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11 輦台にのった対極の2人

次の日。

『突然のメールすみません。たいです。相談したいことがあってメールしました。男の大事なところが皮を被っていて、皆に見せるのが恥ずかしいです。学校の椅子がトイレに成り代わり、大事なところを見せる大会もこれから催されています。いかにして皮を破ったのか教えてくださると幸いです。  たい』


僕は朝起きると、父にメールを送った。

父は車で出勤する。夜遅く、朝は早いためメールを見過ごす可能性もあったが、とりあえず送ってみた。

僕は返事のないケータイをリュックに入れて、下の階に降りた。


「おはよう」

「おはようさん」


母が緑茶とおでんを卓上に置いた。どちらも温かい。


「いただきます」


僕は合掌して、ご飯を食べ始める。


「今日は風強いからマフラーしてきな」

「はいはい」

「味は?」

「大根染みてんなあ」


僕はほろほろとした大根に舌鼓を打った。こんにゃく、ちくわ、はんぺん、さつま揚げに卵まで入った、それはそれは味の良いおでんだった。汁まで飲んで、再び手を合わせた。


「ごちそうさま」

「行ってらっしゃい。気を付けてね」


母が僕に緑色のマフラーを巻いてくれた。

綿のマフラーは暖かかった。


「ありがとう、行ってきます」


僕は出ていこうとすると母が「待って」と引き止めた。


「お弁当」

「あ、忘れてた」


僕はお弁当の入ったバッグを自転車のかごへのせて、自転車を漕ぎ出した。15分ほどの道のりを進んだ。そして私立御手洗高校に着くと、自転車置き場に自転車を置いた。


「おはよう」

「なんだ茂丸か、おはよう!」

「なんだじゃねえよ。昨日は何かあった?」

「何もないから」

「けっ、つまんないの」

「あんた、いつから僕の応援することにシフトしたんだ?」

「そりゃ葉阿戸が誰かにとられるくらいなら、近い人間にとられたほうがまだマシだからだよ」

「あー、諦めたってことか、潔いな」

「うるせえ、おっぱいもむぞ」

「僕のおっぱいもんだら先生にチクるぞ? つか、何が楽しいんだよ、野郎が野郎のおっぱいもんで」

「角力君とやらなら揉み心地いいかな?」

「2組に顔出してみるか! 探り入れようぜ」

「そうだな」


茂丸と僕はすぐに履き替えて、2組の様子を伺った。

まだ10分前だ。ぼちぼち生徒は来ているが、葉阿戸もじゃいも来ていないらしい。


「「「えっさ、ほいさ」」」

「え? なにかのパレード?」


7、8人ほどの男子がおみこしのような四角い木の板を担ぎ棒で担いでいる。四隅はハート型の150センチ程の長い棒があった。


「君ら、何してんのー?」


その上には、葉阿戸と、おそらくじゃいが背面にして座っていた。足を乗り出している。通常は中に守られるように座るが、じゃいのサイズにぎゅうぎゅうになったのだろう。

その隊員のような男子達は流石に教室までは入れないので、葉阿戸とじゃいを手前で降りさせた。よく見ると”ハート守り隊”と書かれた赤い法被のようなものを着ている。


「ちょうど5分前です」


白髪混じりの美少年が葉阿戸とじゃいに上履きを履かせた。


「ありがと!」

「ごつぁんです」

「葉阿戸これは一体?」

輦台(れんだい)のこと? これはじゃい君が俺にって」

「あ、あのう」

「どうした? 茂丸」

「おっぱいもまして? 角力君」

「え?」


じゃいは眉間にシワを寄せた。


「発気揚々……」

「ん? 良い?」


僕らは相撲の構えをとるじゃいに日和る。


「のこった」


そう言って、葉阿戸は意地悪そうな顔をする。


「「ぎゃあああ」」


じゃいにつっぱられて、3組の教室に入らされた。一押し一押しが並大抵の人ではなかった。イノシシの突進のようであった。


キンコンカンコーン。


チャイムがなり、いつの間にか、じゃいはいなくなる。

僕と茂丸はフラフラになりながら、ロッカーに不必要な持ち物を入れた後、ズボンとトランクスを脱ぎ、ふりちんで便座に座る。


「毎日毎日、輦台が邪魔だなー」


担任がぼやきながら入ってきた。輦台を軽視しているかのように言っていた。


「あれ、いつからあるんだろう?」


僕は隣の茂丸にコソコソ話をした。


「さあ? 俺も結構早く来るから、わからない。いつもいちが遅く来るから後で聞こう?」

「おう」

「それでは、後ろの人、ズボンとトランクスを集めてこいー」

「「「はーい」」」


僕は自分のズボンを土台にして、衣類の山を作って、先生の前の、”3”と書かれたゴミ袋に入れた。



そして、昼休みになると、僕らはいちの机に詰め寄った。


「なーいち」

「な、何?」


いちの目にはヘビに睨まれたカエルよろしく、怯えがあった。


「あの輦台のことなんだけど」

「いつからあったか知ってる?」


茂丸は優しく聞く。


「ああ、あの祭りのような輦台は夏にはすでにあったよ。6月の後半くらいからかな?」

「ハート守り隊って?」

「うん、日余さんの従えているグループだよ」

「同じクラスの?」

「うん、後は写真部の人とか」

「そういや見知った顔がいたな」

「朝だけなんだよな?」

「そうだと思う。輦台はおおかた、体育館横の倉庫にしまわれてると思うから」

「誰がしまうんだよ」

「うちにはわからない」


いちは首を振るった。


「伊祖先生か、ボランティア部の顧問か、その部員か、OBの内の誰かだと思うんだよな。その戻している姿は謎が多いんだ」


竹刀が口を挟む。


「良いこと考えた! これから廊下でビデオカメラ回して、撮ろうぜ!」

「誰が運んでるか、別に気にすることなくないか?」

「そうじゃない。検証結果で大会に有利に進めるかもしれない」


茂丸が何を話しているのか意味不明だった。

よく聞くと、それは恐ろしい計画だった。



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