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44 葉阿戸の家の番犬ヤキ

その日の夜。


身体から離れている僕が眠っている僕を見ている。

(やはり、あの人形をなんとかしないといけない)


僕の幽体はふわふわ浮いて、窓の外に出る。そして宙に浮いていく。

身体の感覚や体感はなく、行きたい方に進んでいく。


「葉阿戸」


口を動かした瞬間、自動的に進む方向が決まった。

僕は空を飛んでいるのだ。

(たまに見る空飛ぶ夢だ)

葉阿戸の家の前で赤いニット帽を被った中年男性と、緑のニット帽を被った中年男性がコソコソと話をしている。

怪しい2人組だ。

赤い帽子の男性がインターフォンを鳴らした。

少し待つ。


「葉阿戸、出てくんな!」


僕の声は風になって消える。


「はいはい、……ぎゃ!」


寝間着ででてきた葉阿戸は緑の帽子の男性にスタンガンで攻撃された。


「葉阿戸!!!」


僕はありったけの力で叫んだ。

倒れる葉阿戸を車に乗せて、連れて行く男性達。

僕は見失わないようにルートを覚えていった。

そう遠くない場所で葉阿戸は降ろされた。廃ビルの中に連れて行かれる。


「〜〜〜今、令嬢が〜〜〜〜いつもの場所で待ってます」


何やら話し合っている。

葉阿戸を令嬢と勘違いされている様子だ。


「キズモノにするなよ?」


赤い帽子の男性は緑の帽子の男性に命令した。


「了解です」

「俺は男だ」


葉阿戸が目を覚ましたようだ。


「何だと? お前、男だと?」

「それならボコにしても構いませんか?」

「空き巣しにきたんだが、まあいい、痛い目に合わせろ、命さえ無事ならそれでいい」

「待て、待て待て」


僕はその2文字しか言えなかった。しかし、声は届かない。

葉阿戸は走って逃げる。

運のないことにそこには壁しかない。壁際まで追い詰められた。

――殴られる。




ドスン!


「痛た」


次の瞬間、僕は自分のベッドから転がり落ちていた。

(葉阿戸に電話を)

ケータイを取り出して葉阿戸に連絡した。


『葉阿戸、今あんたの家、狙われている! 赤い帽子と緑の帽子の人がピンポンならしても出るなよ!』

『たい、大丈夫?』


ピンポーン


『誰だろう』

『奴らだ、絶対に出るなよ。空き巣に入られそうになったら警察に言えよ。今から葉阿戸の家まで行くから』

『たい? 俺の家』

『知ってる、夢で見た。あんた楽観的だからいいかと思ってるだろうけど、ちゃんと鍵かけとけよ、2重ロックで! じゃな!』


歯に衣着せぬ物言いで電話を切った僕はケータイと財布をコートのポケットに入れた。コートを着て出かける。

自転車のサドルに腰を据えて、ペダルを思い切り踏み込んだ。


「葉阿戸、無事でいてくれ」


葉阿戸の家まで頭の中は真っ白でいつの間にかついていた。

傍にパトカーが止まっている。

僕は狂ったように葉阿戸に電話をかけた。


『もしもし? 葉阿戸、間に合ったのか!』

『はい、私、葉阿戸の父親の研戸と言います。失礼ですがどちら様ですか?』

『葉阿戸さんの友人の蟻音たいと言います。葉阿戸さんはどちらに?』

『葉阿戸は今病院で治療を受けてます』

『重症ですか?』

『軽傷です』

『何が起きたのか教えてもらえますか?』





葉阿戸は1人で留守番をしていた。

インターフォンが鳴りヤキの様子がおかしいので餌をあげていると、窓が割られて2人組の男が入ってきた。

クロスボウで攻撃された時、左腕にかすった。その後、犬が守ってくれたらしい。

ちょうどその時、パトロール中の警察が近くを通り、葉阿戸はそこまで走っていったんだ。

ある種の幸運が招いた話だった。


「茂丸かもしれないな」


僕は考えあぐねいた。


「ん? 茂丸って」

「いやでも、捕まって良かった。あの、仲間の集合の場所を夢でみたんですけど。地図ありますか?」

「夢? あ、もしかして君は新聞に載っていた蟻音君?」

「そうです。明晰夢を視ているのです」

「地図ありました!」

「このルートをこう行って、ここの廃ビルがあってそこに集まると思います」

「情報提供ありがとう。行ってみよう」


何人かの警察が無線で通信して、例の場所に向かっていくようだった。

僕はまだ夢にいるようで頬をつねった。

(痛かった)



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