表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/120

119 生徒会の仕事4

月曜日

7時に学校へ。

モンは今日は校門の所に立っていない。

僕は落ち着いて教室まで来た。


「モンー? 居るー?」


しかし、教室には誰もいない。


「もしかして休みか?」


僕は即座にモンに電話をかけた。

プルルル、プルルル、プルルル! 

『おかけになった電話番号は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません』


電話にも出ない。

僕はしかたなく、パイプ作業をしようと1人で廊下に出た。


「おはよう! たい」

「わあ、葉阿戸、脅かすなよ。おはよう」


僕は教室から出て、曲がり角を曲がろうとしたところで葉阿戸に出会った。


「モン君は?」

「それが居場所がわからないんだ、休みかもしれない」

「しょうがないな、俺が協力してやるよ。俺の専用電話には絶対に出るから」


葉阿戸はケータイを取り出して、片手で操作する。耳元に持っていく。


『もしもし、モン君、今どこ?』


葉阿戸は早口で話す。


『あ、たいが探してたから。代わる? あ、休むのかー、お大事に』


葉阿戸は明るく言うと電話を切った。


「休むって」

「あんなに真面目なのに?」

「とにかく、はっしーには伝えたからって。すごく鼻声だったよ」

「僕の電話には出なかったのに」

「何かしたんだろ」

「何も、あ、ゴリラのマネしただけなのに」

「それでモン君、滝修行にでも行ったのかな」

「ありがちだよね」


僕らは別々の道に別れた。

1人で初めて壁を叩くのは緊張した。

コンコンコン。


「モンがいないなら早く帰れるな」


僕はポンプ室の壁を3回叩いた。

ウィイイン


「「「待っていたぞ、たー君」」」


6人の男子が回る木の棒を押している。生徒会でモン以外の2年生の男子が揃っていた。全員もれなくパンイチだ。


「今日、何かありましたっけ?」

「モン君は精神痛と風邪がひどいので生徒会休みますって連絡が来た」

「はあ」

「俺等の誰かが会長になる。モン君には悪いけど」

「へえ」

「会長決めじゃんけんの時間がやってまいりました!」


猫林は大声でよくわからないことを言っている。


「会長決めじゃんけんとは?」

「その名の通り会長を決めるじゃんけんだ」

「モンが来ていないのにしていいんですかね?」

「体調を崩したのは、自己管理がなっていないからだ」

「皆これからじゃんけんする。最初はグー、ジャンケンポンで、出す手を決めたら手を上げてくれ、猫林さんが確認を執り行う」

「分かりました」

「皆、行くよ! 会長じゃんけん、最初はグー、ジャンケンポン!」


唯盛が音頭を取ってじゃんけんが始まる。

僕はチョキを出した。

グー、グー、パー、パー、チョキ、グー、グー。

判定の結果、もう一度になる。


「「「もいっちょ、会長じゃんけん、最初はグー、ジャンケンポン!」」」


今度は皆が言う。

グー、グー、パー、グー、パー、パー、パー。


僕はパーを出していた。


「4人勝ちじゃな、じゃあ4人で。会長じゃんけん、最初はグー、ジャンケンポン」


チョキ、チョキ、グー、グー。


僕はチョキを出していた。


「さんぽか、春斗かだな!」


残る2人に唯盛は熱くなって言う。

僕はそもそも会長になりたいわけではなかったので別に良かった。

その時だった。

コンコンコン。

小さな音がした。


「誰か来たな」


猫林は開くのボタンを押す。

入ってきたのは、マスクを付けたモンだった。


「遅くなってすまない、皆」

「モン君、どうしてここに?」

「橋本先生から聞いたんだが、君たち、私に隠れて、会長じゃんけんをやっているんじゃないか?」

「すげー地獄耳」

「学校に来てから、保健室にいたんだが、橋本先生からメールが届いてね。だいぶ楽になったから、駆けつけてきたんだ、ごほん、ごほん」


モンは隅にある電源タップを見ている。

僕は突拍子もない展開にただただ見守ることしか出来なかった。

(おそらく電源タップは盗聴器なんだ)


