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110/120

110 2年生大会当日3

竜司がゆっくりと歩幅を狭くして歩いてくる。去年と比べると学ランを着こなしていない。まるで入学したての新入生のようだ。それに、髪型は去年と変わらず坊主だ。

僕には残像が見える。

(ここまで進化してるとは……)

勝利の女神が誰に微笑むのか、わからない。彼は強いオーラを放っていて、とてもじゃないが気軽に背後へ回れない。

拓哉もじっと彼を見つめている。

僕は彼の前の段ボールに目をやった。

(何が入っているのだろう)

おかずは……いま明らかになる。少しダンボールを上げたが、また元の位置に置く。

水色の”腹筋ローラー”が垣間見えたかと思うと、竜司は深呼吸した。

僕は(おかずが腹筋ローラーなんて、用意した人、いかにもボディービルダーの人だな?)と思った。


「キタ! 来たー! 喜多(きた)ーーー!」


竜司は上半身に着ている学ランとシャツを脱ぐ。

なんと彼はマッチョだった。腹筋が割れている。上腕二頭筋が発達している。

皆が驚いて、声をつまらせていると、彼は腹筋ローラーをカーペットの上に置き、自身もうつ伏せになり筋トレし始めた。


「1、2! 1、2!」

『なんということでしょう、彼はまさにガチムチです! これは予想外、筋トレをしています。この大会をなんだと思っているのでしょうか?』


司会に促されて、竜司は立ち上がった。


「はっはっは、面白いな」


拓哉はおかしそうに笑っている。

僕は竜司に再注目してみる。

竜司は大きなペニスをシコり始めた。


「おうぉう!」


竜司は5秒もたたないうちに精液を遠くに飛ばした。そしてしたり顔で戻っていく。


『1メートル行ってるでしょうか? 目測だと1mあたりで着陸しています。只今計測中です』

「もしここで彼が勝ったらどうするんですか?」


僕は拓哉に尋ねた。


「負けてないだろうけど、その場合はもちろん、負けを認めるよ。この学校の秘密も教えてやろう」


『測定した結果、98センチでした! 生徒会長に惜しくも2センチ及ばずといったところです。いや、誠に残念でした』

『てめえら、グルか?』


竜司の声が生徒会のマイクから流れた。


『やめてください、暴行行為は! 飛距離大会の規定に則り、退場してください』

『あぁん? うるせえ! 今日のために血の滲む訓練を重ねてきたんだ。そう簡単に諦められるか!』

『生徒会、迷惑防止隊出動! 喰らえ唐辛子スプレー!』

『アアアア! 目がアアア! アアアア、ちんこがアアアア!!!』


ガタンゴトンと生徒会のテントが揺れている。そのうちに収まった。◯ザ◯さんのエンディングの家のようだった。

竜司は悶絶しているのか、テントのカーテンは開かれない。


「な?」

「悪運のいいことですね」

「はっはっは、悪ではないなあ」

「おい、たい、お前、殺られるぞ? 生徒会長に不遜な態度をとるんじゃない。生徒会員がこの場に待機してないからいいものの……、留年になるぞ? 気をつけろよ」


黄色に僕はそう耳打ちされた。


「分かったよ」

『えー、長らくおまたせして大変失礼しました。えー生徒会は暴漢を退治し、飛距離大会の続行を判断しました。えー、続いては3年3組1人目”ぽっちゃり系男子”です。えー只今精液除去中です。えー少々お待ちください』


