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38 回らない寿司屋

「あ、日余さん、どうも」


いちは低姿勢で葉阿戸に接する。


「いち君のことは覚えてるよ。音楽専攻の君、女装してみない?」

「やめときます。うちはれっきとした男なんで!」

「ええー絶対にメイク似合うよ」

「似合いませんって」


いちは目を丸くしている。


「言い合いはいいから行こうよ」

「そだね」


いちを加えた4人は校舎の外まで歩を進めた。


「いち君、何のネタが好き?」

「いくらとかっぱ巻きと」

「軍艦ばっかじゃん」

「ちなみに俺はサーモンとエビ」

「ネタの話はついてからにしようよ」

「そだね、ごめん」

「なんでいちが謝るんだよ」

「ほんとだ、ごめん」

「また謝ってる」

「うん、ごめんね」

「いつまで続くんだ」


4人は自転車をかっ飛ばして、寿司屋に到着した。


「10分で着けるとは……」

「信号に引っかからなかったのが大きいよ」


茂丸は自慢げに言うと暖簾をくぐった。


「いらっしゃいませー」

「すみません、座席はいっぱいでして、カウンター席でもよろしいですか?」

「はい、いいですよー」


たいは周りを見てから承認する。


「ありがとうございます」

「どうぞー」


促されるまま、僕らはカウンター席に座った。茂丸、僕、葉阿戸、いちの並びだ。


「写真とっても良いですか?」

「良いですよ」

「ありがとうございます、皆寄って」


葉阿戸は自撮り棒を出して、ケータイで撮り始めた。

かしゃしゃしゃしゃしゃ。

写真を撮り終えると、おしぼりを出された。


「ご主人、俺はお任せで、ソフトドリンクでコーラ」

「俺も同じく」

「僕は卵とエビとマグロ、ソフトドリンクで山葡萄のジュース」

「うちはいくらとねぎとろ、かっぱ巻き、ソフトドリンクでオレンジジュース」

「はいよ」


店長のような人は手際よく作っている。


「明日、持久走じゃん、いち大丈夫?」

「ビリにはならないように頑張る」

「頑張れ」

「葉阿戸は?」

「俺、結構、足、速いよ」

「この店さ、ネットで見つけたの?」

「いや帰り道に近いから、入ってみたかったんだ」


そうこうしているうちに、ドリンクを全員に配られる。茂丸と葉阿戸は寿司台にサーモンを盛られた。


「乾杯しよう」

「いいねぇ、じゃあ、乾杯!」

「「「お疲れ様!」」」

「茂丸ありがとう!」

「たい除いた、3人で割り勘な」

「うん」

「はいはい」

「僕に気にせず食べていいよ」

「うちも気にしないで!」

「「いただきます」」


2人は手を合わせる。


「うまぁあ」

「美味しいね」


その後、僕といちにも寿司台に盛られた寿司がきた。


「「いただきます」」


ぼくは食べた瞬間、新鮮で大ぶりなまぐろの味が口いっぱいに広がった。形容詞がたい、美味しさがシャリとマッチしている。喉越しもよく、すぐに口から溶けて無くなった。


「美味しー」


いちはそう言いながら、再び、のせられた軍艦を箸でつまんでいる。

寿司屋の店員はお寿司や酒を運んでいる。

ゆっくりとしたテンポで寿司を寿司台に置かれていく。

僕は混んでいるところに来てしまい申し訳なくなった。

(だし巻きたまご美味えー!)


「イカとサーモン、お願いします」

「すみません、ウニ、トビコください」


どんどん寿司を食べていく4人。そのうちに椀物が出てくる。


「そろそろ勘定しよう」

「ここは俺が払うから後でたい以外は均等に割り勘な」


茂丸は折りたたみの財布を出す。


「はーい」

「ごちそうさま」

「勘定お願いします」

「1万8千2百円です」


茂丸はレジにて新札を2枚、出してお釣りをもらっている。


「ありがとうございました」


店の外に出る。寒い。息は白くなる。


「1人4550円。たいは出さなくていいから、2人は俺に金よこせ」

「はい」

「ほら」


葉阿戸といちは茂丸に金を渡した。


「まいどー」

「あー美味かった」

「19時40分だ、いち大丈夫か?」

「急いで帰る」

「気をつけてなー」

「俺らも帰ろう」


葉阿戸の後ろを自転車で走る。


「じゃあ俺こっちだから」

「僕もこっち」

「じゃあな」

「じゃね」


僕は葉阿戸と一緒の道を行った。


「あのさ、送ってくれるのはありがたいんだけど、もっと送ってやる感出せよ、送り方がナチュラルにストーカーじゃねえか」

「気を使うじゃん?」

「俺のほうが気を使うよ」

「そう? じゃ、送ってやるよ」

「なんか腹立つ」

「25日のクリスマスにじゃいになにか買っていってあげよう」


僕は前に別れた、集落への道で、葉阿戸とは別の方向へ向く。


「了解! じゃあまた学校で」


葉阿戸の姿を見送った後、僕は家まで自転車に乗った。


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