表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/120

40 勉強会

「俺、親呼ばれてるから、後から行くからなぁ!」


茂丸は高速で校長室へと走る。


「葉阿戸、ごめん、なんか、茂丸も来たいから後で来るって」


僕は葉阿戸に申し訳無さそうに告げる。


「いいよ、君が勉強、教えてあげなよ」

「怒ってる?」

「いや別に。驚いてはいるけど」

「そう? 良かった! 弁当食べてっていい?」

「うん。いいよ」


葉阿戸はやれやれといった感じで壁に背中を預ける。

僕はパイプ椅子を持ち出して、ロッカーを机にして弁当を開けた。ありがたいことにお弁当入れに小さな水筒が入っていた。オムライスで作られた猫を葉阿戸に見られる前にガツガツと食べる。


「ごほんごほん!」


僕は当たり前であるかのように咳き込んだ。


「大丈夫?」

「うん」


僕は涙を飲みながら、ケータイをいじっている葉阿戸を見た。


それからすぐに食べ終わり、一息つく。


「行くか」


僕らはハンバーガー屋まで自転車をこいだ。

葉阿戸は無言でついてきた。

店内に入った。


「いらっしゃいませー」

「あ、僕小銭しか持ってきてないんだった」


ポケットを探るが、195円ほどしかない。


「コーヒーにしとくか」


僕はホットコーヒーのSサイズを注文した。


「葉阿戸?」

「ん? 何?」

「黙ってるから、怒ってるのか?」

「別に、眠いだけだよ。……ハンバーガーとコーラのLサイズ。カードで」


葉阿戸はレジにてIC系のカードで払う。

僕らは奥の椅子席に座り、勉強を始めた。もっとも、僕は勉強道具を持ってきてないので、葉阿戸の教材を借りてルーズリーフにかきこむ。

数学から入った。公式を覚えておけば解ける問題ばかりだ。ただ、証明問題は僕にも難易度は高かった。

ああでもないこうでもないと言いながら、数学の問題を一通り復習した。


「おお! いたいた!」


いきなり来た茂丸の大声に耳を塞ぎたくなる。


「茂丸。うるさい」

「わり! 美味そうなハンバーガーじゃん、一口くれよ」


茂丸は葉阿戸の食べかけのハンバーガーを気安く触って、一口かじる。


「そのバーガー、君にあげるよ」

「いいの? ありがとー!」

「おい、茂丸、嫌がらせに来たのか?」

「勉強しにきたに決まってんじゃん!」

「静かにしろ。まずは注文しろ」

「おうよ!」


茂丸は離れていく。

僕はため息をつく。


「ため息つかないでよ、幸せが逃げるよ」

「本当に困ったやつだよ」

「まあまあ、元気なのが取り柄じゃん?」

「レジの人にドン引きする事言ってないか、見に行く」

「よお、たい。どうした?」


茂丸は僕が席をたつと同時に戻ってきた。


「あんたが変な事言わないか見に行こうとしたんだけど」

「俺が変なことを? バカじゃね? 言うわけなくね?」


茂丸が女子高生のように話してる中、僕はトレーの上にあるハンバーガーの数々を見張る。


「あんた、これ全部食えるのか?」


僕は4つのハンバーガーと2つのLサイズのポテトとマッ○シェイクを茂丸の顔と交互に見た。


「まあ、お礼に? あげようかと思ってな、皆で食おうぜ?」

「何しにきたんだか」

「たい、財布持ってきてないんだろ?」

「なんで知ってるんだよ」

「まあまあ、皆で食べようか? いただきます!」

「茂丸、まあ、ありがと……いただきます!」


僕はチーズバーガーを手にとった。

(久々のジャンク! チーズがとろけて美味い)


男子が3人も集まれば、そのハンバーガーなどはすぐに消えていった。

そして、勉強会がまたもやスタートした。


「たいちゃん、生物教えて?」

「生物はマークシートで暗記科目だから用語を覚えておけば大丈夫だ」

「じゃあ、科学はとってないんだねー」

「あー、ごめん。僕は選択、生物だから」

「いや、いいんだ」


それから英語の関係代名詞や基礎の5W1Hを復習し直した。

1時間後。


「なんか僕、吐き気がしてきたから帰るね」


僕は体調が良くないことに気がついた。

(食べ過ぎか?)


「大丈夫?」

「休みたい」

「休めるところ行く?」

「どこだよ!? どうせラブホとか言う気だろ」

「葉阿戸の家だよ」

「いや、悪いから帰るよ。茂丸、あんた、葉阿戸の家にぜーったい行くなよ?」

「冗談だよー、殺気……漏れてるケド大丈夫?」

「俺も帰ろうかな? たいがいないとここでやる意味ないし」

「俺が英語教えようか?」

「中間テスト、何点?」

「74」

「残念、俺、87だから。じゃ、茂丸は頑張って勉強しててくれ。俺は帰って勉強するから」


葉阿戸はリュックを背負って、僕の後ろに続いた。


「たい、大丈夫?」

「なんとか」


僕は胃もたれをしているようだった。

(テストのときに体調が悪くならなくて良かった)


「じゃあな」

「またね」


道路を走りながら、いつもと違う道で葉阿戸と別れた。そこは本当の家の近道だった。

家に帰ってくると、鍵を開けて中に入った。母は不在だった。

僕は弁当を流しに置くと、2階へダッシュして、ベッドに寝転んだ。

不思議な夢を見ることになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