ぎもないのに何言ってんだか。こういう場合は金のある方が支払うんだよ」
「いやでも、じゃあアイス奢ります」
「ふうん、じゃああーしはチョコミントがいいな」
2人はフードコートに来るとアイス屋に並んだ。
「大納言小豆とチョコミント。2つともカップで」
「君ってじいちゃんみたいだね」
「ははは、そうですか?」
「840円です。……お待たせしました!」
店員にお金と引き換えにカップのアイスを渡された。
「おじい。座ろう」
「じいじゃないです」
僕は明日多里少の向かいの席に座った。比較的外側でソファの席だ。
「それでさ、今日、テスト返されたんだろう? 何点だったんだよ?」
「数学と、生物と、保健が90点以上でした。英語は平均までもう少しで、後はまあまあの出来でした」
「ふうん、たいって頭いいんだ」
「よくないですよ。900点中721点です。平均よりは上ですが」
「ドヤ顔でそう言われてもな。葉阿戸は数学が今回良かったんだってな。いつも赤点だったよ中間テスト、0点の時もあったんだ。たいが教えてくれたらしいな?」
「出来ることは伝授したんですけど。良かったって、具体的に何点だったんですか?」
「50点くらいじゃないのか? 見せてくれなかったけど」
「姉さんって何処の大学生なんですか?」
「何処かは内緒。医大だけど」
「理数系ですか」
「バリバリ文系だけど、ついていくために一生懸命勉強してるんだ」
「偉いですね」
僕の言うことは無視して、アイスを食べ終える明日多里少。
「ゲーセンいくか」
明日多里少は腕時計を見て、僕と視線を絡ませる。
デジタル腕時計は14時20分を過ぎたところだ。
僕もアイスを食べた後、燃えるゴミにカップを捨てる。
(皆、冬休みだからか?)
平日の昼間にしてはがやがやしている。
僕はそっと明日多里少の手を握った。
柔らかくて冷たい、女の子の手をしている。
ゲームセンターではクレーンゲームをしたり、プリクラを撮ったりして遊んだ。締めにはガチャガチャに散財しまくった。手に入れた僕に似てるしゃくれたカエルのマスコットをお揃いでつけた。
「15時35分か。後1時間と25分だけどどうする? カラオケに参る?」
「はい」
僕らはカラオケに寄った。
1時間制だったのでちょうどよかった。
「何歌う?」
「無難にセカオワでも」
「普通だな、さだまさしでも歌っておけよ」
「いや、知らないですし、え? ジャンヌ・ダルク歌えるんですか」
僕は明日多里少の選曲に茶々を入れる。
「ん? なんか文句でも?」
「無いです」
僕らは歌いまくった。
明日多里少は男性の歌手でも楽々歌いこなす。
僕は明日多里少の声にメロメロだった。
流石に1時間は早く感じた。
「じゃあ、カニ行くか」
「はい!」
車のナビにそのカニの店を登録した。
僕らは17時に、無事に到着した。
店は並んでいて予約でない人はキャンセルを余儀なくされているようだ。
「予約した蟻音ですけど」
「どうぞ。蟻音様、2名様ですね」
着物を着こなす大人の女性が個室に案内してくれた。
カニの刺し身、小鉢2種、茹で蟹、かにサラダ、ずわい陶板ステーキ、かにの天ぷら、カニ茶碗蒸し、カニ雑炊、寿司、お椀、デザート。
改まった高価な場所に疎外感を増して、何を食べて、どんな味だったかはその時でしか、わからなかった。しかしながら、カニは甘く、身がしっとりとして食べやすかった。カニづくしで最高の気分が味わえた。
コース料理なので順々に品物が出された。
ソフトドリンクのコーラで乾杯をした。
僕達はすべて綺麗に平らげた。
最後の方に出されたカニ雑炊は文字通りカニと野菜の入っている雑炊だった。残すのはもったいないと全部無理に食べた。
デザートは桃のシャーベットだ。
「デザートは別腹だよな」
