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112/120

112 2年生大会当日5

目を覚ますと、カーテンの閉ざされた場所にいた。

メガネが隣に退けられてあった。

顔についていたベタベタな液体は取り除かれているようだ。

僕はメガネをかけ、腕時計を見る。

(そもそも、夢だったのではないか、今は何時だろう。お腹すいた)

腕時計の時間は16時22分だ。


「大会は終わったのか?」


僕はそう言いながら体を起こす。

シャー! シャー! シャー!


「たー君、やっと目覚めたようだな」

「たい、後で、ほくろ探しをしようか?」

「たい、大丈夫?」


いちと葉阿戸と拓哉が3方向から現れた。


「視界はスッキリとしている。僕……」

「ネタバラシをしよう。俺は自分の精液を3メートルが限界値だがその範囲なら、何メートル、何センチ、何ミリ、正確に飛ばすことができる能力を持っている。そして、そのとんだ距離以上の他の精液を跳ね返す力を持っている」

「先輩、なんでベロチューしたんですか?」

「ベロチュー?」

「僕の股間にですよ!」

「ああ、ついついいじめたくなって」

「もうやめてくださいね!」

「もう動けるのか?」

「えっと、はい」

「この学校の秘密を教えてあげよう。たー君だけついておいで」


拓哉は手を差し伸べた。

僕はその手を拒否りながら、ベッドから出た。


「葉阿戸、いち、どうする?」

「17時まで図書室で待つよ。時間過ぎても、来なかったら2人で帰るね」


葉阿戸といちは保健室から出ると別方向に行ってしまった。

僕は拓哉の一歩後ろを歩いて学校内を歩いた。

無言のまま、着いたのは生徒会室だ。

拓哉は鍵を開ける。中の電気をつける。中は広いが、机が長く伸びていて、校長椅子のようなふかふかの椅子がところ狭しと並んでいる。


「この学校のトイレは汲み上げられた水でできている。生徒会に入るとこの学校の運営するための内密な事をしなくてはならない」


僕が中に入ると拓哉は内鍵を閉めた。


「教えてください」

「まあ座ってくれ。……場所には連れていけないが、動画を撮ってきた。ぜひ観てくれ」


拓哉は僕が座ると、自身も座り、ケータイを開いた。

生徒会員が回す意味のなさそうな太い木の棒を押している。その数は一つの棒に2人、全員合わせると6人だ。それほどの苦難もなさそうにぐるぐると回っている。


「これは何を行っているんですか?」

「アルキメデスのポンプは知っているかな? アルキメディアン・スクリューとも呼ばれている。筒の内部に螺旋があり、回転することで連続的に上方へ移動させる仕組みだ。水を上げている」

「これは学校内にあるのですか?」

「はっはっは。黙秘権を使う」

「それじゃあ、僕が大会出た意味がない」

「生徒会員は25名。生徒会員卒業者は学校から恩恵がもらえる。良い職場に斡旋してもらえたり、良い大学に入りやすくなる。そこでだ! たー君、生徒会に入らないか? 入れば場所を教え、実際に活動してもらう」

「いやぁ、でも僕、部活動やってるし」

「部活動やってても入れるよ? 前例は幾度となく見ている」


拓哉の勧誘は少々強引だ。


「それに人のために何かをする事は僕にはちょっと……」


僕はずる賢い拓哉の言葉に首を振り続けた。

(飛距離大会は12月。その後持久走大会、写真部コンテスト、期末テスト、クリスマス、そして冬休みがやってくる。生徒会に入ったら勉強する暇がない。断ろう)


「乱暴な手を使うか。君の恋人の姉との仲の事は知らないと思うか? 生徒会はおおよそのことは何でも知っている。小学生の風子ちゃんとも喧嘩していることも。入ると言うなら2人にとって良い結果が生み出されるが、入らないと言ったらこの学校の人から軽蔑を受けることになる」

「それって脅迫じゃないですか!」

「はっはっは、どうだね?」

「分かりました、入ります。ただ、火曜日と木曜日の放課後は部活のため通うことは出来ません」

「いいね! 部活は構わない。他の日の放課後は生徒会室にモン君と来いよ。他のクラスにも生徒会員はいる。後で紹介が入る。覚悟しておきなさい。これは入会届だ」


拓哉は生徒会の入会届を机の引き出しを開けて出した。朱肉もだ。


「生徒会員数の内訳を教えてください」

「たー君が入れば、3年生12名、2年生8名、1年生6名となる。来年は1年を狩らないと生徒会の運営は厳しくなるな」


拓哉の言葉を聞きながら、僕は入会届を書く。判子の欄に判子がないので困った。


「拇印でいいから」と拓哉はどこからか出したルービックキューブで遊びながら言いつける。


「はい、俺のオナティッシュ!」

「そういう冗談はよしてください」

「生徒会員として忠告しとくが、先輩の機嫌を損ねるなよ」

「分かりました、オナティッシュで指を拭きます」

「はっはっは。オナティッシュなわけ無いだろう。阿吽の呼吸で仲良くしようぜ」

「よろしくお願いします。ところで、他の生徒会員はどこへ?」

「大会の片付けとお水の汲み上げに忙しいんだよ。そろそろ戻ってくるんじゃないか」

「じゃあ、僕は帰ります」

「待てよ、たー君、今日のこともっと話そうよ」


拓哉は僕の腕を掴んだ。

僕は全身の毛が逆立つ思いがした。

(距離感バグってることに気づいてー!!!)


「いや、あの、たー君と呼ぶのやめてください」

「今日はベロチューしたから顎が痛いなー。たー君も気持ち知りたい?」

「いえ、結構です。すみません。気分がわるいんで失礼します!」


僕は手を振りほどくと、内鍵を開けて、逃げるように出ていった。

(ああ、生徒会に入って良かったのかな?)


外の防災行政無線のスピーカーから17時の鐘が鳴った。

僕は図書室に行くと、室内は暗くなっていた。

(違う階段ですれ違ったのか?)


「はあ」とため息をついた僕は自転車置き場に急いで向かった。

2人の姿はどこにもなかった。

僕はゆっくり帰ることにした。

外は冷え込んでいる。



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