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21 特に理由のない暴力が茂丸を襲う

伊祖は職員室にはいなかった。

おそらく、パソコンやカメラ類のある準備室にいるのだろう。もちろん、視聴覚教育、映写、音響などの準備も行える場所だ。


「手間がかかるな」

「じゃあ、茂丸はついてこなくていいよ」

「いいや行く」

「ああ、そう」


僕らは次に視聴覚準備室に着いた。

探し人はいた。


「伊祖先生、一眼レフでまだ印刷していない写真もあるので一眼レフ貸して下さい」


茂丸に先を越されて言われてしまった。しかし、そのおかげで目的が達成する。


「カメラ好きなの借りていけ。明日も言うが、来週の火曜日、コンテストに出す写真を1人1枚決めておいてくれ、な!」

「「はい」」

「カメラ、1時間以内に戻しにこいよ」

「はーい」


僕らは準備室で一眼レフカメラを持って出る。気持ちを浮つかせながら、視聴覚室に入った。

プリンターに写真を送って、印刷する。

葉阿戸の可愛い写真が出てきた。

10枚ほど印刷し、写真用のファイルに入れた。


「それじゃ、戻るか」

「俺もなんか印刷する」


茂丸は猫の写真をチョイスして、印刷した。

それから僕達は伊祖先生に一眼レフカメラを返しにいった。


「これだけあればいけそうだな」

「でも自分に当たる可能性は低いよ」

「まあ、その確率もゼロじゃないし!」


2人は校舎を出る。


「今日はどうする? ラーメン行っとく?」

「いや、いい。帰って勉強する。金もないし」

「付き合い悪いな」

「いや、いつもなんか食ってから夕ご飯食べてるから、なにげに太ってるんだよ」

「筋トレでもしろよ」

「やだなぁ。僕、筋肉ムキムキなキャラじゃないし」

「俺は腹筋割れてんぞ?」

「嘘つけ」

「触ってみ。殴っていいよ」


そういう茂丸の自慢の腹筋を僕は触ってみる。

茂丸は眉毛だけ動いて、したり顔だ。

僕は怒りが湧いてくる。


「一発殴っていいんだよな?」

「もちろん、いいがっくぁ!」


ドゴ!

僕は茂丸の顔面に渾身の一発を入れた。


「馬鹿野郎、普通、顔殴るか?」


茂丸は右頬をおさえた。


「だって殴っていいって言ったし」

「腹のことだろ! いててだよー」

「そうも思ったんだけどシンプルにムカつくから」

「俺にも殴らせろ」

「嫌だよ、痛いじゃん」

「こいつ! お前が大会で俺より下だったらクラスの前で裸踊りしろよ」

「もし茂丸の記録より上だったら、高い寿司奢れよ」

「いいぞ」


僕らはバチバチと視線を合わせ、死闘を繰り広げることになった。




次の日。

僕は葉阿戸の写真集を持って、学校に来た。直感で選んだ全20枚だ。

ロッカーに隠して入れておく。


「おはよー」

「わ! ……おはよう」


僕は後ろからいきなり声がかかったので驚愕する。振り向くと、いちが鳩に豆鉄砲食らったかの表情をしていた。


「どうしたの? たい」

「いちか、びっくりした、実は飛距離大会のおかずをちょっとしまっててね」

「あ。ごめん」

「いや別に、謝らなくていいよ」


僕はロッカーに不必要なものと弁当を入れた。


「最近は遅刻ぎりぎりじゃないんだな?」

「お母さんに起こされて早く来るようにしてるんだ!」

「顔は? 傷できてないか?」

「大丈夫」

「良かった! 可愛い顔してるんだから気をつけろよ」

「うん! ありがと!」

「はよー!」


茂丸が教室に入ってきた。


「おはよう」

「はよ〜」


茂丸はいちに向かい、手を上げた。


「おはよ。茂丸」

「よ〜」


茂丸は机まで来て、必要なものを置いていく。何か大切なものを抱えていた。


「それって、まさか」

「言ってた呪いの人形だよ。見る?」

「見ねえ、怖いから、はよしまって!」


僕は震え上がる。


「呪いの人形?」

「いち、興味あるのか?」

「いいから、しまえよ。呪われるぞ」

「たいの言うとおりだけど、どう?」

「うち今本読んでるから、昼休みに見せて」

「マイペースだな。昼休みに回収されるからその時にでもな」

「視線を感じるんだよ。早くしまってくれ」

「まったくもう」


茂丸はロッカーの中に入れて、ガサツに閉める。


「乱暴に扱わないで!」

「霊感あるの?」


いちが半身で聞いてくる。


「人並みにはな!」

「ふうん」

「たいに当たったら」

「やめろ、フラグ立てるんじゃねえ。そんな事言ってるとお前が当たるぞ。この罰当たりが!」

「フラグおるなよ。今一生懸命、たいに当たるようにお願いしてたんだから」

「もう一発、殴られたいのか?」

「もう一発?」

「いや、なんでもねえよ! ごっほん」


茂丸はわざとらしく咳払いをした。


「おはよう」

「おはよ」


皆が来る時間だ。

僕は寝たふりをしてやり過ごした。


がらら

前のドアが開いた。


僕は担任が来たのかと顔を上げる。

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