明日多里少はシャーベットをスプーンですくって食べる。
「そうですね」
「美味かったか?」
「はい、美味しかったです」
「この後はホテル行くだろう?」
「はい! そう思って親には言ってあります」
「あえて、ここで置いてくのも楽しそうだな」
「やめてくださいよ!」
僕は流石に口調を強めた。そろそろ頃合いなのを察知して、コートを着る。
「行こうか、コンビニ寄ってく?」
「そうですね」
僕は明日多里少にお会計をしてもらう。
「ありがとうございます、ごちそうさまです」
「硬いなぁ、でもフニャチンだなぁ」
「おちんちんの事は関係ないじゃないですか」
「包茎野郎が」
「いきなり罵倒しないでくださいよ」
僕らは近くのコンビニまで歩いていく。息は白くなり、外のイルミネーションはキラキラと輝いている。
「あの家すげえ」
「本当だ。すごいですね」
僕は1軒の豪華なイルミネーションの家を見つけた。雪だるまにサンタクロースにトナカイがあしらわれていた。
「クリスマスソング聞きてえ」
「僕が歌います」
「黙れよ、音痴が」
「しくしく、そこまで言わなくても」
僕は明日多里少にコンビニでマカドリンクとジュースとビールと2つのおにぎりを買ってもらった。車に入って、いざ、マカドリンクをごくごく飲む。ほんのり甘い、栄養ドリンクの味がした。想像以上に飲みやすかった。
「効くんですかね」
「まあ、プラシーボ効果かな」
「偽薬ではないと信じたいですが」
「君の家の近くのホテルでもいい?」
明日多里少は一服しながら聞いてきた。
「明日の登校に支障がなければいいですよ」
「偉そうだな」
「偉くないです。至って普通です」
僕は車の外の夜景に気を取られる。
「もし次、偉そうなこと言ったら下ろすからな」
「ひいい、すみません」
僕は震え上がった。寒さが原因ということにしておこう。
「学校はどうだ? あの学校で満足に通えてるのか?」
「最初は嫌だったけど、今はなんとか楽しく過ごせてます」
「ふうん、葉阿戸もよく頑張ってるよな」
「葉阿戸と言えば、ヤキは元気ですか?」
「あのモップのこと? 元気だよ」
「モップ……。可哀想に」
「たいに似てるよな」
「似てますか?」
「たいは若干しゃくれてるからなー」
「そこまでしゃくれてないですよ」
「今日は浣腸しようよ」
「浣腸とは?」
「ケツにお湯を入れるんだよ」
「……それしてなにかいいことあるんでしょうか?」
僕は疑問を口にする。しばらく無視されて、ホテルまで着いた。
「君の事、何でも知りたいから」
ホテルに入って、乾杯した。シャワーを浴びると、情事にふける。
僕が一度イクと、明日多里少は手に収まるほどのシリンジを何処からか出した。
「さっさとケツを出せよ」
「ええ〜? 本当にやるんですか?」
「そういうのいいから」
明日多里少に押し切られてしまった。
シリンジにローションをつけ、浣腸が始まると腸に違和感が出てきた。すぐに便意と変わる。
「姉さん、トイレ行ってきても良いですか?」
「ダメに決まってんだろ」
「くー、お願いします、トイレに行かせてください」
「どうしよっかなー」
「早く、漏れちゃいそうです」
「これつけて、もちろんトイレも一緒に行くよ」
明日多里少のもつものは赤くて細い首輪だった。
僕は急いで首輪をつけると、トイレに向かった。
ブリュリュリュー
僕はなんとかトイレに間に合った。
(死線が見えた)
「君が自発的につけたんだからな。学校にいる間もGPSついてるから、外したらどうなるかわかるよな?」
「はい、ありがとうございます」
「キモいんだよ、この豚野郎が」
「ありがとうございます!」
「もう寝るから、腕貸しな」
「はい!」
僕は寝っ転がりながら、腕枕をした。なんとなく気持ちよくなり、一緒に眠ってしまった。