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3 不覚にも

次の日。

今日は英語の授業はない。

僕は気まずい思いしなくて済んで本当に良かった。

誰々がうんこしただの、小便しただの、といちいちいちゃもんをつける満が、昨日のことは忘れているみたいで助かった。

昼休み。

茂丸と一緒に図書室へ向かった。

カウンターの椅子に座り眠っている葉阿戸を見つけた。

今日も天才的なアイドルのように可愛かった。

ゴクリと生唾を飲む、茂丸。


「ん? あーすみません、本の返却ですか? ……って、なんだ、たいか」


葉阿戸は寝ぼけ眼をこすりながら起き上がる。


「葉阿戸、ごめんね、実は入部の話ししたらこいつも入りたいってうるさくて連れてきたんだけど」

「はじめまして、僕、園恋茂丸です。たいと同じクラスです。部活は帰宅部ですので気にしないでください」

「なーにが僕だ、ええかっこしい」

「何だと? たいのくせに生意気だぞ」

「茂丸君はうんこで失敗したことある?」

「赤ん坊の頃は親の世話になって、小学生に入ってから今まではうんこの失敗はしたことありません。毎日の朝は快便です」

「じゃあ入部は却下だ」

「は? 何故?」

「恥をかいている人間のほうが俺は好きだから」

「好き嫌いで分けれる問題なんですか? 入部」

「写真部の皆は、俺がカラスの色を白と言えば、皆揃って、白というんだよ」

「ということだ。茂丸には悪いけど」

「フン!」


茂丸の様子がおかしい。辺りから異臭がしてきた。


「茂丸、まさか」

「悪いな、たい。うんこ漏らしちまった」

「あははははは! 本当に漏らしたのか? いいね! 入部、許可する」

「なんかごめん」

「先に教室戻ってるな」


うんこ漏らしたはずの茂丸がかっこよく見えた。青色と白色の縦縞模様のトランクスに茶色の物体が、確かにある。茂丸はうんこを落とさないように、手を支えにして、去っていった。


「今日、視聴覚室に来なよ。先生に2人のこと、話しとく、入部届はそこで書きなよ」

「わかった。ところで、葉阿戸ってインフルエンサーなのか?」

「コスメやメイク動画上げてる、snsのチャンネル登録者5万人位のインフルエンサーだよ。ハートピヨピヨ、よかったら登録とフォローしてね」

「あーsnsはやらない主義だから」

「じゃあ、電話番号を教えてよ」

「いいよ」


僕はこうして葉阿戸の電話番号をゲットしたのだった。


「そろそろ戻らないと」

「俺も行くよ。おーい先生、図書委員いなくなるからなー」


葉阿戸は椅子から立ち上がるとカウンターを回って、僕の隣に来た。


「はいはい、ありがとうね」と、どこからかおじさんを思わせる声がした。


「行こうぜ、……あれ? 君もピンク仲間かい?」


葉阿戸は僕と同じピンクのトランクスを履いていた。


「そこは言わなくても良くない?」

「下着合わせてると、カップルみたいだな」


葉阿戸は僕をからかう。


「そ、そんな事ないでしょ。まったく恥ずかしげもなくよく言うよ。しかし、背も女みたいだし、……何も言わなければ可愛いのに」


僕はからかってきた言葉をバットで返すように打ち返す。


「あは、よく言われる」

「なんで照れないんだよ」

「例えば、生のかぼちゃを果物ナイフで切ろうとして、硬いじゃねえか、と言っているのと同じ話だよ」

「可愛いのは分かりきっているとでも言いたげだな」

「そういう事!」

「ちなみに、恋愛対象はどういう人?」

「ああ、俺、趣味で女装してるだけで恋愛対象は普通に女の子だから。可愛い女の子が好きだな」

「ええー」

「こっちがええーだよ。俺に惚れたか? 抱きたいのか?」

「まじで、どっからその声出てんだよ!」

「そういえば、あの園恋君、多分今日の放課後来れるかな?」

「校則か、うんこを漏らす人がいなくなるために作られた校則だからな」

「うん。校則第一条、うんこを漏らすべからず」

「親の呼び出しとかかな?」

「どうかな? じゃあ、また放課後」

「またね」


僕は葉阿戸とクラスの前で別れた。


「茂丸、先生に言ったのか?」


クラスで今日は孤立している茂丸に話しかける。


「うん、でも、正直に言ったら反省文ですんだよ」

「良かったー、放課後俺だけアウェーな感じにならなくて」

「俺のあだ名がうんこマンになったけどな」

「まあまあ、すぐ忘れられるよ」

「そうなんだけど」

「例のブツは?」

「職員トイレで流させてもらった」

「職員ってさあ、ズリーよな」

「職員は女がいるだろ。それで、葉阿戸さんとはどうなんだよ、どうせ俺の悪口で盛り上がってたんだろ?」

「俺も葉阿戸もそんな悪口言うタイプじゃないよ。電話番号は交換したけど」

「俺にも後で交換させるようにフォローしろよ」

「茂丸って自分からグイグイ行くタイプかと思ってたんだけど」


僕が言うと茂丸は黙った。


「こんな可愛い子が女の子のはずがない!」

「茂丸……目を覚ませってどの口が言うんだよ」


キンコンカンコーン。


チャイムは僕らの話を黙らせた。


「園恋はうんこ漏らしたからノーパンで帰宅なー」

「はい。あの、ズボンは?」

「それは返すー……よし、それじゃ皆居眠りしないようになー」


担任はトランクスを集めさせると、交代するかのように入れ替わり、違う先生が教壇に立った。


「数学の授業を始める」


誰もが頭を悩ましてきた数学1の時間がやってきた。


「深呼吸、礼! お願いします」

「「「お願いしゃーす」」」

「先ずは、教科書27ページの因数分解のたすきがけの問題からだな」


先生が黒板にチョークですらすらと書いていく。


ショーーー!


僕の茂丸とは反対側の王子が小便をする。目鼻立ちのくっきりした顔だ。影だけでもイケているのがよくわかる。

見つめていると目があった。

王子はウインクしながら、前を向いた。

僕はゾクゾクと悪寒がした。


「ではここの問題を、蟻音、解いてみてくれ」

「え、えっとX²+5X+3=(2X+3)(X+1)です」

「正解、それじゃ、応用問題に入る」


僕はその後も一生懸命勉強した。


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