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120/120

120 成長した彼らの持久走大会

その夜、ケータイに皆に配り忘れたコースと4キロの道のりの書かれた紙がモンから送られてきた。

(僕にも回すように書かれていたがほっといて大丈夫だろう。体育の授業で走っているし)


次の日。

朝から全員は校庭の一箇所に集められている。

2年2組はパンイチでスタート付近にいる。ブーメランパンツやボクサーパンツの人が混じっているが、トランクスが多い。他の人はジャージを着ている。


「「「和矢ちゃんのご褒美もらうぞー! ドッコイショ! ドッコイショ! ドッコイショノショ!」」」


2年2組は盛り上がりを見せていた。うちわをパンツの尻の部分に入れている人もいる。


「ええーお集まりいただけましたことを極上のほまれとし〜〜〜〜」


校長が長々とスピーチをしている。


『生徒会からお知らせです。カラーコーンや看板のある場所は基本立ち入り禁止区域です。道に沿って走るか、回り道をしましょう。各コースの場所に先生たちが応援、兼、見守りをしてくれています。うちわを持って走りましょう。もしも紛失した場合は失格となります。さて、開始1分前となりました、準備のほどはよろしいですか?』


この声はモンではない、他の生徒の声だ。


「「「おーーー!」」」


やる気満々に雄叫びを上げる男子達。


『開始30秒前。……20秒、……10秒、9、8、7、6、5、4、3、2、1、スタート』


パーン!


開始のピストルが鳴り出し、団体が動き出した。

僕は団体の中ほどでゆっくり体力温存した。4キロも走るのだ、早々、根気詰めたリタイヤ者も出るだろう。


『始まりました! 皆さん、頑張ってください。途中で先生がいるので棄権する場合は先生の元について行ってください』


2組はガチ勢とやる気のない人で分かれている。

持ってるうちわで理解できた。

タッタッタッ

僕はペースを変えず走っていると、1キロ過ぎた辺りで、何人もの敗者が出てきた。なので、少しだけペースを上げることにした。橋本がウンチングスタイルでこちらを見てくるが無視した。