モンではない生徒会員が喋りだした。


「モン君、どうしたのかな? 大丈夫かな」


黄色はしつこく下のテントを見る。


「殴られて歯でも折ったんじゃない?」

「ありそー」

「ないない、モンも相当な曲者、数発の銃弾を受けても死なないよ。竜司を取り押さえているのだろう」


拓哉は親指をしゃぶっている。


『えーそれでは”ぽっちゃり系男子”の登場です』


テントから司会の声とともに現れた。


「「「デブじゃねえか」」」

「「「ぽっちゃり系男子じゃねえよ。力士か?」」」


皆がせめぎ合っている。

足から腹から肩から顔から、全体的に太っている。じゃいを凌駕している。肉を揺らしながらカーペットを踏みしめる。

そして、気になるおかずの拝見だ。


「あれは?」


僕の双眼鏡で映ったものはミリタリーオタクの喜びそうなガンプラだ。すでに完成品の模様。


「大して、興奮してないな。あれは人を選ぶ物だからなぁ」


僕は感想を述べると、拓哉も頷いた。

その意見は至極真っ当で、彼は申し訳程度の射精で幕を閉じた。


『今の記録20センチでした。只今、精液除去中です。しばらくお待ち下さい。ついにラスト1人となってしまいました。オオトリを飾るのは”軽場南波”です』

「軽場先輩は留年していたんですか?」

「あいつは成績不良、出席日数不足、非行により留年したやつだ」

「どうするんですか? やつは不良行為を平気でする男です」

「もう父には見放されてるでくのぼうだけどな。いじめを受けてるとの報告もあったが、数人にからかわれていただけだった」

「そんな、やつはする側だったのに」

「まあ、いじめの本質をよく突いているよな、彼の存在は」


拓哉と話していると、生気の失った顔をした南波がレッドカーペットを歩行してきた。


「頑張れー」


僕はそんな彼を応援した。その時、振り返った彼と目があった気がした。


「生徒会のおかげで、おかずでは何が来るか、俺は知ってるけどな、はっはっは」

「不正じゃないですか?」

「あみだくじで決めたから不正ではない。次、失礼なこと言ったら舌切り取るぞ?」

「はい、すみませんでした」


僕が謝っている間に南波が何を手にしたのかが明らかにされた。

中には”ゴキブリの大群”が水槽に入れられている。


「くくく! アハハハァーーーー!」


南波は何を思ったのか、いきなり笑い出す。


「どうしたんだろう、とうとう壊れたのか?」


僕が言っていると南波は水槽を持ち上げて、3年3組の集まって座っているところに投げつけた。


「「「うぎゃあああーーー」」」


3年3組の皆が悲鳴を上げて逃げゆく。


それを見ながら、南波はシコっている。歪んだ性癖が顔を出す。


「これは配役ミスだ」

「黄色。まあ、まあ。ほら今抜くぞ?」

「んううっ」


南波がマットに射精した。


『おおっと、これは面白……、すみません、嘘です、なんでもないです。想定外のゴキブリのシャワーだーーー!!! そして勇気を出して、飛距離を測定しに向かうのは副会長です。頑張れー!』


また違う生徒会員の渋い声がする。

モンが測定器を扱っている。


「「「わーーー!」」」

「「「助けてー!」」」

「「「こっち来ないでー!」」」

「このままだと人が2階に集まる。僕は1階の外に出るよ」


僕は下を見ると世界がおかしくなってきている。

(ゴキブリは一体誰が用意したんだろうか?)


『はい、今の距離の値が出ました! 80センチでしたー。それでは10分の休憩を挟んで、2回戦目を始めようと思います。2回戦に進む猛者を発表します。1年2組”ふうるう君”50センチ、2年3組”蟻音たい”1メートル48センチ、3年1組”生徒会長”1メートルでした。会場のゴキブリは責任を持って除去に励みます。皆さんの協力もお願いします。玉ねぎに集まるという習性を活かして四隅と真ん中にみじん切りの玉葱と粘着テープを仕掛けました。後はしらみつぶしにやっつけます。繰り返します、皆さんの協力もお願いします。10分後、先程言いました猛者達はテント内に足を運んでください。以上、生徒会からでした』


僕は玄関先の人々の群れに混じってそのアナウンスを聞いていた。

(茂丸の玉ねぎが役に立つとは……)


「いち!」


僕は外に出ていたいちと合流した。


「たい、良かった、無事で」

「葉阿戸は?」

「ごめん、知らない」


いちの声はかすれていた。


「保健室かな?」

「見に行ってくる」


僕は別棟の校内に入っていった。


「待って、うちも行く」


いちがついてきた。

教室にはいない。一応、ゴキブリを倒す用の丸めた新聞紙が手に入った。純がよく読んでいる新聞だが、この際致し方ない。

保健室は人は全然いない。


「葉阿戸ーいる?」


1つ目のベッドには茶髪の男子が眠っている。

葉阿戸はいないようだ。


「じゃあトイレかな?」


シャーー!


「お前ら何してんだ?」


2つ目のベッドのカーテンが開いて、知っている人物に会った。


「比井湖!」

「いち、ビンタよろしく」

「うう、分かった、えい!」


パシンと、いちは比井湖の頬を叩いた。


「うーん、もうちょっと強く出来ない?」

「監督かよ。それより、葉阿戸見てないか?」


僕はいちの頭をナデナデする。


「もう、子供扱いしないで」

「ああ、ごめん」

「葉阿戸もお前探してたよ? たいがいるから体育館の中にいるって」

「ニアミスかー、ありがとう、行こう」


僕らはその場から出ていく。

いちはケータイを取り出して、電話をかけている。


『もしもし、うちだよ。今どこ? たいもいるけど?』


いちは電話がつながり喜んでいるようだ。しかし、何かがおかしい。


『もしもし、どこにいるの? もしもし!?』


電話が向こうから切られた様子だ。


「だめだ、ガヤガヤ声で聞き取れない」

「体育館まで引き返そう」


僕らはそのまま体育館に戻って探すも10分間は過ぎ去っていった。


ピンポンパンポーン


『校内にいる皆さんに連絡します。休憩時間の10分になりました。2回目のマスターベーションの時間がやってまいりました。ここで1回戦の勝者を発表します。1年生、ふうるう君。2年生、蟻音たい、3年生、生徒会長です。おかずは好きなものを選んでます』

「あのさ、葉阿戸さんの事はうちに任せて、たいはやるべきことをやっておいで! たいなら勝てるから」

「ありがとう、いち、行ってきます」


僕は体育館の隅のテントに入った。すでに、拓哉、ふうるう君は到着していた。


「後1分過ぎてたら棄権扱いでしたよ、蟻音君」

「モン! 悪いな。皆もうおかずは選んだのか?」

「早いもの勝ちですから」

「はいはい」


流石に”ドールちゃん”は生徒会長の拓哉の手の内だ。ふうるう君はTENGA。僕は少し迷ったがちゃんと決めた。

順番は1年生からだ。

去年と違って、悪巧みをしている人はいないだろう。

2回戦目が始まる。


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