24 大会の前日
家に着き、母にハンカチを渡す。
「おかえり、なあに?」
「ただいま、いらんからあげる」
「このハンカチブランド物だよ」
「あげるよ」
「ありがとう」
母は嬉しそうに握りしめた
「じゃあ僕はこれで」
僕はあっという間に2階に行き、暖房をつけた。さらに、勉強道具を出して勉強し始めた。
「英語の時制は……」
ルーズリーフが黒くなっていく。
「たいちゃん、ご飯だよー」
「はいはい」
僕は夕ご飯を急いで食べて、また勉強に戻った。自分でも驚くくらい集中してやっていた。
「世界史探求の小テストはー」
ブーブー。
メールだ。
僕はリュックの中からケータイを出した。
「茂丸」
ケータイには、制服姿の茂丸と葉阿戸の写真が送付されていた。
『勉強頑張ってる? 葉阿戸とコンビニで偶然会ったわ、明後日、頑張ろうぜ。おっぱいぱーい』
『何してんだよ。遊んでたのか?』
『よく分かったな。ゲーセン行ってた』
『勉強しろよ、じゃあな』
僕はケータイをしまうと人一倍勉強を頑張った。葉阿戸の顔を見たお陰で俄然やる気が出てきた。
◇
「たいちゃん、朝だよー」
僕はガバッと起きた。肩にかけられたブランケットをとると、髭を剃りながらシャワーを浴びた。
(しまった、勉強しながら寝落ちしてた)
そうして今日は始まったのである。
いつもより遅いのでさっさと学校の用意した。家を出て学校の方向へ走り出した。無論、曲がり角で「遅刻遅刻ぅー」などという可愛い女子とぶつかることもなく至って普通に学校に到着した。
教室の前まで神妙な面持ちで歩いた。
「おはよう!」
「たい、今日は遅いな!」
茂丸は笑いかける。
「あーちょっと勉強してたら寝落ちしてた」
僕はいつものように用意して、席に座る。
ぶりぶり。ぼっちゃん!
「うんこするなよ」
「生きてるんだから出すもんは出さないと!」
「葉阿戸だってうんこしてるもんな?」
「あんた、葉阿戸のそんな姿みたのか?」
「想像だよ」
「想像ならピンクの可愛いうんこをプリッと出すだけだろ。恥ずかしそうに」
「また勃ってる……」
「うんこぶつけるぞ」
「俺が悪かった。それだけはやめてくれ」
「オナ禁してるんだから、勃たせるなよ」
「なんで勃っちゃうんだよ。葉阿戸って言っただけで」
「そのワード大会が終るまで禁止な」
「たいって日余さんのことが好きなん?」
満に疑われる。
「そんなんじゃないから! ただ……、葉阿戸が可愛いだけだよ」
がらら
「はい、好き〜!」
担任が聞き耳を立てていたようで、ジャストタイミングで登場し、両手で僕を指さした。
「だから違うっつってんだろ!」
「お? 真剣になっちゃう? 恋煩いか。いいなぁー、先生も君達の時代にはマドンナがいたんで、皆で告白して、皆で玉砕した思い出があるんだよなぁー」
「はあ、先生、朝礼を始めて下さい」
「今日は大会の予行演習があるので蟻音と園恋は放課後、体育館に集まるようにー。皆、明日の大会は朝から体育館のパイプ椅子に座るんで、トイレ行きたくなったら先生に言う事ー。昼休みに生徒会員が明日の大会のプリントを配るそうだー。以上ー。それじゃ、ズボンとトランクスを持ってきてくれー」
担任は僕の方を見て、薄く笑う。
僕は先生から目を離さずにゴミ袋に衣類を投げ入れた。
「良い面構えだなー。これなら優勝候補にあがんじゃねえーかー?」
「僕が勝ったら、先生も、トイレ、この場所でして下さい。優勝賞金でおまるを買うので職員トイレいかないで下さい」
「はっはっは。いいぞー。その代わり負けたら何でも言うこと聞けよー」
「はい」
僕は踵を返して、一目散に席に戻った。
がらら
担任が出ていく。
「たい、そんな約束して大丈夫か? あの人サディストで有名だよ? 便器舐めさせられるんじゃねえの?」
「勝算はある。今日のおかずで検証しよう」
「それって予知夢ってか?」
「いや。それもいいが。そういう方法じゃない」
「じゃあどういう方法だよ」
「良い方法がある」
僕は勝つ見込みがあると思うと、心は晴れやかになっていた。
◇
昼休み
プリントが配られた。
『1、体育館の中央に半分ほどのレッドカーペットをひき、その端にある机の上にあるおかずは、当人が端にきてから、明らかにされる。
2、皆はその周りに名前の順で着席してみていなくてはならない。
3、3分以内に机をどかして、カーペットの反対側に敷かれたマットの上に精液を出す。
4、カーペットの上を助走をつけて射精しても構わない。
5、全クラスで1回戦目、1回戦で勝った者は全学年で2回戦目が行われる。
6、1番、遠くに精液を飛ばした者が優勝。
審判は生徒会が務めます。
9時から始まり、お昼までには終る予定です。
午後は表彰式を行います。出場者は頑張ってください!』
プリントにはきのこがいっぱい書かれていた。