前にいた葉阿戸が、僕を見て首を傾げながら笑う。そして、前へどうぞと手でジェスチャーした。

そして、僕は30人ほど抜いていく。

2キロ付近で、また人が道を避けるように棄権しているか、歩いている。土橋が笑顔で手を降っている。

僕は28人ほど抜いていく。

後10人くらいで3位圏内に入る。

前を走っているブーメランパンツの男子が僕をチラ見して叫んだ。


「和矢ちゃんにパフパフしてもらうのは俺だー!!」

「僕はそんなの望んでない!!!」


僕は思い切り、距離を詰めると、さっさと追い抜いた。可哀想な気もしたがしかたない。

3キロ地点に到達した。

「頑張れー後少しだ!」と山田が僕を称えている。

後1キロ、僕は本気の走りを見せる。

10人追い越して、走った。

もう満身創痍だ。涙が出てくる。

前にいる2人もキツそうにしている。

校庭内に戻り、ゴールテープが見えてきた。

『現在、たー君が3位だ、頑張れー』


生徒会のことも頭から離れて足を動かした。

結果、僕は3位でゴールテープを切るとそのまま真っすぐ走った。


『1位、我らが会長、3年1組雷神拓哉さん、2位、期待の新星、1年2組杉浦明日美さん、3位、飛距離大会連覇者、2年3組蟻音たいさん』


生徒会の人に番号の振られた紙を渡された。

”3位”と書かれていた。


「良かったー、3位だ!」


僕は生徒会のテントに入るとスポーツドリンクをもらった。


「はい、ご褒美のフォーチュン・クッキーよ」

「エッチなことも入っているんですか?」

「イエース、引きが良ければね」


和矢の大人の魅力に拓哉は目を輝かせてクッキーをかじっていた。


「やったぜ! Hだ! ツイてるぜ!」

「はいこれ、先生の使わなくなったIHクッキングヒーター」


和矢は足元にあるダンボールから、黒い機械を取り出した。


「Hってあるんですが?」

「IHって書いてあるでしょ?」


和余の言う通りだった。

僕は覗き込んだ紙に小さな文字でIの字と太くHが書いてあるのを発見した。ほっと白い息をはく。


「なんだよ、もう」


拓哉は何処かに行ってしまった。


「僕ももらっていいですか?」

「いいわよ」

「ありがとうございます」


僕はクッキーをパクっと咥えて、紙を取り出す。


「これは……?」

「あ、Hit! 石川県の温泉宿チケット4人分よ!」

「ええー!?」

「はいこれ、なくさないでね」


和矢はダンボールから、ちょうど冬休み中の期間のチケット4枚を僕に手渡した。


「えー、自分で行けばいいのに?」

「それは察しなさい。悲しくなるでしょう」

「あー」


僕は和矢が仕事一筋の女だと想像した。


「葉阿戸と茂丸と明日姉さんを誘うか」


僕はズボンのポケットに入れた。


「あの、俺まだもらってないんですけど」


明日美が話しかけてきた。痩せ型の高身長の男子だ。


「はい、どうぞ」


和矢はクッキーの缶を持って、選ばせる。


「もぐもぐ、美味い」


紙に書いてあったのは、”タワシ20個”だった。


「いらないんですけど」

「あらそれじゃあ、学校の備品にしようかしら」

「その代わり、ハグしてくれませんか」

「20歳になったらね」

「後4年は彼氏作らないんですね」

「うるさいわね、ほっときなさい」

「ハグ権と書いてもらえますか?」

「分かったわよ、貸しなさい」


和矢は”タワシ20個”と書かれた紙の裏に”ハグ権”と書いた。


「必ずOBになって命をかけて出直します」

「いや、ハグに命かけるなよ!」


僕はツッコミを入れるとどっと笑いが生まれた。


『続々とゴールする人が増えてまいりました』

「頑張れー」


僕も生徒会員としてテントにいると葉阿戸がゴールしてるのが見えた。


「あ、雨だ!」


運のないことに雨が降り出してきた。

僕は雷が来ないように祈るしかなかった。

『ゴールした皆さん、自分の教室に戻りましょう。教室に着いたら座らないでくださいとのことです』


「オボロロロ」


モンがテントの横で袋に吐いている。

僕はモンの背中を叩く。


「はあはあ、ありがとう」

「大丈夫かよ?」

「問題ない」

「モン君、たー君、教室に戻っていいよ。放課後はたー君だけ顔出してね」


3年の土井から言われた。


「「はい」」


僕らはお互いを支えるように教室まで歩んだ。教室に入った瞬間、こむら返りが起きた。


「モン君、たい、平気?」

「僕は大丈夫、モンは親に連絡して帰ってもらいな」


僕はモンをロッカーを背もたれにして座らせると、足を伸ばした。


「14000円。休んだら罰金だ。ほれ。10000円、後は会長と私の取り分だから」