「もう2人のどっちかなんだけど」

「私も混ぜてもらおう」

「それじゃ、3人で勝負じゃ」

「皆、行くよ! 会長じゃんけん、最初はグー、ジャンケンポン!」


パー、パー、チョキ。


「ふっ! もらった!」


モンは一人勝ちしていた。

皆は時が止まったようだった。


ピピピッ


『終わりだよ』


天からの声で皆は我に戻る。


「見事勝ったのはモン君じゃ」

「げほ! ありがとう」

「くう! 今日こそチャンスだと思ったのに」


唯盛を始め皆が悔しそうにしている。


「解散!」

「「「おー!」」」


皆は猫林の言うことを聞いて出ていった。


「保健室に戻るのか?」

「いや、教室に行く」

「でも、熱ありそうだし、鼻声だし」

「私がいいって言ってるんだ。行くぞ!」


モンは腰を丸めて3組まで歩いていく。

僕は隣で様子を見ていた。


「ハート隊は?」

「すでに連絡を入れている」


モンは虫の息だ。

僕らは教室に入った。


「「おはよう」」

「「「おはよう」」」

「あれ、モン君、体調は大丈夫?」

「葉阿戸様、ご安心を。保健室で休んだらだいぶ楽になりました。休むなどと嘘を言い、すみませんでした」


「保健室行けよ」と黄色。


「大丈夫です、ゴホゴホ」


モンは顔を赤くして笑ってみせる。

僕らはズボンとトランクスを脱いで便座に座った。

古典の授業では今度はモンが眠っている。

宮内は古典の授業を珍しくしていた。


キンコンカンコーン。


次は数学の授業だ。


「モン君、モン君、次数学! 寝てたら当てられるよ!」

「いち君、ありがとう」


がらら。

数学の先生が入ってきた。


「深呼吸、礼!」

「「「お願いします!」」」

「それでは教科書70ページの問題から。10分間で回答者はー、うん、今日は眠ってるやついないな。では蟻音から横にずれていこう」


数学の先生は僕を当ててくる。


「a³b²−a²b=a²b(ab−1)です」

「正解、じゃあ、次、倉子」


先生の授業は無慈悲に僕らに降り掛かってくる。

僕の隣に向かって回答者は選別されていった。


「X²−Xy−2X+2y=X(X−y)−2(X−y)=(X−2)(X−y)」

「オッケー! 次は、虻庭……大丈夫か?」

「すみません、わかりません」


モンは苦しそうに告げる。


「じゃあ、水雲」

「はい〜〜〜〜」


純は正答したので、次は前の席に指名される。

しばらく問題を解かされて授業は終わった。

キンコンカンコーン。

次は体育の授業だ。

トランクスをもらい、ジャージを着る。

寒空の中、持久走大会の練習が始まった。

モンはベンチで休む。


「俺についてこい」と山田が言うので、皆で追いかけた。


僕は自慢の足で先生の隣を追い越しそうになりながら、走った。


「倉子君が苦しそうです」


竹刀は勃起させながら走り、言った。


「ペースダウンだ」


山田は早歩きに変わった。

僕は足踏みをする。

曲がるところをよく覚えた。

そして、学校に到着した。


「皆ついてきたか?」

「なんとか」


いちはぜえぜえ呼吸をしていた。


「次は何をしたい?」

「乱交」

「薄月君のことは聞かなくていいです。バドミントンでもしませんか?」

「バドミントンね、いいよ」


山田は体育用具倉庫を開けた。

皆でバドミントンをした。

楽しかった。



数時間たち、昼休みになった。


「モン、今日は行かないのか?」

「私は今日は休むから、蟻音は行って来い。ゴホゴホ!」


モンは辛そうに咳をしている。


「じゃあな」


僕は人通りのない、ポンプ室前まで来て、ノックする。

コンコンコン。

ウィイイン

僕は不思議に思った。

(ゼ◯伝の嵐の歌が流れている)

猫林がハーモニカを弾いていた。さながら、グ◯グルさんだった。

なんだか力が湧いてくる。

5人で回している木の棒に、僕は入っていった。


「お邪魔しまーす」

「たー君、モン君の調子どう?」

「咳してて、熱がありそうだけど、保健室行かないんだよな、モンのやつ」

「モン君は無遅刻無欠席だからなー」

「こればっかりは仕方ないんじゃないかな?」


僕は一生懸命棒を押した。


「ヒッヒッフー!」

「さんぽ、うるせえ」


唯盛は瞬時に怒鳴った。

ピピピッ


『終わりだよ』


♪! ♪!


ソ! ド! と終わりの合図をした。


「心臓に悪いって」

「さて、教室に戻るか」


皆は教室に帰っていく。

僕は残りの2時間も難なくこなした。

終礼のときに青色のうちわが配られた。

僕ら生徒会が頑張って作ったうちわだ。


「明日はうちわを持って走るー。裏の面は何も書き込まないでくれー、卒業アルバムに1文字ずつコメントを書くからー。じゃあ、トランクスとズボンを返すー。気をつけて帰れよー」


橋本はさっさと業務を終わらせて、何処かに行った。


「葉阿戸、実は〜〜〜〜」


僕は小声で橋本の言っていたうちわのことを伝えた。


「そうなんだ、名前と何組になりたいかを書けばいいのかー」

「葉阿戸、声が大きい!」

「何々? うちわの話?」

「おい、どういう事だ?」


皆が集まってきた。


「いや、別に、なんでもないよ?」

「うちわに名前と何組になりたいかを書くとそのとおりになるって」

「葉阿戸、内緒だってば」

「いや、不平等じゃん」

「いち、次も3組な」

「気が早いって」

「他のクラスには広めるなよ」

「「「はーい」」」



放課後。

生徒会の僕らポンプを回して、終われば今度は裏庭付近に仮設トイレの設置をしなければならなかった。

水洗式のトイレだ。ポンプ室に線がつながっているので、ペダルを引くか、踏むだけで、簡単に流れていく。この日は風が吹いていて壁を組み立てるのに一筋縄ではいかない。結局ドライバーではなく、電動ドライバーの力を借りて上手く壁をはめ込んだ。

モンの姿はなかった。


「やっと終わりましたね」


僕が会長に話しかけると会長はニンマリと笑う。


「これからが本番だよ」


そして、僕らはコースに三角コーンの配置や、看板の配置をした。

更に19時までいろんな業務をこなした。

いつの間にやら、皆、仲間意識を持っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