「たしかに受け取ったよ。1人、416円だな」


僕はお金をもらい、自分の財布に入れた。


「さすが、計算高いね」

「どういう意味だ!」

「数学の先生に向いてるよ」

「そうかい」


僕は適当に応えると水道の水にハンカチを当てた。そうして、それをモンの額にくっつけた。

キンコンカンコーン。


「ありがと。礼を言う」

「橋本先生が来たぞー」


黄色の声が聞こえた。


「はいそれではー、3位の賞状とトロフィーですー。蟻音たいー! おめでとうー! 後ろに飾っておくからなー」


橋本が教卓に置くと、僕に手招きする。


「なんですか?」

「皆ー、拍手ー」


パチパチパチパチ

ロッカーに集っている皆が拍手した。


「皆、うちわを回収ー」


橋本の手にはまた袋があり、皆その中に入れた。

もちろん、僕はすでに名前とクラスを書き込んであった。葉阿戸といちとモンもだ。おそらく皆も書かれた様子だ。


「それでは気をつけて帰るようにー」


空は晴れている、どうやら天気雨だったようだ。

皆は各々帰っていった。


「モンの事は俺が見てるから、生徒会行ってらっしゃい」

「ありがとう、葉阿戸。行ってきます」


僕はポンプ回しに向かった。


「今日は大丈夫、雨降ってたし、教室の便器使ってないから」


ポンプ室の前に誰かが立っている。


「えっと、春斗君だっけ?」

「ああ? 春斗でいいよ。たー君は外の看板とか三角コーンの撤収作業に移ってくれ。俺はここにいる。猫林さんは裏口から出てって、誰もいねえからよ」

「そうなんだ、了解」


僕は頷き、空腹を我慢して、外へ行く。

外ではまた虹がかかっている。

生徒会の人が前を歩く。追いかけると、仮設トイレを畳んでいた。


「お! たー君、2年は看板と三角コーンの撤収を頼む」

「はい」


僕は3年の春木に従った。コースを回っていき、三角コーンを持ち学校へ戻る。2年の仲間とともに何度となく繰り返して、三角コーン、看板は撤収した。その後、椅子を体育館に戻したり、テントを畳んだりした。体力仕事に汗が流れる。


「痩せれそうだな」

「はは! そうだな」


僕は唯盛と話す。


「全員終わったか?」


拓哉も肌が更に日焼けしてコ◯ンの犯人役のようになっている。


「終わりました、あとモンが罰金の10000円を会長以外に払ってくれとのことです」

「じゃあ、飯でも食いに行くか?」


今の時間は15時過ぎだ。

僕は(すみません、僕、早く帰りたいので)などと言ってはいけない雰囲気に圧倒された。


「いつもの居酒屋に行くぞ!」

「「「おー!」」」


皆が賛同するので僕も行くことになった。


「焼き鳥とモツ煮とポテトと唐揚げと枝豆、あ、あとコーラ。皆もコーラでいい?」


各々の学年で固まった僕らはこなれてるさんぽと唯盛に注文を任せる。


「「「おう」」」

「モンは大丈夫そう?」

「なんか吐いてましたね」

「敬語じゃなくていいぞ、たー君」

「僕は、たー君じゃないよ、たいだよ」

「ええーでも、皆、たー君呼びしてるよ、悪くないじゃん? ねえ」

「うん、たー君はたー君だよ」


さんぽは笑って話す。


「お待たせいたしました、コーラ7つです」


若い女性の店員に皆は鼻の下を伸ばしている。


「ありがとうございます」


僕はお礼を言う。


「とりあえず乾杯しようか、さんぽ、音頭とれ」


唯盛はさんぽに命令すると、さんぽは快く受けてくれた。


「たー君3位おめでとう、そして持久走大会お疲れ様でした、カンパーイ!」

「「「カンパーイ」」」


その後、僕らは喋り倒し、17時になると、2時間制の店なので帰らねばならなくなった。

僕はモンからもらった10000円を拓哉に渡した。

それ以上の金額は3年の奢りになった。


「「「ご馳走様でした、ありがとうございました」」」

「2次会行けるやつー」

「俺も行くー」

「僕はテストの勉強があるからごめん」


僕は適当に謝って、逃げるように自転車に乗って帰った。




家につくと、安心した。


「お帰り、遅かったね」

「ただいま、母さん、持久走、3位!」

「たいちゃんが3位!? すごいねー」

「でしょう! 冬休みには温泉宿のある石川県まで行くことになった」

「そう? 気をつけるんだよ。ご飯はカレーだよ」

「はーい」


僕はご飯を食べると、食べすぎた腹を抱えて風呂に入り、歯を磨いて、勉強を少しして、寝るのだった。


いつも見ていただきありがとうございます。(取材?)旅行に行くのでしばらく投稿をお休みします。すみません。これからもよろしくお願いします。

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